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「老いの坂道」をゆっくり下りる? 転げ落ちる?女優山本陽子さん

2021-05-02 13:30:00 | 日記

下記の記事は朝日新聞Reライフからの借用(コピー)です

 女優として50年を超えるキャリアを持ち、78歳になった今も現役で活躍する山本陽子さん。誰にでも訪れる「年齢による衰え」に対して、どう向き合っているのでしょうか。老年医学が専門の東京大学教授・飯島勝矢さんとの対談で、丁寧に、潔く、前向きに過ごしている山本さんの日常が明かされた。その暮らしぶりには、「フレイル予防」のためのヒントが隠されていた。
5年前、10年前と違う「衰え」に気づくのがフレイル
女優として50年以上のキャリアを持つ山本陽子さんが、「フレイル」について専門家に質問した
飯島 山本さんは「フレイル」という言葉をご存じでしたか。
山本 いいえ。初めて聞いたのですが、語感がきれいで、明るい感じがしますよね。
飯島 そう言ってもらえるとうれしいですね。フレイルとは、日本語で言えば「虚弱」という意味なのですが、「虚弱」と言うとネガティブなイメージなので、皆さんに前向きにとらえていただくために、和製英語として作った言葉なのです。「虚弱」は、英語だと「Frailty(フレイリティー)」。その形容詞型が「Frail(フレイル)」。例えば、新しい電池を入れてもなかなか動かない機械をたたいて「Frail machine」と言ったりしますが、ちょっとガタがきちゃったかなというときに使います。
東大高齢社会総合研究機構 機構長・未来ビジョン研究センター教授の飯島勝矢さん。老年医学が専門で、「フレイル予防」を提唱している
山本 そうなんですか。どうしてそういう言葉を普及させる必要があったのでしょう。
飯島 「健康長寿」とか「介護予防」ということは日本のあちこちで叫ばれていて、やらなければいけないことは皆わかっている。でも、現実に自分は今どれくらいの位置にいて、何が課題かわからないと実行に踏み出さないんです。高齢者医療に携わるなかで、寝たきりの方へのケアはもちろん必要ですが、その何歩も手前の段階で、「あれっ」と衰えを感じる時期が必ずありますよね。
 山本さんはいつもシャキッとしていて、ほとんど問題の感じられない典型的なアクティブ70代ですが、ご自分で5年前、10年前と比べると、多少の違いはあると思うんです。そのちょっとしたサインに気づくと、自分の立ち位置を「見える化」できる。そこに新しい風を入れていこうというのが「フレイル予防」の概念です。
山本 なるほど。わかります。
飯島 そしてこれは「あなた次第」でがんばれる、というエールでもあるんです。かかりつけのお医者さんから薬をもらうのではなく、フレイル予防は自分でがんばれる。ちょっと、こちらの図をみてください。
年をとるにつれて、こころや身体が徐々に衰えていく様子を表しています。ちょっとした衰えに早く気づき、適切な対処を行うことが大切です。 (出典:東京大学高齢社会総合研究機構・飯島研究室のサイト「フレイルを知ろう」)
飯島 右に向かって下がる三角形、これを、「老いの坂道」というのですが、年をとるにしたがって、肩が痛い、ひざが痛いというような体の衰えを感じると同時に、「なんだか面倒」というような心理的な衰えもある、そして結果的に社会とのつながりが薄くなっていく。「体の衰え」「心の衰え」「社会的衰え」は、互いに絡み合いながら負の連鎖となって老いの坂道を下っていくんです。坂をゆっくり下がるかストンと転げ落ちてしまうか、それは十人十色です。下がったことに気づいたら、少しでも上がる努力をすることです。
山本 その三つは、その人のものの考え方と環境にもよりますよね。どう下っていくかは。
飯島 ええ。やはり、健康に資する話をすぐに取り入れる意欲のある方と、まったく無関心な方では違います。
山本 私は、健康にいいというサプリメントなどは、薦められても飛びつかないんです。薬は嫌いなんですよ。
