2007年8月6日(月)13:00開演 東京宝塚劇場 SS席 2階3列30番台 雪組公演
◆三井住友VISAミュージカル『エリザベート』-愛と死の輪舞-(脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ/音楽:シルヴェスター・リーヴァイ/潤色・演出:小池修一郎)
水夏希さんと白羽ゆりさんの新トップコンビお披露目公演が『エリザベート』と発表されたとき、即、観に行こうと決めた。なんとしてもチケットを確保せねば!しかし、先行抽選はことごとくハズレ。今度こそと挑んだ一般前売も、あと一歩のところで購入できず。ガーン。厳しい…厳しすぎる…。ショックに打ちのめされながらも、次の手段を考える。なんとしても水トートにお会いせねば!そんな私の熱い思いが天に通じたのか、8月6日のチケットが私の手に舞い降りてきた!なんとSS席(2階だけど)!しかもセンターど真ん中!すごい!なんという幸運!あぁ、諦めないで頑張ってよかった…(嬉泣)。
私が知っている『エリザベート』は3つ。生で観劇した東宝版(山口トート・一路エリザベート)と、DVDを購入して観た宝塚雪組版(一路トート・花總エリザベート)と、CS放送を録画して観た宝塚月組版(彩輝トート・瀬奈エリザベート)。同じ作品でも演じる人が違うと、微妙に違った感じになるのが面白い。どちらのDVDもかなりの回数再生し、ミュージカル・ナンバーは、ほぼ暗記(笑)。感想を「好き」か「嫌い」かで答えれば、断然「好き」。好きな理由その1「音楽」。シルヴェスター・リーヴァイさんは天才だ。好きな理由その2「脚本・歌詞」。ミヤェル・クンツェさんも天才だ。好きな理由その3「トート」。やはり、このドラマを面白くしているのはトートという存在だと思う。トートという存在を思いついたクンツェさんもスゴイが、それを主役にもってきて宝塚流に「潤色」した小池修一郎さんもスゴイと思う。果たして今回はどんな『エリザベート』になっているのか?1回しか観劇できないので、1つも見逃すまいという覚悟のもと観劇に臨んだ。いざ、エリザベート!
【ACTⅠ】
《第1場 プロローグ》
このプロローグはぜひ生で観たかった場面の1つ。始まりは演じる側も見る側も緊張するもの。ルキーニ(音月桂)の登場をドキドキしながら待つ。上手から登場したルキーニとは対角線の方向である左後方から裁判官の声(磯野千尋)が聞こえてきたことに新鮮な驚きがあった。(DVDでは分からない。)プロローグの大合唱は迫力があって凄い。やっぱり生はイイ!そして、トート閣下(水夏希)!妖しい美しさを醸し出していて素敵だー!水トート最高!(笑)
《第2場 ポッセンフォーフェン城》
エリザベートの肖像画の中からシシィ(白羽ゆり)が登場。可愛い。自作の詩を披露する。今、改めて考えてみると、「自由という名の神」って、結局「トート」のことだったのかなぁ?ママに呼ばれた時の「は~い。」という返事の仕方がツボ。「♪パパみたいに」なりたいと歌うシシィのその後を思うと、明るい曲だがちょっぴり悲しい気持ちになる。
《第3場 シュタルンベルク湖畔》
ヘレネ(涼花リサ)が登場から激しく躓いて、帽子を飛ばしてしまうのが可愛い(笑)。皇帝陛下との見合い話に浮き足立っているのか?「♪ようこそ、みなさま」はつい一緒に口ずさんでしまう楽しい曲。ルドヴィカ(灯奈美)の見せ場ですね~。ちょっと意地悪そうな親戚のおばさん(舞咲りん)の演技に目が行って仕方がなかった(笑)。
《第4場 冥界~シシィの部屋》
初めてシシィと目が合った瞬間のトート閣下の驚きぶりにこちらも驚いた(笑)。「死神」が「人間」を愛してしまった瞬間なんだなぁ~。おまえの命奪う替わり/生きたおまえに愛されたいんだ/禁じられた愛のタブーに/俺は今踏み出す~♪ ベッドの上で目を覚ましたシシィ。自分以外の人々にはあの人(トート)が見えていないの?という感じの演技がよかったなぁ。
《第5場 謁見の間》
