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1日1000円・団地ひとり暮らしで叶えた、心豊かな年金ライフ。老後不安が〈ケチ道〉のはじまり

2021-09-28 15:30:00 | 日記

下記の記事は婦人公論東オンラインからの借用(コピー)です

「最期は孤独死もいとわない」というほど、ひとり暮らしが好きと微笑む71歳、エッセイストの小笠原洋子さん。節約主義を貫いてきた《ケチ師範》が、おだやかな老後生活の極意を教えてくれた(構成=上田恵子 撮影=本社写真部)
老後が心配になったのが「ケチ道」のはじまり
ムダを省き、できるだけお金を使わず、だけど心豊かに楽しく暮らすーー。ケチケチ生活とは、人生後半を快適に生きるための哲学です。私の場合40代になって老後の先行きが不安になったのが、「ケチ道」のはじまり。
その頃、てっきり自分は70歳くらいで死ぬだろうと思って年金の受給開始年齢も決めていたのに、すでにその歳も過ぎて現在71歳。東京郊外にあるURの高齢者向け賃貸住宅で、ひとり暮らしを楽しんでいます。部屋の間取りは3DK、家賃は5万5000円ほど。以前は分譲団地に住んでいたのですが、固定資産税を払うのが納得できず6年前に売却。今の団地に引っ越してきました。
倹約上手だった親の影響もあり、子どもの頃から節約が大好きで、お小遣いをもらっては郵便局に行き、コツコツ貯金。ものを買うより数字が増えるのを見るのが楽しかったのです。大人になると根っからの節約主義に拍車がかかり、20代の頃は1日300円で暮らしていたことも。友達はいましたが、ひとりでいるのが好きなので交際費もかからず、それで十分でした。
大学卒業後に京都の画廊に就職し、のちに東京の美術館に転職。30代になり、さすがに1日300円では生活できず、1日1000円にシフトしました。これは限度額を増やしたというより、「本気でケチ生活をしよう」と決意した金額だったのです。体が弱かったこともあり、「将来、年金は生活費と家賃で消えてしまうし、病気になることだってある。少々貯金があるくらいでは足りないぞ!」と焦りを感じるようになったこともきっかけでした。
「人生後半は自由に動ける立場でいたい」と、45歳でリタイアした後は、アルバイトや原稿の執筆で生計を立ててきました。将来への不安から、40歳を過ぎたときに個人年金に加入。公的年金を受け取るまでのつなぎとして60歳から70歳まで受け取れるよう設定しましたが、現在は公的年金のみが振り込まれています。
年金が振り込まれたら1万円ずつ引き出して、すべて千円札に両替し、「使えるお金」を用意します。この「使えるお金」が、1日1000円。主に食費に使い、薬代や雑貨なども範囲内に収めます。食が細いので、食べなかった分は冷蔵・冷凍。その保存期間を考えて、食材や惣菜の値引き品はあまり買いません。

