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還暦おやじの洋楽日記

Dr. Heckle and Mr. Jive / England Dan & John Ford Coley

イングランド・ダンとジョン・フォード、懐かしいなあ。1972年の「シーモンの涙」はあの頃ラジオでさかんに流れていて、その明るく爽やかなポップソングに魅了されたものだった。彼等はその年の暮れに行なわれたスリードッグナイト来日公演で前座を務め、僕なんかはコンサートでの思わぬ余禄にちょっと得した気分だった。だがヒットは日本だけの現象で、彼等が全世界で認知されるのはその数年後に全米ヒットとなった「秋風の恋」を待たなければならなかった。(余談だが、彼等は初めは「イングランド・ダンとジョン・フォード」と紹介されていたが、この頃には「イングランド・ダンとジョン・フォード・コーリー」と称されるようになっていた)

少し前にワーナーから「AOR名盤セレクション」という再発廉価盤シリーズが出ていて、その中に彼等の名前を見つけて懐かしさに駆られて買ったのが1979年発表のこの一枚。

1. Hollywood Heckle and Jive
2. What Can I Do With This Broken Heart
3. Another Golden Oldie Night For Wendy
4. Broken Hearted Me
5. Children of the Half-Light
6. Rolling Fever
7. Love Is the Answer
8. Only A Matter of Time
9. Caught Up In The Middle
10.Running After You
11.What's Forever For

初めて彼等がロスでレコーディングしたアルバムとのことだが、バックミュージシャンの顔ぶれが凄いよ。スティーブ・ルカサー、ジェフ・ポーカロ、スティーブ・ポーカロのTOTO勢に、リトルフィートのビル・ペイン、そしてリー・リトナー、リー・スクラー、スティーブ・フォアマン等々、西海岸の有名どころが揃っている。
ルカサーのギターリフで始まる「Hollywood Heckle and Jive」からして実に軽快なパワーポップ。「What Can I Do With This Broken Heart」はペインのシンセの味付けが印象的。彼等の自作または彼等と外部コンポーザーとの共作も多いが、カバー曲もそれなりにあり、トッド・ラングレン作の「Love Is the Answer」は全米トップ10入りした曲でサックスの音色がメランコリック。ラストの「What's Forever For」が割とシンプルなアレンジのバラードで少しほっとする。
全編通してダンサブルにしてエモーショナル且つゴージャス。ソツのないサウンドはまさにコテコテのアダルトコンテンポラリー。昔、エアプレイのアルバムを初めて聴いたときの感覚を思い出した。音のキレの良さ、洒脱なアレンジ、そしてメロディラインの美しさ・・・こういうAOR系のサウンドは決して嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、もうこれまでさんざん聴いてきたので食傷気味なのである。それに無個性化されてしまい、どのアーティストも同じように聴こえてしまうのだ。彼等もまた初期の素朴なサウンドから大きくコマーシャルに変化したけれど、その代わりに彼等ならではの個性も薄れてしまったと思えてしまう。

出来の良いアルバムであるにも関わらず、残念ながらセールスは芳しくなく、これが彼等のラストアルバムとなってしまったそうだ。ちょっとネガティブなことを書いてしまったが、AORとしては非常に秀逸な作品。「TOTOやエアプレイが大好き!」という人には自信を持ってお勧めしよう。

(かみ)
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