出た!「宮廷でただ一人の男」皇太后ゾフィー(未来優希)!歴代ゾフィーに比べると、普通に綺麗なメイクだ。でも、強く~厳しく~冷静に~冷酷に~♪なのだ。若き皇帝フランツ・ヨーゼフ(彩吹真央)は寛容で善意の名君と呼ばれたかったということが、はっきり聞き取れた。皇帝がお見合いに行ってしまった後、その場に残されたシュヴァルツェンベルク公爵(緒月遠麻)が「チッ!」と舌打ちしていた。あれは「お見合いどころじゃないだろーがっ!」っていう気持ちを表しているんだろうな(笑)。
《第6場 バート・イシュル》
フランツが、お見合い相手のヘレネではなく、付き添いのエリザベートの方を見初めてしまうという場面。この場面、面白くて大好きだ~。歌の合間に入る「さささ。」とか「えっ!?」とかの短い台詞が効いている。シシィが落としたオレンジを拾いに走るのだが、どうやら今回はオレンジの勢いがよかったらしく、シシィはダッシュの後、腹這いになって必死にオレンジを捕まえていた。可愛い(笑)。フランツでなくても一目惚れしてしまいそう。計画通りうまく運ぶわけがない~♪というダンスがツボ。
《第7場 天と地の間》
フランツはエリザベートに結婚を申し込む。突然のことに驚き戸惑うシシィ。フランツは自分の気持ちと皇后の立場について切々と語る。彩吹フランツは本当に誠実そのもの。そんな皇帝の誠実さに、シシィは結婚を決意する。「♪嵐も怖くない」と歌いながら、手に手を取って銀橋を歩く若い2人。その手をいつまでも離さなければ…と思わずにいられない。
《第8場 結婚式》
フランツとエリザベートの結婚式。ハプスブルグの栄光の終焉の始まり。陰の司祭であるトートは、エリザベートの誓いの言葉をあざ笑う。エリザベートの「はい。」という誓いの言葉が不気味にこだまする中、黒天使達がエリザベートのヴェールを取り、舞台の前面を覆う。最初は水平に、最後はギザギザになるように持ち替えるのだが、この形、今回のトートの衣装のモチーフである「ちぎれた翼の跡」に似ているような気がする。考えすぎか?
《第9場 舞踏会》
ゾフィーとマックス(立ともみ)は2人の結婚は失敗だと嘆く。ゾフィーは「シシィがぶっつぶした」とか「マヌケね!」とか言っているし、マックスは「マザコン皇帝」なんて言い放っている。よく聴くとスゴイ歌詞。本家版でもこうなんだろうか?ワルツの途中から怪しい雰囲気になり、いつの間にかエリザベートはトートと2人きりに。水トートがついに本性を現して、エリザベートに迫る!抱き寄せる!!抱き締める!!!(笑)そして、最後のダンスは俺のもの/おまえは俺と踊る運命/闇の中から見つめている/最後に勝つのはこの俺さ~♪とロック調の激しいリズムに乗せて、歌とダンスでエリザベートを押しまくる!ガシャーン!というガラスが割れる音とともに現実世界に戻ったエリザベートはフランツに縋りつく。フランツと2人なら「♪嵐も怖くない」…はず…だったのに…。
《第10場 シシィの寝室》
出た!ゾフィー!「♪皇后の務め」もつい口ずさんでしまうナンバー。女官のダンスもツボ。皇后の務めを叩き込みに来たゾフィーに耐えかねたシシィは、フランツに助けを求めるが、逆に母の意見に従うべきだと諭されてしまう。味方になってくれるとばかり思っていたフランツにそんなことを言われたシシィは思わず「出て行って!」と言ってしまう。ちょっと戸惑った表情を見せながらも、黙って出て行く彩吹フランツ。はっとして振り向くシシィ。かっとして「出て行って!」なんて言ってしまったけど、本当は出て行ってほしくなかったのでは?そう言えば、優しいフランツなら「分かった。君の好きなようにしていいよ。」と言ってくれると信じていたのでは?2人の人生を2本のレールに例えるなら、そのレールは平行ではなく、クロスしていたのではないかと思う。最初は遠く離れていたものが、徐々に近づいて交差した瞬間、恋に落ちた。若い2人はゆっくりと愛を育もうと誓い合うけれども、それぞれの人生のレールは少しずつ、でも確実に離れてゆき、二度と交差することはない…。寝室に一人取り残され絶望に打ちひしがれるシシィ。ペーパーナイフで自殺を図るが…。