飯島 そうですか。日本人の多くは薬好きなんです。我々が処方する薬は「効くけど怖い薬」。でも、自分で自由に飲めるサプリメントには、お財布のひもが緩むんですよね。山本さんは自分の判断にこだわりがあるのですね。
山本 ええ。サプリメントだって怖いですから。一つだけ、高麗ニンジンエキスを30年以上飲んでいるんです。いろいろ調べて、自分の体にはいいかなと。そのせいか、風邪をひいても3日以上は長引きませんし、元気ですね。
年を取ったら「メタボ予防」からギアチェンジ
山本陽子さんと学ぶ「フレイル予防」(中)
#フレイル対策で健康長寿
2020.04.03
 毎日をアクティブに過ごしている女優の山本陽子さん。老年医学が専門の東大教授の飯島勝矢さんとの対談で、健康と要介護の中間の状態を意味する「フレイル」という新しい概念を知りました。飯島さんの研究チームがフレイル診断のために考案した「イレブンチェック」を試してもらうと……?
女優の山本陽子さん
飯島 「イレブンチェック」をしてみた感想はいかがですか。
山本 これ、意外と悪い答えの「赤」が多かったです。毎日2回以上もお肉やお魚を食べているかというと、そんなことはないですし……。
山本陽子さんには対談前に「イレブンチェック」に答えてもらった
飯島 この質問は、皆さんにたんぱく質をとる大切さを知ってもらうためにあえてハードルを上げています。「たんぱく質を毎日とっていますか」と聞けば、皆さん「はい」と答えるでしょう。でも、それでは足りないのです。体重60kgの人がとるべき1日のたんぱく質の目安は、最低限でも60gです。筋肉が落ちやすい高齢者は、その1.5倍はとらないといけないのです。
山本 私は食べることが大好きで、食事は全部自分で作っています。前の日にどれだけ食べても、朝起きたらおなかがすいています。
飯島 それはすばらしい。やっぱり世の一般的な70代とは違いますね。
山本 カロリー計算もしたことがなくて、食べたいものを食べています(笑)。だから、最近太ってしまって、体重を落としたいと思って。
飯島 70代後半でも「メタボ予防をしなければ」「2〜3キロ痩せなければ」と思っている人が6~7割います。40~50代と同じような「メタボ予防」をしなければならないという考え方がずっと残っているのです。
山本 そう、私はもう少し減らすと、今までのお洋服も問題なく着られるのですが……。
東京大学高齢社会総合研究機構 機構長・未来ビジョン研究センター教授の飯島勝矢さん
飯島 ですが、年齢を重ねてからは、痩せてしまうほうが問題です。人は、ある時期に、「メタボ予防」から「フレイル予防」へとギアチェンジする必要があります。それは、「65歳になったから」「75歳になったから」と急に変えるものではないのですが、年をとってから痩せようとして、つまらないダイエットをしてしまうと、筋肉を失ったり、顔がしわくちゃになったり、風邪をひきやすくなったり、「負の部分」が出てきます。
山本 私も、食べなければすぐ体重は落ちますが、なにせ食べることが大好きで。
飯島 いや、だからこそお元気なのでしょう。ここで体重を落としたら、洋服は入っても、何か失う面が出てくるかもしれません。筋肉を失うと、そう簡単には戻ってこないのです。
山本 そういうものですか。
飯島 はい。カロリーを抑えるのではなく、しっかり食べて、しっかりと動いて、筋肉を失わないこと。それが、若々しく現役で自立した生活を維持するための一番の近道なのです。
意識して運動することにも勝る、活動的な日常と人づきあい
山本陽子さんと学ぶ「フレイル予防」(下)
#フレイル対策で健康長寿
2020.04.08
 女優の山本陽子さんが、老年医学の専門家・東大教授の飯島勝矢さんに質問し、「フレイル予防」について学ぶ対談。前回、年齢を重ねてからもダイエットをすると、筋肉を失ってしまうので注意すべきと指摘されました。では、いつまでもイキイキと暮らすには、運動はどれくらい必要なのでしょうか。

