.:*:サクとノリの記録.:*:

プラダー・ウィリー症候群 サク★ウエスト症候群 ノリ
兄弟の日々と成長の記録
母(看護師)父(作業療法士)

原因~予後

2014-10-24 13:30:00 | プラダー・ウィリー症候群とは

(原因)

PWSは、父親由来の15番染色体長腕にある、隣接した複数遺伝子群の機能が欠如したことで起こります。

これは自然な生物現象のひとつであって、親の責任はまったくありません。

・15番染色体の部分欠失によって生じるもの(欠失型 約70%)
・染色体の欠失がなくても、15番染色体が2本(1対)とも母親だけに由来したもの(片親性ダイソミー型(UPD) 約25%)
・刷り込みセンターの異常でPWSになるもの(刷り込み変異、5%以下)




(遺伝性)

次の子が同じ病気である確率(再発危険率と呼びます)は極めて低く、0.1%以下と考えられます。



(診断)

新生児では、
・筋肉の力が弱い
・活気がなくい
・性器は小さめ など


大人では、
・低い身長
・小さな手足
・中枢神経系の働きの異常
・性の成熟の遅れ
・太い筋肉の力の低下 など




(症状と対処法)

・筋力の低下による哺乳困難

新生児期から乳児期かけて、筋肉の緊張が低下して全身の筋肉の力が弱くなります。
原因は筋肉の緊張を調節する脳の神経の異常ではないかと考えられています。
ミルクが上手く飲めず、すぐ疲れてしまうため、なかなか体重が増えません。
場合によっては、鼻から胃や十二指腸に細い管を入れて栄養を行わなければならなくなります。
この筋肉の力の極端な弱さは一時的なもので、1歳前後から徐々に改善して行きます。



・精神、神経、運動の発達の遅れ

筋肉の力が弱いため、乳児期から2歳頃にかけての運動の発達が遅れます。
首がすわるのは通常9カ月前後、ひとり歩きが出来るのは通常3歳前後です。
徐々に筋肉の力は改善して行くのですが、今度は肥満の影響が出てきて、運動能力は同年齢の正常児に比べると劣ってしまいます。
筋肉の力の弱さに加えて、その協調もうまくとれないため、跳んだり走ったりすることによって関節を痛めてしまうことがあります。
骨がもろく(骨粗鬆症)、筋肉の束が細いため、骨折を起こす頻度もやや高くなります。
静かな運動や水泳、歩くなどの適度な運動をするようにし、学童では体操もこれに準じて激しいものは避けるべきでしょう。
知能の遅れは余り重くなく中等度から軽度で、正常な場合もあります。知能指数(IQ)は40~105で、平均は70との報告がありますが、多くは50前後との報告もあります。(正常の平均は100)
抽象的なことを考えることは苦手のようです。
食べ物を探す知恵には優れたところを示すことがあります。
15%~20%にけいれんが見られます。



・言語の発達の障害

発声を行うための筋肉の力の弱さや、唾液の量が少ないことなども関係しているのかも知れません。
言葉を話す能力の発達は遅れますが、言葉を理解する能力の発達はそれほど悪くないことがあります。
このため,上手く意思を伝えられずに欲求不満をおこすことがあります。




・食欲亢進と肥満

1歳以降、多くは3~4歳頃から、食欲を抑えることが出来なくなり、筋肉の力も出てくるため、急に食べるようになりますが、今度は食べ過ぎになります。また、PWSでは、安静時の代謝率が低くなっているため、同じ栄養をとっても消費されるエネルギーは少なくなっています。このため、食事を制限しないと95%が急速に肥満を来します。この肥満は手足に比べて体の中心部に目立つため、手足はやや小さく見えますし、身長も低目です。
自分で気をつけている患者さんでも
食べ物に対する飽くなき欲求はずっと存続します。
隠れ食いや盗み食いも少なくありませんので、食べ物は鍵のかかる場所に保管しなければなりません。
また、無用に食欲を刺激するような言動や行動は慎むべきです。
本人だけにまかせず、周囲の人間も協力して食事管理をしてあげることが大切です。
PWSでは、カロリーの消費量は少なくなるため摂取する食事のカロリー量も少な目で大丈夫です。
決められた時間に規則正しく食事を行う生活習慣を作り上げることも大切です。また、適度な運動・活動を行う「運動療法」も体重の調整には不可欠です。

