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還暦おやじの洋楽日記

Manassas / Manassas

この夏、CSN&Yの40年前の再編ツアーの様子を収めたCD3枚組+DVDの「CSNY 1974」が発売されて、往年のCSN&Yファンとしては当然買ったのだが、正直あまりピンと来なかったのよ。4人揃ってのコーラスは昔だったら心地良かったのに、今聴くとマンネリ感が漂ってしまうのは自分の嗜好の変化だろう。全盛時の貴重な記録ではあるが、これをせめて20年前に出してくれていたらきっと違う受け止め方ができただろうに。残念ながら「4 Way Street」のときのような充実感を得ることはできなかった。
「CSNY 1974」には「Johnny's Garden」がCDにもDVDにも収録されていたのだが、グラハム・ナッシュの高音のハーモニーにどうにも違和感を感じてしまい、久しぶりにマナサスを聴き直す。マナサスはスティーヴン・スティルスがクリス・ヒルマンらと結成した7人組のバンド。他のメンバーは、アル・パーキンス(steel g)、ダラス・テイラー(ds)、ポール・ハリス(key)、ファジィ・サミュエルス(b)、ジョー・ララ(per)と今から考えると錚々たる布陣。1972年発表のデビューアルバムはアナログでは2枚組で、それぞれのサイドにサブタイトルが付けられていた。

< The Raven >
1. Song Of Love
2. Rock And Roll Crazies/Cuban Bluegrass
3. Jet Set (Sigh)
4. Anyway
5. Both Of Us (Bound To Lose)
< The Wilderness >
6. Fallen Eagle
7. Jesus Gave Love Away For Free
8. Colorado
9. So Begins The Task
10. Hide It So Deep
11. Don't Look At My Shadow
< Consider >
12. It Doesn't Matter
13. Johnny's Garden
14. Bound To Fall
15. How Far
16. Move Around
17. The Love Gangster
< Rock & Roll Is Here To Stay >
18. What To Do
19. Right Now
20. The Treasure (Take One)
21. Blues Man

まず< The Raven >だが、「Song Of Love」は軽快なリズムと親しみやすいメロディで、アルバムの冒頭を飾るに相応しい名刺代わりの1曲といったところ。「Jet Set」は後年のライブでジョー・ウォルシュの「Rockey Mountain Way」とメドレーで演奏されていたが、確かにこの2つの曲は曲調が瓜二つ。「Both Of Us」ではクリス・ヒルマンとスティルスのボーカルの掛け合いが聴かれる。アルバム全編を通してヒルマンのボーカルの曲がもっとあれば良かったのだが。
< The Wilderness >では「ロデオの恋人」時代のバーズやフライング・ブリトー・ブラザースを思わせるカントリー調の曲が並ぶ。「Jesus Gave Love Away For Free」「Hide It So Deep」あたりはスティルス流の「ヒッコリー・ウインド」といった趣き。「Colorado」はワーナーパイオニアが1973年に発売したオムニバス「Hot Menu'73」にも収められていた佳作。
アナログでは2枚目に移って次のサイドは< Consider >。「It Doesn't Matter」は「どうってことないよ」という邦題でシングルカットされた曲だが、このアルバム中で特筆した曲とは思えず、どうってことない。「Move Around」の空間を漂うようなサウンドが好き。こういうムーグシンセサイザーの音って最近はトンと聴かないが、懐かしく気持ち良いなあ。
「The Treasure」は< Rock & Roll Is Here To Stay >のハイライト曲だが、テンポが変わった後半のリズムに関して言えば「キャリーオン」でもそう感じたけど、スティルスには絶対に阿波踊りの血が流れているよな。そして土臭いブルースナンバーである「Blues Man」で幕を閉じる。

このアルバムの後、もう1枚出してマナサスは解散。そして前述のCSN&Yの再編ツアーがあり、スティルスはコロンビアに移籍して新しいバックバンド(最初はニューマナサスと称していたらしい)を従えてソロ活動に入る。ヒルマンはJ・D・サウザー、リッチー・フューレイとSHFバンドを結成し、アル・パーキンスとポール・ハリスもそこに合流。ウエストコーストロック人脈の中での目まぐるしい離合集散の歴史の中で短命に終わったマナサスだが、このアルバムはスティルスが持っている音楽性を全てぶち込んだ、彼のソロワークス中の最高傑作。(正確に言えばソロではないけど)

(かみ)

コメント一覧

sadakami
「It Doesn't Matter」はファイアーフォール版のほうが良いですね。このアルバムで私がいちばん印象に残る曲は「Move Around」でした(シングル向きではありませんが)。
千代松
自分もこの最高傑作アルバムからシングルカットされたのが「どうってことないよ」だった時はえ?そこ?と少し驚きましたwシングルカットするならBOTH OF US.だろ!と思っていたので。でも今から考えればマナサスは実質スティルスのソロアルバムですからクリス・ヒルマンとリードボーカルを分担してる時点でシングルカットはあり得なかったんですね。
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