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還暦おやじの洋楽日記

Hard Labor / Three Dog Night

70年代前半に人気絶頂だったスリードッグナイトも、メンバーの麻薬トラブルやグループ内の不協和音で歯車が狂い始めてしまった。1974年発表のこのアルバムは、そんな状況に歯止めをかけるべく起死回生を狙ってリリースされたに違いない。
プロデューサーは長年のパートナーだったリチャード・ポドラーからジミー・イエナーに交代、魔法使いみたいなコスチュームのスキップ・コンテが新たにキーボーディストとして加入、そして全体の構成も一貫したコンセプトで統一されており彼等にとって初めてのコンセプトアルバムの体裁が取られた。そのコンセプトとは「Hard Labor」。

1. (Prelude)
2. Sure As I'm Sittin' Here
3. Anytime Babe
4. Put Out the Light
5. Sitting in Limbo
6. I'd Be So Happy
7. Play Something Sweet (Brickyard Blues)
8. On the Way Back Home
9. The Show Must Go On

アルバムジャケットは分娩室での出産風景。妊婦の大股開きが日本では問題視されたため、国内盤は局部が大きなバンドエイドで隠されてしまった(もっとも2013年に紙ジャケでリリースされた際には国内盤仕様のカバーを外すとオリジナルデザインのジャケットが出てくる仕掛けになっていた)。股から取り出されているのはこのレコード。つまり「このアルバムは産みの苦しみを経てお届けしてます」というメッセージ。先行してシングルリリースされた「The Show Must Go On」は彼等の最後のヒット曲となり、レオ・セイヤーが世に出るきっかけとなった。この曲の前奏や間奏で使われるサーカスのメロディ(正しくは「剣闘士の入場」)はアルバムの冒頭や途中にも配されて一種の狂言回しの役割を担っているが、なにしろそんなコンセプトなのでアルバム全体の印象は決して明るくない。
「Sure As I'm Sittin' Here」(邦題は「人生なんてそんなものさ」)で歌われるのはちょっとした諦念だし、「I'd Be So Happy」は過去の恋の追想、「Sitting in Limbo」に至っては邦題が「刑務所に独り」で、屈託した心情が切々と綴られる。そんな中でもコリー・ウェルズはわりと頑張っており、「Sure As I'm Sittin' Here」「Play Something Sweet」でのソウルフルな歌唱が光る。また「On the Way Back Home」は、3人のボーカリストが代わる代わるリードを取り合うお得意のスタイルでホッとする。
だけど、そもそも楽しいショウを提供することでスターダムに登りつめたバンドが「辛いけれどショウは続けなければいけない」なんて歌って「アルバム作るのは重労働」なんて宣言してしまったら、聴いている側はいったいどんな反応をすれば良いのだろうか。前作までの余勢を駆ってそれなりに売れたけれど、大方のファンはこのアルバムで見限ってしまったんじゃないかな。次作以降はセールスでも低迷してしまう。従って、これはスリードッグナイトの息の根を止めた、残念なアルバムと捉えても間違いではなかろう。

(かみ)
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