《第11場 天空》
自分はなぜ死のうとしているの?私は「自由という名の神」を求めていたのではなかったか?籠の鳥なんて嫌。自分の生き方は自分で決める。自分の生命を委ねるのは、フランツでもハプスブルクでもない。ただ一人、私だけ!エリザベートの独白「♪私だけに」は長い場面(に感じる)。皇后ではなく、一人の人間として、自由を求めて強く生きていこうと決意するシシィ。最後の絶唱が堪らない。「私にーーーーー!」
《第12場 夫婦の絆》
ルキーニがフランツとエリザベートの結婚生活を説明する。当時の貴族の慣習とはいえ、産まれたばかりの赤ちゃんを取り上げられ、勝手に「ゾフィー」なんて名前を付けられてしまったシシィの気持ちを想像すると、やっぱり可哀相。しかも「初孫です!」って…理由になってない気が(笑)。ルキーニが廷臣達の歌を指揮してるのが可笑しい。
《第13場 ハンガリー訪問》
ハンガリー訪問同行と引き替えに子供達を取り戻したシシィ。三色旗を模したドレスと美貌でハンガリー市民の心を掴んだ。この時、シシィには自分の進むべき道(取るべき手段)が見えたんじゃないかな。独立運動推進派のエルマー(彩那音)達は予想外の展開に意気消沈。そこへ水トートが現れ、ウィーンへ行けと妖しく誘う。「♪闇が広がる」を聴いていると、本当に不穏な空気が広がってきて、ハプスブルクの崩壊が近づいてくる感じがする。リーヴァイさん、恐るべし。
《第14場 ウィーンのカフェ》
ここもぜひ生で観たかった場面の1つ。理由。トート閣下はいつ舞台に出てきているのか?(笑)DVDはうまく編集されているから、そこを映さない。ずーっと気になっていたので、この場面ではカフェの左右の出入口付近に視線集中(笑)。で、右(上手側)のドアから鍔広帽子を目深に被り、新聞紙で顔を隠しながら入ってくるトート閣下を発見!そーかー、このタイミングで入ってきてたんだー。満足(笑)。
《第15場 シシィの居室》
フランツはシシィのことを本当に愛しちゃってるんだなぁ。フランツはシシィの存在に癒されるのかもしれないけど、シシィはフランツの存在だけでは癒されない。シシィには「自由」が最大の癒し。フランツは生まれたときから「皇帝教育」を受けてきたわけで、しきたりを守って生きていくことを当然のこととして受け入れている。だが、シシィは違う。2人の価値観の違いは、年月が経つに従って、開きこそすれ、縮まることはない。ところで、トート閣下が出てくるところは何?クローゼット?神出鬼没なわりに、「出て行って!」と言われて扉から出て行く閣下が可愛い(笑)。しかも、扉を閉めた瞬間、ものすごく悔しそうな、残念そうな、悲しそうな表情をするのがまた可愛い(笑)。
《第16場 ウィーンの街頭》
「♪ミルク」もぜひ生で観たかった場面の1つ。貧困に耐えかねた市民達の怒りがマックスに達して、それがやがて革命へと発展していく…そんな熱い空気感にゾクゾクした。ベルばらのバスティーユに通じるものを感じる。そして、なんといっても大好きなのが、水トートの「そう。」の一言。たった一言で私の心を鷲づかみ(笑)。銀橋にずらっと出演者が並んだとき、真ん中にいらっしゃるトート閣下とバッチリ目が合ったと確信している!(きっと、客席にいる全員がそう思ったと思うが。)
《第17場 更衣室~鏡の間》
エリザベートの「最後通告」に対して、「手紙」何度も読んだよ~♪と歌う彩吹フランツが切ない(泣)。エリザベートの希望を全て叶えると約束するフランツ。お言葉嬉しく伺いました~♪と歌うエリザベートは、純白のドレスに身を包み、輝くばかりの美しさ。美に対する自信と自由を勝ち得たという喜びに溢れている。陛下と共に歩んで参ります~♪と歌うけれども、私はあなたのものじゃない、私は私だけのものとキッパリ言い切る。
【ACTⅡ】
