幸福実現党 江夏正敏の闘魂メルマガ vol.61
2016年3月1日発行
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江夏正敏 幸福実現党
政務調査会長のオフィシャルブログ
http://enatsu-masatoshi.com/
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1、江夏正敏の「闘魂一喝!」
「“核装備”についてリアル・ポリティクスの観点から考える」
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●日本を取り巻く厳しい国際情勢
先般、北朝鮮が水爆実験を行い、ミサイルの性能も向上させてきました。中国は核ミサイルを多数所持し、その照準を日本にも向けております。
そして現在も大軍拡を続けています。しかも、これらの国は唯物主義の独裁国家なので、道徳観念が希薄で暴発しやすく、他国への侵略を平気で行います。
日本の平和と安全を守るためにも、何らかの手を打たねばならない段階に入っていると言わざるを得ません。
特に中国は、移動式・多弾頭の核ミサイル戦力を持ってしまいました。このような国とは、基本的にアメリカは戦争を避けたがります。
東シナ海、尖閣諸島において日中が衝突しても、アメリカは軍事介入をしたがらない状況ができあがってしまっているのです。
アメリカの国力が落ちていく中、アメリカの抑止力に期待するだけでは、日本は守れません。自立した国家として、核装備を検討しなければならない時期が来たのです。
このままいくと、日本は日本自身で運命を決することができなくなる恐れが出てきました。
●核装備というと思考停止する日本人
しかしながら、「日本は広島と長崎に原子爆弾を受けて未曽有の被害を出したから、そんな恐ろしい兵器のことを考えてはならない」という空気が蔓延しています。
思考停止状態です。これではいけません。リアル・ポリティクスという視点で考えると、国際政治を主に動かしているのは軍事力であり、その究極的なものは核戦力です。
本当に日本国民の平和と安全を確保するためには、今までのタブーを破ってでも、必要なことを考えていかねばなりません。自分たちの国は自分たちで責任を持つべきです。
日本の安全保障を、アメリカの政治家に任せることが、道徳的だとは思えません。
日本人が自分たちの安全保障を考えることは当然の権利であって、危険なナショナリズムの復活ではないのです。
●核兵器とはいかなる兵器か
核兵器は確かに大量破壊兵器ですが、使われないことが暗黙の了解となって、相互抑止力を確立させる政治的兵器です。
核兵器は双方が保有していれば、実際には使われない、使うことができない兵器なのです。つまり、核兵器は「核兵器を使わせないための兵器」とも言えるのです。
簡単に言うと、核戦争が起きると、相打ちでお互いに潰れてしまいます。だから使えないのです。
ということで、核兵器というのは攻撃的兵器ではなく、本質的には防御的兵器とも言えます。「現状を維持するための兵器」と呼ぶ人もいます。
それは、何度も言うように、核兵器は実際の戦争で使用できない武器だからです。破壊力があまりにも強すぎて、実際には使用不可能になってしまったのです。
軍事的に対峙している国が両方とも核兵器を持っていたら、相互抑止の力学が働き、戦争ができない。
その意味で「ピース・メーカー」すなわち「平和をもたらす兵器」と表現している軍事学者もいます。
そして、核戦力の均衡によってつくられる平和が「ニュークリア・ピース」(核による平和)と呼ばれる状態です。
●核装備がなければ恫喝され、場合によっては攻撃される
このように、核兵器は双方が持っていれば「使われない兵器」になるけれども、片方だけ持っていると「使われる兵器」になります。
核兵器を持っていなかったら恫喝され殺されるだけで、持っていることによって、少なくとも相手に思いとどまらせることができます。
例えば、日本は広島、長崎でそれを十分に体験しました。
原爆を落とされたのは、私たちが原爆を保有していなかったからで、ポツダム宣言を受諾したのも、米国のさらなる核攻撃を恐れたからです。
評論家の加瀬英明氏によると、昭和20年8月当時にアメリカ陸軍長官だったマッケロイ氏との会話の中で
「もし日本が仮に一発でも原子爆弾を持っていたら、我々が広島・長崎に原爆を落とすことはあり得なかった」と述べていたとのこと。
マッケロイ氏は、当時ホワイトハウスで、トルーマン大統領が主催した日本に核攻撃を加える会議に出ていた一人です。
●アメリカ外交の本質
