果たして、
かつてこんなにも交通違反の罰金を
払いたい欲求にかられた男が
この島にいただろうか。
結局彼は都合5回そこを訪れた。
最も落胆したのは支払期限の前々日、
『あら、まだね。
また明日』
そんなにあっさり
もっとなんとかしてくれよ。
前々日だぞ。
彼の能力では、
その魂の叫びを英語という形で
口から吐き出すことは出来ないのだ。
そして期限前日。
朝一番で訪れその窓口で、
さすがにこれはまずいと察したのか
とうとう彼女は電話をかけてくれた。
『・・・』
相手は出ない。
『午後来てね』
そんなに暇じゃねーと言おうとしたが
彼は暇だった
ここまでのガソリン代どうすんじゃ
とも言おうとしたが、
そこはタンク屋さんの通り道だった
そして期限前最後のチャンス、
午後の訪問。
窓口の彼女は、
彼の顔を見た刹那、
『はっ(忘れてた!)』
って顔をした。
既に達観の粋に片足突っ込んでる彼は、
余裕の笑みと共に無言で
違反チケットと免許証を差し出した。
14時までの窓口で14時5分に
やっと払えたよ