おひとりさま 終の棲家 老後資金使わなかったお金は透明なビニール袋に入れて
買い物に行かない日の出費は0円。1500円使った日は、翌日の上限を500円に調整します。使わなかったお金は透明なビニール袋に入れ、見える貯金として保管。また、万一の出費に備え、クリップで留めたお札も財布に入れてあります。日々「あれがほしいけど、買えない」「これもほしい、でも買わない」の繰り返しで、お金が減らないように努力しながら、半ばそれを楽しんでいます。
家計簿は続きそうもないのでつけていません。毎月の収支は、雑記帳にメモ的に記録するのみ。ちなみに、先月使ったお金は、家賃や光熱費などは別として3万2000円でしたが、月によっては2万円程度のときも。電気代とガス代はそれぞれ2000円ほどで、最近、電気・ガスの合体プランにしたら少し割安になりました。水道代は2ヵ月で4000円弱、パソコンを使うので通信費は約1万円かかります。
以前は、転居時に家財や衣類をたくさん捨てましたが、いまは捨てるものがないので気分もすっきり。ものを買えないのも事実ですが、買うことや捨てることに飽きたのです。
我が家からなくなったものの一例は、ティッシュペーパー。昔からもったいなくて、2枚1組になっているティッシュペーパーを1枚ずつに剥がして鼻をかむほどです(笑)。ティッシュ箱自体が邪魔になるので、トイレットペーパーに変更。使用後はトイレに流せるからゴミも出ず、エコロジーの観点から見ても最高です。
空いた場所は、何も置かない空間にしておく
服は、もう何十年も買っていません。今日の服も、半世紀前に購入したもの。先日は亡き母の着物を裁断し、スカートにリメイクしました。ミシンがないので手縫いですが、結構な外出着に生まれ変わって満足しています。
いらないものは手放しつつ、空いた場所は、何も置かない空間にしておくのがモットー。カーテンのあのボリューム感が嫌で、代わりに和紙のような素材のブラインドを使用。レースのカーテン代わりに、正方形のメモ用紙を使った手作りの紙製モビールを吊り下げたりも。
3DKで余っている部屋は、「ワタシ・ギャラリー」に。無機質なアルミ製の脚立は、アロマキャンドルなど小物を飾ったトレイをのせてディスプレイコーナーに変身。使わなくなったストールはテーブルクロスに。廊下のデッドスペースには、お気に入りの陶芸品や母の遺品の花器などを飾っています。
2週間に5リットルのゴミ袋1袋分しかゴミが出ない
ここで私の1日を紹介しますと、まず朝は7時半に起床。身支度をして、ベッドメイキングや掃除などを済ませます。掃除は充電式のハンディクリーナーでササッと。以前の掃除機は足腰に負担がかかるので買い替えました。3000円程度のものですが使いやすく、充電も3日はもちます。
8時半頃から朝食です。私は薄味派なので、納豆を食べる際は付属のタレを半分だけ使い、残りは煮物の味付けにとっておきます。納豆にちりめんじゃこや海苔を混ぜると、タレすら不要。お醤油や塩もありますが、まず使いません。
朝食後はパソコンで原稿を書き、正午に昼食の準備。3食のうち、一番ボリュームがあるのがこの昼食。朝食とお昼は、キッチンにある小さな「特等席」でいただきます。窓越しに、日差しを受けて輝く緑を眺めながらのランチが、私の1日のハイライト。この「絶景食堂」でのランチが「正餐」です。
窓の外に緑したたる「絶景食堂」でのランチが1日のハイライト
ちなみに、今日はデザートにキウイを食べましたが、皮ごといただきました。皮のケバケバと果実の食感にメリハリがあって、結構イケます。みかんや桃も洗ってから丸ごと食べますし、スイカの皮は捨てずにお漬物にします。大根やニンジンなどの野菜の皮は基本的に剥きません。
お茶を飲む際は急須は使いません。お茶の葉は、湯飲み茶わんの中に直接投入。急須を洗う水道代が節約でき、こびりついた茶葉を取り除く作業から解放されるのでストレスフリー。茶殻は炊き込みご飯に使えるので、ゴミもゼロ。
こんな調子ですから、我が家では2週間に一度、5リットルのゴミ袋1袋分しかゴミは出ません。また、きれいな包装紙は、ランチョンマットにして、汚したらそのまま捨てられるので便利です。
もずくの容器を洗面所用のコップとして再利用
食事が済んだら、13時半から、買い物を兼ねた長い散歩に出かけます。高齢者が多いエリアだけに、ベンチやスツールなど休憩場所があちこちにあり、休み休み近所を巡るのにちょうどいい。気が向いたら団地のコミュニケーション施設で持参したお茶を飲んだり、読書を楽しんだり。あまりに人との交流がないと認知力が落ちる心配もあるので、たまに無料のトークイベントやハンドメイド講座に参加したりします。
散歩の途中、高級ベーカリーのイートインで焼きたてのパンを食べることも。ベリーやナッツが入ったパンは、歯ごたえがあってとても美味しい。毎日の安い菓子パンより、たまの高級パンです。
2時間ほどの散歩と買い物を終えて帰宅したら、すぐに夕食の準備です。火は使いたくないし、食器を洗う水道代も節約したいので、昼の残りものや漬物、レンジでチンした冷凍かぼちゃなどを、小皿にチマチマと盛りつけるだけ。それを1品ずつキッチンからリビングに運んで食べる。籘製のスツールの上に、小さなトレーを置いたものがテーブル代わり。1品ずつ食べることで食べすぎを防げますし、小料理屋気分も味わえます。
19時になったら、食器を片づけて歯磨き。もずくなどが入っていた透明なプラスチック容器を洗面所用のコップとして再利用中。
21時まではテレビを観たり、ラジオを聴いたりして過ごします。観るのは歴史関係や美術館の情報など、知識を得られる番組。21時になったらお風呂に入り、22時には就寝します。死ぬときもひとりでかまわない
お金をかけない生活は、資源を節約する生活でもあります。私は、ケチで環境にも優しいエコロジーな生き方を、「ケチカロジー」と呼んでいて、このケチカロジー生活は、私が自身の裁量でルールを決められたからこそできること。
そう考えると、ひとりは決して悪いことじゃない。20代から10年ほど結婚していた時期がありましたが、夫婦それぞれの時間が長かったので、感覚的には今も昔も変わらずずっとひとり。
私は、死ぬときも誰かに見守られて死にたいとは思わない。太陽が降り注ぐ窓の下で、床に寝そべってスーッと眠るように逝けたら幸せです。ただ、発見されないままだと周囲に迷惑がかかるので、URの有料電話サービスに登録しています。これは週に1度、電話で高齢者の安否を確認してくれるというもの。今後、体が弱ったら電話サービスの頻度を上げるつもりです。
ケチを貫いてきて一番良かったことは何かと聞かれたら、「節約で貯めたお金でドイツに行けたこと」と答えます。50歳からの10年間で計9回、ひとりでドイツを旅しました。
私はカスパー・ダーフィット・フリードリヒというドイツの風景画家が好きで本も書いているのですが、その人が眺めたであろう風景と原画をどうしてもこの目で見たかった。ドイツ語を学ぶより、まず行動ありき。リュックを背負って道なき道を行く過酷な旅でしたが、怖さや寂しさを感じることはなく、幸福感のほうがはるかに大きかった。貯金はかなり減りましたが、体力があるときに行っておいてよかったです。
人生100年と言われる時代を乗り切るために、これからも楽しみながらケチ道を邁進していこうと思います。

小笠原洋子
エッセイスト
1949年東京都生まれ。東洋大学文学部卒。京都で画廊に勤務後、東京で学芸員、成蹊大学非常勤講師を務める。退職後、フリー・キュレーター、美術エッセイストとして活動。 



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