ここでアメリカ外交の本質を見ていきます。なぜなら、日本が核装備をするとき、同盟国であるアメリカの出方が極めて重要だからです。
まず、アメリカは理想主義(建前)を掲げる傾向があります。ウィルソン米大統領(=理想主義者)にちなんで「ウィルソニアン的外交道徳」と表現する人もいます。
そして、他国にもそれを押し付けます。しかし、現実のアメリカの政策決定においては、打算的で冷酷なリアリストとして
「アメリカの勢力圏拡大と覇権強化を追求する」というのが過去230年間のアメリカ外交の一貫した態度とも言えます。
実際に、アメリカは世界中に50以上の同盟国を持つ覇権主義国家です。
アメリカがこれほど多数の同盟関係を維持している理由は、これらの同盟国を「守り保護する」という善意からではありません。
アメリカは、これら同盟国をアメリカの覇権利益に都合がよいように利用するために同盟関係を維持しているとも言えるのです。
●国際政治学者ミアシャイマー教授
ミアシャイマー教授はアメリカ外交を次のように解説しています。
「アメリカ政府は、常にアメリカ外交の道徳主義を強調してきた。しかし、外交政策を決定するときはリアリストの論理。国家にとって、頼りになるのは自国だけ。
国際法や同盟関係が、国家を救ってくれるわけではない。国際社会とは『自ら助くるものを助く』という自助努力社会。
アメリカにとって同盟関係とは、所詮、『短期的な便宜上の結婚』にすぎず、今日の同盟国が明日の敵国となる、ということはよくあること。
アメリカは第二次世界大戦ではソ連、中国を助け、ドイツ、日本を攻撃した。
戦争が終わると、アメリカはこの同盟関係をあっさりと逆転させ、今度は西ドイツと日本を同盟国として利用して、ソ連と中国を敵国とする外交を実践した。
アメリカにとって大切なのは自国の国益なのであり、他国の国益をアメリカの国益に優先させることはあり得ない」
●日本の核装備をアメリカは許さない!?
アメリカは、核兵器が世界に広がることを嫌がります。道義的と言うよりは、アメリカの覇権を維持したいという部分が大きいと思います。
そのために、同盟国に対して“核の傘”の信憑性を外交宣伝しまくってきました。
同盟国が核を保有し、真の独立国になって、アメリカの庇護が不必要となり、言うことを聞かなくなることを恐れているからです。
つまり、アメリカの覇権が揺らぐからです。ですから、今までの流れでは、そう簡単には日本が核装備をすることをアメリカは許さないのです。
このようなアメリカの態度を「ウィルソニアン外交のレトリックを使うマキャベリ外交」と表現する人もいます。
ですからアメリカには「米中朝露・四か国の核ミサイルに包囲されている日本に、自主的な核抑止力を持たせないことがアメリカの覇権利益だ」と考えている人が大勢います。
同盟国であるにもかかわらず。ちなみに、“核の傘”の有効性に疑問を呈する学者が多数います。
アメリカが核戦争に巻き込まれるというリスクを冒してまで、他国のために核兵器を使用するとは思えないからです。
ゆえに、“核の傘”は消滅しているという意見がリアリストの中にあります。
有名なハンティントン教授も「アメリカは、同盟国(日本や台湾)を守るために、核保有国である中国と戦争したりする愚行は、絶対に避けねばならぬ」と述べています。
●アメリカに日本核武装論もある
一方、アメリカの中には、「日本に核装備をさせた方が良い」という議論もあります。
その意図は「日本をアメリカの“核の傘”の下に置いておくと、仮に日本が中国から核攻撃を受けた場合、アメリカは日本に代わって報復攻撃を加えなければならなくなる。
日本のために、アメリカの諸都市を危険にさらし、核攻撃の犠牲にするのはばかばかしい」ということです。
また「日本は核兵器を持った方が良い。その方がアメリカの国益にプラスとなる」と分析している学者もいます。
日本が核装備して自主防衛すれば「日本は中国の拡張主義をカウンター・バランス(牽制・阻止)する機能を果たす。
アメリカにとって、決して損ではない」という理由からです。日中の二虎競食です。
●日本の核装備を予想している人々
バランス・オブ・パワーの維持を重視するアメリカの国際政治学者たちは「冷戦終了後の日本は核を持つだろう。核を持たざるを得ない状況に追い込まれるだろう」と発言してきました。
ケネス・ウォルツ、ミアシャイマー、キッシンジャー、スティーブン・ウォルトなどは
「東アジア地域のバランス・オブ・パワーを維持するため、日本は核装備せざるをえない」という予測をしています。
また、共和党議員の中には「アメリカは、世界中のどの国と戦争しても勝てるわけではない。アメリカは核武装したロシアや中国と戦争するわけにはいかない。
