トランプ氏はアメリカの「病」か 福井県立大学教授・島田洋一氏
http://www.sankei.com/world/news/151218/wor1512180009-n1.html より
≪暴言の背後にあるメッセージ≫
不動産王、ドナルド・トランプ氏の勢いが止まらない。一つの暴言を次の暴言で直ちに忘れさせる能力は瞠目(どうもく)に値するが、放言癖を誇示する、品格のない金持ちならアメリカに掃いて捨てるほどいる。説明されるべきは、その中でなぜトランプ氏だけが、共和党の大統領候補としてトップを走り続けているかである。
「メキシコは最悪の連中を送り込んでいる」に始まり「イスラム教徒の入国を全面停止せよ」に至るトランプ氏の暴言の背後には常に、「無秩序な異邦人流入から勤労アメリカ人を守れ。無為無策の既存政治家にノーを突きつけよ」とのメッセージがあった。
以下まず、移民をめぐる米国の現状を見ておこう。
現在、アメリカにはヒスパニック(中南米系)を中心に、1200万人以上の不法移民がいるとされる。人口比(2・5対1)で日本に当てはめれば480万人超で、ほぼ福岡県の人口に匹敵する不法残留・不法入国者がいる計算になる。
ヒスパニック系米国人の投票行動を見ると、7割弱が民主党支持というデータが出ている。仮に不法移民に恩赦を与え選挙権を付与すれば、民主党が優位を得る選挙区が相当増えるだろう。オバマ大統領以下、民主党が重罪犯の強制送還にすら不熱心なのはナイーブな寛大ゆえではなくシニカルな党利党略、と保守派が批判するゆえんである。
一方、共和党においても、有力支持基盤の商工会議所が不法移民の雇用に対する罰則強化に懸念を示しており、党エリート層は厳格な法執行にやはり消極的である。 「合法移民枠の拡大こそが不法移民への最大の抑止力。強制送還は可能でないし、アメリカの価値にも反する。話題にすること自体、民主党を利する」と、移民問題では民主党とほぼ同じ立場を取るジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事を党エリート層が推すのは何ら不思議ではない。
≪支持伸ばすトランプ現象≫
なお合法移民についても、市民権を得た人の親族が優先される「連鎖移住」制のため、福祉に頼る人々が「雇用されうる能力」の高い人々を押しのける現象が見られ、保守派の間で問題とされてきた。トランプ氏は「連鎖移住」の抜本的見直しとともに、米国領内で出生すれば誰でも自動的に国籍を得られる「生得市民権」の不法移民・旅行者への不適用も強く唱えている。
現在、無条件の出生地主義を取る国はアメリカとカナダのみで、この点、トランプ氏の主張は国際常識にはずれたものではない。
「われわれの福祉システムにタダ乗りする者が、汗水垂らして働くアメリカ市民の負担を増やすことがあってはならない」「不法越境者が生む子に自動的に国籍を与えるほどばかな国はアメリカだけだ」といったトランプ氏のメッセージは、暴言の部分を除けばとりわけ排外的とはいえないだろう。
民主、共和を問わず既存政治家すべてを「ワシントン・カルテル」と切り捨て、不法移民の強制送還を唱えるテッド・クルーズ上院議員(共和党)が支持を伸ばしているのも、トランプ現象の一環と捉えうる。「中国や日本なら一体どうするだろうか」がクルーズ氏の口癖でもある。なお、クルーズ氏については、「自分だけいい子になろうとする」という同僚議員の反発が強く、支持層は草の根にとどまっている。
≪日本は「際物」を笑えるのか≫
トランプ、クルーズ両氏合わせて5割超の支持率を誇る中、正統レーガン保守のマルコ・ルビオ上院議員(共和党)が上位につけているのは、日米関係にとって一筋の光明と言える(ルビオ氏には「尖閣は明白に日本の領土」などの発言もある)。
ルビオ氏は次のような制度改革案を提示している。「合法移民については連鎖移住制をやめ能力に応じて受け入れる。永住権取得に当たっては米国史や公民の試験を義務づける。不法移民については重罪犯や短期オーバーステイ者は本国送還、それ以外は、罰金を支払えば特別ビザを発給し、合法的就職を認める。福祉の受給資格は与えない。同ビザ所有者が10年を経た時点で永住権申請を認める。『生得市民権』廃止は憲法上難しいが悪用は防がねばならない」
以上のルビオ案は常識に適うと思うが、トランプ氏らからは甘すぎるとの批判が出ている。なおトランプ氏の「イスラム教徒入国停止」発言は、「過激イスラム主義者は敵」の一言をあくまで口にしないオバマ大統領らリベラル派への粗雑な反動という面がある。
翻って、日本社会では自由を利用して害をなそうとする敵対勢力や、福祉にタダ乗りを図る動きに政治はしっかり対応してきただろうか。朝鮮総連に自由な活動を許し、外国人の土地購入に無警戒であった日本が、反動としての「際物」トランプ氏を生んだアメリカを笑えるのか。暴言にとらわれず日本を振り返りつつ、アメリカ政治の行方を注視していきたい。(しまだ よういち)
本音部分?
強いアメリカを望む声が多い。すっきりする人が多いのかも。
日本の国民も、甘い政治のかじ取りをいつまでも黙っていてはいけない。
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イスラム教徒に対する発言は、問題かもしれませんね。
宗教が絡んでいる問題なので時間がかかるのがわかるので、もし米国が本当に禁止した場合には文化として残る可能性が高いということですかね。
信教の自由を求めて来たというのは本当なのか?と思わせる事態になるかなぁ。
なかには、穏健派の自由を奪われている方々も存在すると考えられるし。
というか、昔やったことがあるかな、確か。
イスラム教徒の入国禁止とか。
理由はわかりませんが。