休憩時間に何やら場内が騒がしくなった。2階席から1階席を覗き込んでいる人達もいる。はは~ん、これはOGか有名人が観に来ているんだな?元雪組トップの朝海ひかるさんだったりして。まっさか~。などと友人と話していた。もし本当に有名人が来ていれば、きっと2幕の最初でルキーニが紹介してくれるはず。案の定、ルキーニは客席を見て、本日の美男美女を紹介してくれた。「V6の坂本昌行さん!」(えー!あぁ、そういえば湖月わたるさんが出演するミュージカルの主役だよね。)「そして、朝海ひかるさん!」(ええー!!マジで来てたの!?見たいー!)「さらに、大浦みずきさん!」(えええー!大物だー!『ダンシング・クレイジー』観に行きたかったよ~)偉大な先輩や、前トップが観に来ているとなれば、雪組さんは最高の舞台を披露しようと一丸となって頑張っているはず!これは後半戦も見逃せないぞ。
《第1場 キッチュ~戴冠式~私が踊る時》
エリザベートはハンガリー王妃になった。だが、その王冠を授ける大司教はトート閣下。ハプスブルクの崩壊にまた一歩近づいた。「エーアン、エリザベート!」の歓呼に酔いしれているエリザベートの前に再びトートが現れ、「自由」を与えようと誘うが、エリザベートは私はもう自由と言い、たとえ死ぬときでもあなた(トート)とは踊らないとキッパリ拒絶。
《第2場 ラビリンス》
ルドルフ少年(冴輝ちはや)は宮殿で一人ぼっち。愛する母の帰りを待っている。そこへ現れたトート閣下。友達になってあげるよと囁きかける。ルドルフが勇気を試すために猫を殺したと告白した瞬間の、トート閣下の反応が面白い。あれは何を意味しているのかな?エリザベートにとっても、またその血を引き継ぎ、市民的な教育を施されたルドルフにとっても、宮殿はまさに出口の見えない迷宮(ラビリンス)だったんだろうなぁ。
《第3場 ゾフィーのサロン》
目には目を、剣には剣を、美女には美女を!というわけで、皇后以上の美女を探して、皇帝を皇后から引き離そうという作戦が企てられる。ラウシャー大司教(奏乃はると)の「宅配を取るのです!ピッツァを取るように!」という驚きの提案が、意外にもゾフィーに採用される。
《第4場 食堂》
宅配されてきたのは「マダム・ヴォルフ(晴華みどり)のコレクション」。通常のコレクションは6人の娼婦達。本日のスペシャルメニューとして、鳥(娼婦A)と魚(マデレーネ)をご用意。特にオススメなのがマデレーネ(愛原実花)!ということだろうか。マデレーネが黒天使ということは分かっていたが、鳥の2人も、あれ?もしかしたら…と思って後でプログラムを確認してみたら、やっぱり黒天使だった。あの3人はトート閣下からの贈り物(罠)なわけね。初めのうちこそこれはマズイだろうという表情だった彩吹フランツも、マデレーネからの強烈ウィンク&投げキッス攻撃で、ついにトート閣下の罠に落ちてしまった。
《第5場 運動の間》
ドクトル・ゼーブルガーに扮したトート閣下は、フランツとマデレーネの2ショット写真をエリザベートに見せる。夫の不貞に驚愕するエリザベート。トートは、今こそ自由な黄泉の世界へ行こうと誘うが、そこでまたエリザベートは敢然と立ち上がる。今度はゾフィーだけでなく、フランツにも背を向けて、自由に生きてみせると。
《第6場 安らぎのない年月》
失意のエリザベートは旅に出た。白羽シシィはものすごい速さで舞台の上を行ったり来たりしていて、女官達は本当についていくのが大変そうだった。いつのまにかルドルフ(凰稀かなめ)は成人し、ゾフィーの寿命も尽きた。しかし、エリザベートの旅は終わらない…。
《第7場 病院》
エリザベートは慈善訪問先の病院で、心を病んだ女性患者ヴィンディッシュ嬢(天勢いづる)と出会う。彼女は自分を本物のエリザベート皇后だと思い込んでおり、偽者を連れ出せと大騒ぎする。エリザベートはそんなヴィンディッシュ嬢を見ているうちに、「魂の自由」について考える。これ以上旅を続けても、私は自由になれない。私の「魂の自由」はどこにあるんだろう?
