下記の記事は日刊ゲンダイヘルスケアオンラインからの借用(コピー)です
食物繊維は、便秘改善や腸内環境を良くするほか、血糖値上昇抑制、体内の塩分排出促進、血液中のコレステロール濃度の低下など、さまざまな効果が知られています。
日本人を対象にした「JPHC研究」では、食物繊維の摂取量と死亡リスクとの関係について調査が行われています。欧米の研究では食物繊維の摂取量が多いほど死亡リスクが低いとの報告がありましたが、アジア人を対象にしたものはこれまでありませんでした。
対象となったのは、調査開始時にがん、循環器疾患になっていなかった45~74歳の男女、9万2924人。2016年までの17年間、追跡調査しました。食事アンケートから食物繊維の摂取量を計算し、5つのグループに分け、17年間の死亡との関連を調べました。
すると、食物繊維の摂取量が多いほど、男女共に総死亡リスクが低下。死因別では、心筋梗塞や心不全、脳卒中などの循環器疾患による死亡リスクが低下していました。
食物繊維の摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループに対し、総死亡リスクが男性で23%、女性で18%低下。循環器疾患による死亡リスクは、男性で20%、女性で27%低下していました。
欧米の研究では、穀物由来の食物繊維の摂取量が多いと死亡リスクが低いとの結果でしたが、今回の日本人を対象とした研究では、豆類、野菜類、果物類からの食物繊維摂取量が多いほど総死亡リスクが低下。穀類からの食物繊維に関しては、摂取量と死亡リスクの相関関係は見られませんでした。日本では穀類として食物繊維量が少ない精白米が主に摂取されていることが関係しているのではないかと指摘されています。
患者さんを見ていても、食物繊維の摂取量が多い人は、そうでない人に比べて血糖コントロールが良い印象です。これは、食物繊維そのものの効果もあるでしょうが、豆類、野菜類、果物類といった食品を取っていること、もっと言うなら、食事内容に気を配り、バランス良く食事をしている、そうしようと意識していることが大きいように思います。
丼物や麺類、ファストフード、インスタント食品などが中心では、どうしても食物繊維の摂取量が少なくなってしまいますからね。
食物繊維をたくさん取ろうと思ったら、お皿がたくさん並ぶ食事でないと難しいですし、その分、手間がかかります。意識していないと、十分量の食物繊維を摂取できないわけです。
■実際の摂取量は男女すべての年代で不足
では、食物繊維はどれくらいの量を目安に取ればいいのか? 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、女性18グラム以上、男性21グラム以上(18~64歳の場合)を食物繊維の1日の摂取目標量として定めています。また、食物繊維と糖尿病の発症リスクとの関連を調べた研究では、食物繊維の平均摂取量が1日20グラムを超えると、糖尿病リスクが低下するとの結果が出ています。
一方、実際の摂取量は男女問わずすべての年代で不足しており、特に若年層での不足が顕著であることが指摘されています。1947年には平均摂取量が27.4グラムだったのが、最近では約半分にまで減っているという報告もあります。
1日18~21グラムの食物繊維を取るには、1食6グラムを超えなくてはならない。たとえば納豆は1パック約3グラム、ライ麦パンは1個4グラム、そば1人前3.7グラム、トマト中1個1.5グラム、キュウリ1本1.1グラム、バナナ1本1.7グラム。いろいろ組み合わせないと、目標の摂取量に到達しないことが分かります。
ただ、食事は毎日の積み重ねですから、食物繊維の量を意識するのとしないのとでは、大違い。「今日は疲れたからインスタントラーメンで済まそう」という日があってもいい。
でもそこに、ちぎって入れられるキノコ類を加えたり、手軽に食べられるトマトやキュウリを副菜にしたりする。ほんのちょっとのことですが、食物繊維の摂取量を少し増やせます。
今日からぜひ、食物繊維を意識した生活を始めてください。
坂本昌也
国際医療福祉大学 医学部教授 国際医療福祉大学 内科部長・地域連携部長
専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。
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