「愛 アムール」

ジョルジュとアンヌという老夫婦。

音楽家同士という二人の暮らしは
“老後はかくありたい”と皆が思うような暮らしだ。
お互いに知的興味が一緒で
仲良く様々なことを楽しんでいる。

それが一転、
誰もがこうなりたくはない、という状況に陥ってしまう。

人生はあっけない。
たった一つの要因で
人生はすっかり変わってしまうのだと見せつけられる。

ジョルジュとアンヌに起きたことは、誰にでも起きること。

二人のような仲の良い老後を迎えることは
わりと奇蹟に近いかもしれないけど
アンヌが病に倒れ、老老介護になってしまうことは、珍しくもなんともなく、
私たちの未来においてかなりの確率で起こりえるのだ。

こんな老後が遠くなくなったシウたち世代
加えて、こんな老後の親も持つ身でもある。
登場人物のすべてに共感してしまう。



ここからネタバレです。







ジョルジュの行為は殺人ではなく自殺だと思う。
アンヌの希望は最初から“死”であり、
介護の日々はジョルジュの気持ちを納得させるためのもの。
水を吐きだすアンヌをジョルジュが思わずひっぱだいでしまうシーンで
シウは大泣きしてしまったんだけど
あれはアンヌがジョルジュをひっぱだいたのと同じだ。

愛情が深く、一心同体の夫婦。
羨ましいけど
人生を頑張ってきて、最後にこんな状態になることが避けられないとすれば
やっぱり虚しい気持ちになってしまう。