
ウクライナ国境にロシア軍大集結。第三次世界大戦勃発か?ロシアからみたウクライナ問題の真相。(及川幸久)【言論チャンネル】
幸福実現党外務局長 及川幸久
http://hrp-newsfile.jp/2021/4184/
◆ロシア軍が国境に集結、第3次大戦の危機か?
12月3日、『ワシントンポスト』が、「ロシア軍17万5000人が国境に集結。
来年の年初には侵攻作戦があるのではないか」と報じました。
プーチンがウクライナを攻め、それが第3次世界大戦につながるのではないかと世界中が注目しています。
元々ウクライナとロシアは同じソ連ですが、位置関係はロシアの隣にウクライナがあり、
ウクライナの南側にクリミアがあります。
ウクライナ住民の多くは、ロシア系でロシア語を母語としています。
ウクライナのゼレンスキー大統領も母語はロシア語です。クリミア住民の多くもロシア系です。
ウクライナは1991年ソ連崩壊で独立しましたが、2014年に「ソチ冬季オリンピック」のタイミングで
ウクライナ騒乱が起こり、「極めてロシアに近い人たち」と「EUの方に行きたい人たち」に分かれたわけです。
◆クリミア問題の歴史的な背景
ロシアとウクライナの領土問題は、元々クリミア半島の所有権にありました。
ソ連時代はロシアもウクライナも1つの国で、実質国境はなくクリミアもロシアの一部でしたが、
フルシチョフがソ連の最高指導者であった時にクリミア半島をウクライナに譲渡することを決めてしまったのです。
その時点ではソ連が崩壊するとは誰も思っておらず、どちらにしても1つの国の中で、クリミア半島の所属が
ロシアであろうとウクライナであろうと誰も問題にしていませんでした。
ところが、まさかのソ連崩壊が91年に起こり、ロシアとウクライナに国境ができた瞬間にクリミアは
ウクライナに所属することになってしまったのです。
ただクリミアの住民たちは、ウクライナという国の傘下にあっても自治権を持った実質的に
独立国だという意識があったわけです。
そこに2014年のウクライナ内乱が起き、国民投票を行って「クリミア共和国」としてウクライナから
独立する道を選んだのです。
この時はロシアに入りたいというよりもウクライナから独立したいという意識が強かったのです。
ウクライナの中でロシア系住民を狙った事件も起きていたこともあったからです。
それが1回目の住民投票です。その後、2回目の住民投票で、クリミアはロシアに併合されることを決めました。
クリミアとロシアの主張は、ロシア軍が国民投票の間、クリミアをウクライナ軍から守っていたと言っています。
日本も含めて西側のマスコミが言っているように、プーチンが武力侵攻して他国の領土を略奪したという
見方だけではないということは認識しておいた方がいいと思います。
◆ウクライナ内戦の複雑な事情
ウクライナで、クリミア似たようなケースは数年前にもありました。
ロシアとトルコの間に挟まれ、かつてグルジアと言われていたジョージアの北側にロシアに隣接している
南オセチアという地域があるのですが、ここも一つの独立した共和国です。
南オセチアもロシアに入りたかったのですが、ジョージアはそれを武力で止めようとしました。
ロシアは、南オセチアの住人が殺されてしまうので軍を派遣し、結局ジョージアと戦争になったのです。
結果はロシアが強く休戦となり、南オセチアはジョージアから独立した形になっています。
他にもロシアと国境を接しているウクライナ東部ドンバスを中心とした地域もロシア側に入ることを
望んでいますが、ウクライナが西側の方に向いているので内戦になっています。
このようにロシア側に入りたいという民族国家は多く、クリミアはその内の一つです。
ウクライナ内戦の報道は少ないですが、普通の住民が戦っておりウクライナのドローンによる
ミサイル攻撃で子供達が殺されたりしています。
ロシアは、クリミアにもウクライナ東部の人たちにもロシアの市民権を与えているのでプーチンとしては
守らなければならない義務を持っているわけです。
そのような複雑な事情がある事をまず確認しておきましょう。
◆ウクライナとアメリカの接近
前編では、ウクライナの複雑な背景を説明しました。
さらに複雑にしていることは、この地域で紛争が起きることを喜ぶ人たちがいることです。
それはこの地域に武器を売っている人たちです。
アメリカがウクライナに「EU に入ったらアメリカが守ってあげます」と誘ったわけです。
ウクライナを誘っている側には、共和党の上院議員だった故ジョン・マケインやオバマ政権の時の
副大統領ジョー・バイデンやその息子もいます。
こういう人たちがウクライナをEUやNATOの方に向け、この地域の紛争に対してアメリカの兵器を売ってきました。
プーチンにとっては、ロシアとウクライナの関係において、もしウクライナがNATOに入ってしまったら、
アメリカ製のミサイルがウクライナの領土に配備されることを意味します。
モスクワのすぐ近くにアメリカのミサイルがずらずらと並ぶ。
これはロシアから見たら最悪のシナリオです。だからプーチンにとっては、これがレッドラインなのです。
それを許してしまうようなロシアの大統領はロシアの大統領ではないということになります。
だから今抵抗している。それでロシア軍をウクライナの国境近くに集結させている。これが今起きていることです。
さらにプーチンは、12月初めに最悪ウクライナがNATOに加盟しても、
NATOがロシアの国境に軍を配備しないという法的保障を要求しました。
今の報道では、ほとんどがアメリカ側や西側の報道ばかりで、ロシアやプーチン側の報道は少ないのです。
ロシアは信用できないというのが国際世論ですが、日本もそうでしょう。
プーチンは悪者でありプーチンは現代のヒトラーであるという国際世論がつくられています。
◆キューバ危機にも似たウクライナ危機
今起きていることと同じようなことがありました。それは1962年のキューバ危機です。
当時のソ連が秘密裏にキューバにソ連製の核ミサイルを配備しようとしていました。
キューバは、アメリカのワシントンのすぐ近くです。そこに核ミサイルが配備されてしまったら
アメリカにとっては大変なことになります。
ケネディはどうしたかというと、キューバ周辺を海上封鎖しアメリカの艦隊によってソ連製の核ミサイルが
キューバに入ってくることを阻止しました。
この時、世界の緊張がピークになった時ですが、しかしケネディの判断は正しかったのです。
この時のケネディの立場と今のプーチンの立場は同じかもしれません。プーチンとしてはモスクワの
すぐ手前にアメリカ製のミサイルが並ぶことを絶対に阻止しなければなりません。
今のアメリカは、前述のようにオバマ政権の時からプーチンを追い込んでいます。
2014年のウクライナ騒乱をきっかけに、プーチンがクリミアを奪ったことは国際法違反であると、
当時のアメリカの大統領オバマは、ロシアに対して経済制裁を行いました。この経済制裁は今でも続いています。
そうなるとロシアは、完全に国際社会から孤立し中国やイスラム諸国や北朝鮮の国々と連携するしかなくなってきます。
それが世界大戦の危機です。ここはアメリカも日本も、もっと冷静に考えなければいけません。
ロシアを追い込むことが本当にいいことなのかを。
オバマ政権に日本も要求されてロシアに対して経済制裁をしましたが、その結果せっかく安倍政権が
進めていた日本とロシアの平和条約、そして北方領土返還交渉が全て止まってしまったわけです。
あらためて、日本はこの国際情勢から教訓を学び冷静に判断すべき時であると考えます。
執筆者:及川幸久
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