《第8場 ラビリンス》
第8場~第11場までは本当に目が離せない。『エリザベート』の中でも最も印象深い場面の1つ。ルドルフが君主制の危機を訴え、ドナウ連邦を進言するが、父親である皇帝フランツはそれを却下。皇位継承も考え直すと言われ、意気消沈しているルドルフのもとに再びトート閣下が現れ、未来の皇帝陛下よ立ち上がれ!とけしかける。「♪闇が広がる」での、あのトート閣下とルドルフのダンスの振りは絶妙だと思う。ルドルフの悩み・苦しみ・夢・希望みたいなものがビシビシ伝わってくる。それを巧妙に操り・けしかけ・励ますトート閣下のリード!う~ん、恐ろしい(笑)。
《第9場 独立運動》
ルドルフは密かにエルマー達と手を組み、ハンガリー独立運動を推し進めていた。ルドルフはそれが正しい行動だと信じているが、自分が反逆者になってしまうことを恐れていた。エルマー達は、ルドルフこそがハンガリーを救い、ハンガリー国王になるのだと熱く語る。そこで舞台は一変。ハンガリー。ルドルフ国王の戴冠式。ハンガリー市民による「エーアン、ルドルフ!」の歓呼の中、エリザベートから王冠を授けられるルドルフ。誇らしげなルドルフの表情が、かえって切ない(泣)。そこでまた舞台は一変。黒天使に王冠を奪われ現実に引き戻されたルドルフ。やるしかない。独立運動がどんどん盛り上がっていく。後ろではトート閣下が巧みに民衆を扇動している。そこで銃声が!反乱軍の首謀者としてルドルフが捕まってしまう。怒り心頭の皇帝フランツ。ルドルフの皇位継承は完全に無くなった。
《第10場 控えの間》
孤立無援のルドルフのもとに母エリザベートが帰ってきた。「♪僕はママの鏡だから」と窮状を訴えるけれども、今のエリザベートには息子の心の叫びさえ届かない。政治の話ね…昔のことよ…と。
《第11場 鏡の間》
最後の望みを失ったルドルフにトート閣下が囁きかける。死にたいのか?ルドルフは黒天使達に弄ばれた末、閣下から手渡された銃で自殺してしまう。最期の瞬間、かすかに微笑んでいたよね?魂の自由を得られたのかな?
《第12場 葬儀》
エリザベートにとってルドルフの死は青天の霹靂だった。自分のことばかり考えていて、ルドルフの問題に気づいてやれなかった。血を分けた息子であるルドルフも、自分と同じ問題を抱えていたことに、亡くして初めて気づいた。自分の半身を失ったかのような衝撃。そこへトート閣下登場。生きる気力を完全に失ってしまったエリザベートは、死なせてくれと懇願する。待っていた時がやっと訪れたと、喜びに打ち震える閣下。しかし、エリザベートの顔を見た瞬間、閣下の形相が一変。まだ私を愛してはいない~♪ 死は逃げ場ではないともおっしゃる。他の人間の死に求めるものと、エリザベートの死に求めるものは違うんでしょうね。何せ閣下はエリザベートに「恋」しちゃってますから。永遠の自由の海を共に渡っていこう…という状態ではない、ということですかね?