飯島 フレイルを診断する「イレブンチェック」に答えてみて、他に気になった点はありますか。
女優の山本陽子さん
山本 「1回30分以上の汗をかく運動を週2回以上、1年以上実践していますか」という質問も「いいえ」でした。でも、とにかく私は一日中動いています。立ったり座ったり、1秒たりともぼーっとしていられなくて。毎日掃除機をかけて、窓を磨いて、ベランダの落ち葉を掃いたり、マンションの植え込みの枯れ葉も片付けたりしちゃいます。
飯島 え? マンションの庭まで!
山本 そう、熊手で。池に枯れ葉が浮いているのも気になって、管理人さんにゴミをすくう網を借りることも。お洗濯も好きです。ベランダの手すりにお布団を干して。
東大高齢社会総合研究機構 機構長・未来ビジョン研究センター教授の飯島勝矢さん
飯島 すごい! 山本さんのような人は、専門用語でNEAT(non-exercise activity thermogenesis非運動性熱産生)が高いんです。これは「ノンエクササイズ」、つまり意識的にする運動ではなく、日常の動作で使う熱量が多いということです。実は、我々の大規模調査では、運動を毎日しっかりやっているだけの人よりも、運動はほどほどでも文化活動や地域活動によく出かけている人のほうが、フレイルになるリスクが少ないという統計結果が出ています。
山本 私はまさにそれですね。お友達づきあいでも、ずっと続いているマージャン仲間もいますし、41年前のあるドラマのスタッフ仲間とは毎年新年会をしています。これがすごく楽しい。14〜15人で箱根に1泊して、お食事をしながらビンゴゲーム、終わったらマージャン組と他の組に分かれて。
飯島 そんな風に長く、ずっと年に1回会う仲間はなかなかいないですよ。
山本 普段も、2、3日誰かと話していないと思うと、マンションの住人同士でお茶会を開いておしゃべりします。私がコーヒーをいれてフロントロビーに持って行く。そういうのが好きです。
飯島 なるほど。山本さんは「老いないように努力」しているのではなく、ごく自然体ですね。日常生活の自然体の活動が、結果的には同世代の何もやっていない人との差になるのでしょう。
山本 ですが、確実に1年1年、年はとっているわけで、それは認めつつ、過信はしないようにと思っています。飛び越えられると思っていた水たまりにある日ボチャッとはまってしまうかもしれない。それが、あの図でいう「プレフレイル」なんですよね。
年をとるにつれて、こころや身体が徐々に衰えていく様子を表しています。ちょっとした衰えに早く気づき、適切な対処を行うことが大切です。 (出典:東京大学高齢社会総合研究機構・飯島研究室のサイト「フレイルを知ろう」)
飯島 ただ、フレイルの概念には「可逆性」があって、努力次第で「老いの坂道」を逆に上がることもできるのです。山本さんはもしかしたら、上がっているのではないでしょうか。
山本 チャレンジが好きです。7〜8年前に東京の住まいを売って引っ越したのも、自分で決めて、すぐ実行しました。
飯島 全国で山ほどご高齢の方に会ってきましたけど、ここまでの人はなかなかいません。
山本 まだ78歳ですよ。まだまだこれから。私は「いくつになったからだめ」とは考えません。どんな世代でもやることはありますし、出会いがある。これからどんなことに出会うのか、興味津々です。
女優の山本陽子さん(右)と、東大高齢社会総合研究機構 機構長・未来ビジョン研究センター教授の飯島勝矢さん
飯島 すばらしい。生活そのものに、意識しなくても「老いの坂道を1センチ下がったら、また1センチ戻す」という活動が組み込まれているのですね。「やらなきゃ、やらなきゃ」と努力してやるのではなく、それが楽しくて自分のこだわりでもあって。こういう例があるということを今日は私も学びました。
山本 こちらこそ、ただ痩せればいいわけじゃないということも含め、いいお話を聞きました。ありがとうございました。



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