今後、中国の軍事力は強大化していくから、アメリカが中国と戦争するということは、ますます非現実的なものとなる。だから日本は、自主的な核抑止力を持つ必要がある。
日本は立派な民主国家なのだから、もっと自信を持って、自分の国の防衛に自分で責任をとるべきだ」という意見を持っている人もいます。
●外国の核装備の事例
ここで、諸外国の核装備に関する事例を少しだけ見てみましょう。
◎フランスのド・ゴール大統領
フランスが核装備をしようとしたとき、当時のケネディ米大統領は「フランスやその他のヨーロッパの同盟国に核を持たせると、彼らが本当に独立国になってしまう。
もし彼らが独立したら、アメリカは『外からヨーロッパを眺めているだけの国』になってしまう。だから絶対にフランスに核を持たせてはならない」と考えていました。
それに対して、ド・ゴール仏大統領は、NATO司令官(米軍の大将)に「ソ連がフランスに核攻撃を仕掛けてきたとき、アメリカはいったいどのようにしてソ連と核戦争をするつもりか。
こういうとき、アメリカはフランス防衛のために、ソ連の核攻撃する、という軍事シナリオを具体的に示してほしい」と迫ったところ、その司令官は絶句したという話が残っています。
また、ド・ゴール仏大統領は「同盟というものは、相手の意図を抑止する上で非常に有効であるけれども、同盟は運命までは一緒にしてくれない」
「国民国家の最初の要件は、安全保障である。もし、国家が国民を守らないなら、そのような国家に対して国民は忠誠心を感じない。
税金を払ったり、法律を守ったりする必要性がない。国家が『国民を守る意志と能力』を示すからこそ、国民は国家に対して忠誠心を持つ」という考えを持っており、
フランスの核装備への道を開きました。
◎西ドイツのシュミット首相
西ドイツのシュミット首相は、ソ連がSS20を配備したとき「バランスの回復こそ政治家が目指す最大の任務だ」と言い切りました。
NATOはソ連との軍事的、政治的なバランスを回復しなければ、ソ連にやられるということです。
◎イギリスのサッチャー首相
イギリスが核兵器システムに予算をつぎ込む理由を聞かれたとき、サッチャー首相は「冷戦期に米ソが直接に軍事衝突をしなかったのは、核兵器のおかげである。
核兵器に非常に強い戦争抑止効果あることは明らかだ。核兵器への投資は、限られた英国軍事予算の生産的・効率的な使い方。現在の国際社会は、核兵器を持つ国が支配している。
それが国際政治の現実である」と述べました。
●日本が核装備をするときの論点
では、日本が核装備をするとき、いろいろな軋轢が生じると思います。その際、核装備に必要な論点を、一部並べてみました。
◎独立国として日本国民の生命・安全を守るため
日本は独立国です。その日本を、中国や北朝鮮という唯物論の独裁国家が核保有し、恫喝しているのです。
アメリカの国力が衰退し、“核の傘” の有効性が怪しくなり、ミサイル防衛システムも心許ない状況の中で、他国に日本の安全保障のための核装備を妨害する権利はありません。
妨害するならば、日本が独立主権国家であることを認めないことになります。また、これだけ危険な国が周辺にあれば、「自分の国は自分で守らなければならない」と思うはずです。
それに反対することは、道徳的に正しいことなのでしょうか。
◎日本は唯一の被爆国
日本は唯一の被爆国です。二度と悲劇を起こさないために、世界のどこ国よりも核装備をする権利があります。
「米中朝露という核保有国に囲まれた日本だけが核装備を認めない」という議論はグロテスクでもあります。
◎NPT(核拡散防止条約)を脱退してまで核を持つのか
1967年に締結されたNPTは、非核保有国の核武装を禁止するとともに、その第六条で、核保有国が「核兵器の廃絶」を約束していました。
しかし、核保有国は大規模な核兵器の増産を続け、最初から第六条を守るつもりはなかったのです。
NPTを高圧的な態度で日本に押し付けてきたマクナマラ国防長官自身、引退後に「アメリカのNPTに対する態度は、単に条約違反であるだけでなく、不道徳なものだ」と述べています。
著名な核戦略学者のバーナード・ブローディ氏は「NPTとは、国際政治において日本を永遠に劣等な立場に置くためのシステムである」と指摘しています。
さらに、東アジアにおいてNPTが機能していないことは、誰の目にも明らかです。米中朝露は、NPTに違反して好きなだけ核兵器を増産してきました。
東アジア地域で、NPTを真面目に守ってきたのは日本だけです。
この偽善と欺瞞に満ちたNPT体制にいつまでも縛り付けられていると、今後の日本の地政学的な状況は、ますます危険なものとなります。