《第13場 ウィーンの街頭~レマン湖畔》
ルキーニはフランツとエリザベートの肖像が描かれたマグカップを売りながら、2人はキッチュな「永遠のすれ違い夫婦」だと歌う。フランツはエリザベートの旅先を訪れる。ウィーンに戻ってきてほしい。私は今でもあなたを愛している。信じてほしい…。「♪夜のボート」の歌詞は素晴らしいと思う。どうやって思いついたんだろう?皇后暗殺の現場が「レマン湖」だったから、「ボート」を思いついたのかな?たとえボートが近づいたとしても、夜霧に包まれ相手が見えず、すれ違うばかり…。クンツェさんはこの歌詞を書き上げたとき、やった!って思ったんじゃないかなぁ。ひげもじゃの彩吹フランツがゆっくりと歩いてきて、そっと左手を差し出すのに、エリザベートはそれに見向きもせず、通り過ぎてゆく…。彩吹フランツが握り返されることのなかった左手をじっと見て、そっと握り締め、再びゆっくりと歩き出すシーンは本当に切ない(泣)。フランツが皇帝陛下じゃなかったら、この2人はうまくいっていただろうに…。
《第14場 霊廟》
煉獄の裁判所では、フランツとトートの最終答弁が始まった。エリザベートが愛していたのは一体誰だったのか?フランツは言う。エリザベートがあなた(黄泉の帝王)を愛するはずがない。あなたはエリザベートに拒絶されるのを恐れているのだ!トート閣下の「違ーう!」がツボ。トートは、かつてエリザベートが自殺に使おうとしたペーパーナイフをルキーニの手に落とす。
《第15場 エピローグ》
1898年ジュネーブ・レマン湖畔。イタリア人無政府主義者ルイジ・ルキーニがエリザベートを襲った。その瞬間、エリザベートはトートの存在を感じ、ルキーニのナイフ(トートの愛)を受け入れた。エリザベートのシンプルな白い服は、現世の様々なしがらみから解き放たれた状態を表しているのだと思う。悩みも苦しみもない、自由な魂になって、トートと共に永遠の海を渡っていく…最後の昇天シーンを観ながら、そんなことを思った。
《第16場 フィナーレ》
彩吹さんが「♪愛と死の輪舞」を歌い上げ、フィナーレがスタート。続いて近衛兵達によるロケット。可愛いくて大好きだ。暗転。大階段には淑女達が。その真ん中を白い衣装に身を包んだ水さんがゆっくりと降りてくる。スポットライトが当たった瞬間、踊るなら~♪と始まり、場内は拍手の嵐。「♪私が踊る時」を使った、スターと淑女達のダンスナンバー。
それが終わると、水さんは舞台上で黒燕尾に衣装チェンジ。今度は、紳士達による「♪闇が広がる」をアレンジした強烈なダンスナンバー。私、これ、大・大・大好き!男役の燕尾群舞はやっぱカッコイイ~。ホレボレ~。「フッ!」「ハッ!」っていう掛け声も、めちゃツボ。実は宝塚を観始めた頃は、ロケットの「ヤッ!」とか、男役の「フッ!」「ハッ!」とかいう掛け声に若干引き気味だった(笑)。が、今では逆にそれがクセになり、言ってくれるとうれしい(笑)。
そして、トップコンビによるデュエットダンス。「♪最後のダンス」のタンゴバージョン。大階段中央にいる水さんが右手を前に差し出し、さぁ、上がっておいで、みたいな振りをすると、舞台中央から白羽さんが、すーっとせり上がってくる。芝居の時から感じていたのだが、今回の水さんは付け爪をしているせいか、手の仕種がとても素敵だ。指先一本一本まで気が行き渡っているというか、手が感情を表しているというか、とにかく目が惹きつけられる。で、肝心のデュエットダンスだが、水さんも白羽さんも、とってもカッコよかった~。ダンスが終わった後、銀橋センターで客席に向かってお辞儀をするのだが、その時も確実に水さんと目が合った!(と全員が思っているのだろう…)
最後はパレード。水さんが一際大きく立派な羽根を背負って大階段を降りてきた。最高の笑顔。トップ就任おめでとうー!そして、銀橋にスターさん達がずらりと勢揃い。あぁ、センター席って素晴らしい!ニコニコ笑顔の水さんや白羽さんや彩吹さん達の顔がものすごく間近に見える!水さんは目がいいから2階席の観客の顔まで見えると何かで読んだような記憶が。きっと舞台からもこちら(客席)が見えているんだろうなぁ…などと思いながら、素晴らしい舞台に精一杯の拍手を送った。何だか無性に感動。あぁ、観に来れて本当によかった(嬉泣)。水さん、大好きだー!(笑)