恥ずかしながら知らなかったのだが、この本は20年ほど前に出版されて評判だった「AOR ライトメロウ」という本をリニューアルしたものだそうだ。リニューアル第1弾は2年前に出て、これが第2弾とのこと。1976年から1983年にかけての洋楽アルバムを800枚精選したディスクガイドとなっている。監修と著述をしている金澤寿和氏は、愛読している「レコードコレクターズ」誌(最近はあんまり面白くないから立ち読みが多いけど)でもよく寄稿しており、お名前は存じ上げている。
でも、そもそも「AORライトメロウ」って何のことだかよくわからない。それについては自明の理らしく本書では触れられていないのでネットで調べてみたところ、どうやら既存のイメージのAORよりももう少し幅広く網を拡げた音楽群のことを指す、金澤氏の造語らしい。で、選ばれているアルバムを見ると、いわゆるAOR人脈(デヴィッド・フォスターだのTOTOメンバーだの)が参加していることが条件なのかな、と一瞬思ったが必ずしもそうではない。「スリラー」や「噂」や「ホテル・カルフォルニア」のような誰でも知ってる超ベストセラーも入っているし、そうかと思えばイエスのアラン・ホワイトのソロなんかが入っていたりする。要は、金澤氏が「これは『AORライトメロウ』だ!」と思ったものがそうなのかな。もっと遡ると「AOR」自体が定義曖昧なジャンルだものね。日本でしか使われていない用語のようだし。
僕は正直「AOR」って言葉は好きじゃない。だってあの時代ってファッションの小道具的にAORが使われて軽佻浮薄なイメージを纏ってしまい、もはや手垢のついた感があるんだもの。金澤氏もそういうイメージを嫌って「AORライトメロウ」と呼んでいるのかも知れないが、それでも「AOR」という言葉はやっぱり外せなかったのかな。
AOR系の音楽そのものに関して言えば、もともとメロディアスでポップなサウンドが好きだったので、それが洗練されるのは好ましいことではあった。だからエアプレイなんかも聴いてたけど、いつしか「AOR的」な様式ができてしまって、そのへんから鼻について何だか嫌になってしまったのだった。新しい潮流ってのは完成に至るまでがワクワクして面白いけれど、いったん完成してしまったら型にはまって後は頽廃していくだけだからな。
話を本書に戻すと、自分が聴いてきたアルバムの多くがAORの範疇に入れられてしまったことに多少忸怩たる気持ちもあるものの、まだまだ知らないアルバムもたくさん載っているので、今後の開拓のためのディスクガイドとして活用したいと思います。
(かみ)
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