薬物療法としては,食欲を失わせる薬物(食欲抑制剤)や精神神経薬などが用いられますが、多くの例では余り食欲を制御するのには役に立っていません。薬物治療を不必要に継続することは余りお勧め出来ません。



・肥満による糖尿病,動脈硬化,呼吸困難


・性腺の機能低下

男性では、停留睾丸または潜伏睾丸といい9割前後に見られます。
女性では、小陰唇やクリトリスが小さかったりします。
思春期の16歳を過ぎても、女性・男性に特有な性徴がなかなか見られず、男性ではヒゲが生えて来なかったり、声変わりをしない、女性では月経が来なかったり、その回数が少なかったりするなどの性の発達の遅れが見られます。

子供を作れるという報告は,残念ながら男女いずれでもまだなされていません。



・軽度の顔の奇形と歯の問題

幼児期には顔の巾が狭いのに比べて頭が前後に長めです。額の前の部分が狭く、目はアーモンドのような形で、上の唇が薄く、口が小さく見えます。
口の両端が下がっているのも特徴的です。
斜視や近視の見られることもあります。
歯の問題も多く、
・歯がはえるのが遅い
・歯のエナメル質が柔らかい
・虫歯になりやすい
などの異常が6割近くに認められます。唾液の量は少なく、濃くねばねばしており、口の中を清潔にしておくのが困難です。歯ぎしりも時に認めます。




・行動の問題

PWSでは、複雑な中枢神経系にいろいろな原因による障害があるため、かんしゃく持ち、乱暴な感情の爆発がある、被害妄想的であるなどの行動の問題が生じます。通常、一番楽しいはずの就学前の時期からこの傾向は現われて、年齢とともに程度が強くなります。
・自傷行為
・論争好き
・頑固
・所有欲が強い
・ごまかす
・盗癖
・嘘をつく
・落ち込みやすい
などの問題行動が見られることがあるとされています。




・成長の障害

日本の患者さんでは身長の低くなる頻度は30~50%です。

側彎症に対しては、定期的に検査を行って、必要ならコルセットを付けたり、程度の重い場合には手術が必要となることもあります。




・痛みに鈍感、体温の調節障害、皮膚の障害、色素の異常

痛みに対して鈍感になっているため、けがや病気がこじれてしまうことがあります。感染を起こしても、訴えはじめる頃には重症化してしまっていることが少なくありません。

約2/3のPWSの患者さんでは、吐くことが上手く出来ません。

原因不明の高体温や低体温が認められることもあります。体温に応じて、周囲の温度調整をしてあげることも必要になります。
皮膚を掻破する(かきむしる)ことがよくあります。このため、引っ掻き傷がたえず、痛みに鈍感なため、出来かけの「かさぶた」ははがされ、傷口はいじられてしまい、治るのに時間がかかるばかりでなく、感染を起こしてしまう場合もあります。傷がある場合には,根気強い治療が必要です。
髪の毛の色が茶色っぽかったり、皮膚の色が家族に比べてやや白い、網膜の色素が薄いなどの低色素症が見られることがあります。



(予後)

PWSの寿命は,体重をきちんとコントロールして肥満に伴う合併症の発生を予防すれば、ほとんど正常の人々と変わりません。
ただ、肥満を防ぐ食事療法は、PSWという病気そのものが過食という中枢神経症状を持っているために、肥満を防ぐ食事療法を理想通りに行うのは困難ですし、患者本人だけの努力では不可能です。家族や周囲の人間の協力が不可欠です。




(東京医科大学 参照)

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