また、NPT第十条に「この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、
その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する」とあります。日本を取り巻く国際情勢を見れば、NPTに縛られていると、日本が植民地になってしまいます。
◎アメリカの影響力低下
東アジアにおいて、今後、アメリカの影響力が低下してくるでしょう。それは、日本の安全保障にとって脅威です。
東アジアのパワーバランスは「中国優位、アメリカ劣位」に推移する中、アメリカにしがみついていれば安全という時代ではなくなってきています。
やはり、日本は自主防衛を考える時期が来ていると言えます。
●日本の核装備はいかなる形態がよいのか
では、日本が核装備をすることになった場合、どのような形態がよいのでしょうか。
それは、米露が持っているような数万発の核弾頭は必要ありません。
日本が自国の独立を維持するために必要な核装備とは、「ミニマム・ディテランス」と呼ばれるごく少量の核兵器のことです。
相手国からの先制核攻撃によって破壊されない少量の核兵器を持っている核小国は、たとえ所有する核兵器の量が相手国の百分の一であっても、
巨大な核戦力を持つ超大国に充分に対抗できるのです。核兵器を「究極的な均等化武器」と呼ぶ由縁です。
日本は島国で、国土も狭いので、地上から発射する核ミサイルや、戦略爆撃機から発射する核弾頭は、先制攻撃で殲滅されたら終ってしまいます。
やはり潜水艦から発射する核ミサイルが一番良いと思われます。これが必要最小限の自主的な核抑止力(ミニマム・ディテランス)となります。
この潜水艦の核ミサイルの費用は、毎年のGDPの0.2%ぐらいで十分という報告があります。とても安いので、防衛費の負担はあまりなく、逆に効率的と言えるでしょう。
●悲劇を防止し、平和のための核装備
核装備について、いろいろ述べてまいりましたが、その目的は、日本が植民地化され悲劇が起きないようにすることと、日本、東アジア、そして世界の平和のためです。
日本を核攻撃から守るためでもあります。唯物論の独裁国家が核装備し、近隣諸国を恫喝している異常な事態を止めるためには、
自由主義、民主主義を実行してきた日本がしっかりとした安全保障を確立(核装備も検討すること)し、地域の平和に貢献することは善であると考えます。
もちろん、東アジアの国際情勢を見ると、日米同盟は不可欠です。しかし、これからアメリカは中国の軍事的脅威から日本を本当に守ってくれるかは未知数。
そこで、日米同盟を堅持しつつ、自主防衛への取組みに踏み込むことが求められてきます。理想として、核兵器などはない方が良いのは当たり前です。
しかし、理想論だけでは、平和を維持することができなくなりつつあるのです。
そこで、現実的なリアル・ポリティクスの視点から詰めて考えていくと、核装備を検討しなければならなくなってきているのです。
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2、編集後記
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1月30日に幸福実現党の大川隆法総裁が核装備について言及されました。
政治活動の現場では、いろいろな議論がなされていると思われます。
そこで、今回のメルマガで、核装備の理論武装を提供しようと思いました。
「とりあえず、この辺を知っていれば、なんとかなるかな」とう感じです。
いつもの如く、長文になってしまいました。
ここまで読んで、たどり着いた方が何人いらっしゃるのかを心配しつつ、配信させていただきます。
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◆ 江夏正敏(えなつまさとし)プロフィール
1967年10月20日生まれ。
福岡県出身。東筑高校、大阪大学工学部を経て、宗教法人幸福の科学に奉職。
広報局長、人事局長、未来ユートピア政治研究会代表、政務本部参謀総長、
HS政経塾・塾長等を歴任。
幸福実現党幹事長・総務会長を経て、現在、政務調査会長。
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江夏正敏(幸福実現党・政務調査会長)
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核を相対峙させても、相手の核を無力化するような攻撃と同時に核を撃つかもしれませんね。
そこらへんも考えながら、準備しないといけないかなぁと。