寓話の部屋

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第135話 釣り捨てガンギマリ

2022-06-15 23:31:19 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十五話 

ツイステ合州国が裏切った!
そんな絶望的な知らせを受けても、大学生を中心とする若者達に絶望は無かった。
2年の兵役を終えて復学したばかりだったが、その兵役の様相も近年では一新され、かつてのイジメは鳴りを潜め、近代化した最新鋭のコーライ軍の尖兵たるべき合理的な猛訓練に新兵イジメをしている暇もなくなったのである。
兵役を満期終了し大学の残りの課程を終えたら士官学校に志願し再入隊するという者も少なくなかった。
最新兵器や新しい戦術を駆使する新生コーライ軍はそれだけ若者を惹きつける魅力があったのだ。
若者だけではなく、兵役経験者の中年以上の層にも、昨今のコーライの景気の良さや統一国家の成立などで明るい未来に水を差すツイステやダイシン帝國、ついでに関係ないがモトヒノに対する反抗心(これは通常運転)が有頂天の勢いであった。

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「兵役経験済みの大学生は、准尉待遇とし、郷土防衛軍を編成する。是非、志願を!」

大学のキャンパスに現れたコーライ軍の徴募官がそう述べると、みな何かに取り付かれたように我も我もと志願し、一週間後にはキャンパスはほぼ空になってしまった。

おいらこと、ガン・ギマリも厳しいがチャレンジングで楽しくもあった兵役を終えた後、復学し、残りの二年で学士号を取得したら、士官学校に進むつもりであった。
士官学校を出ても通常は、少尉任官からのスタートであるのに、郷土防衛軍に志願すれば准尉待遇になるという。
情勢を鑑みれば、戦果を上げれば、一つや二つの昇進も狙えるだろう。それから士官学校に進めば、佐官はおろか将官まで狙えるかもしれない。そんな皮算用する余裕すらあった。

ガン・ギマリには軍服が支給された。准尉の標章が誇らしかった。
小隊の指揮官に任命され、早速、部下となる面々との査閲を行った。
郷土防衛隊は、士気や仲間意識を高めるために同郷の者で編成する傾向があった。
並んだ24名の顔を見てみると、顔なじみのチキン屋の親父さん、八百屋や文房具店の店主などの年配者から、まだ徴兵年齢にも達していなさそうな小僧まで実に様々である。
兵役経験者あるいは予備役の下士官であろうオジサン達はまだわかるが、まだガキとしか言えない年少者の存在には少し不安を覚えた。まあ、荷物持ちくらいはさせられるかと割り切ることにした。
この民間人ばかりの雑多な構成の部隊に数少ない正規軍人が配された。歩兵小隊の中に砲兵部隊の前線観測員(FO)が二名。
この二名の指揮系統は変則的で、上位の原隊からの命令が優先されることがあるという話だったが、その本当の意味はよくわからなかった。

この編成の小隊員には突撃銃と呼ばれる最新鋭の自動小銃が配布された。
従来の機関銃並みの発射速度を誇り、歩兵一人一人の戦闘能力を向上させる。
また4本の対戦車ロケット砲が支給された。これは再使用可能な発射装置と、24発の弾頭が配布された。
なんでもマリリン効果とかいう新理論を利用した特殊弾頭だそうで、上手く当たれば戦車も一発で撃破可能だという。
ただ無誘導兵器な為に当てるためには、かなり戦車に肉薄する必要がある。
小銃手はこのロケット砲兵を近づかせる為にいると言っても良かった。

なお、ガン・ギマリ准尉は知らないことだったが、最近のコーライ正規軍の編成では、これに分隊支援火器と迫撃砲手、選抜射手などを加えて構成されていたのだったが、やや高価な分隊支援火器と、訓練が必要な迫撃砲・スナイパーは郷土防衛部隊には省かれた。
それでも最新鋭の武器を任された自分たちは神聖なコーライの郷土を防衛する神兵なのだと信じ切っていた。

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南コーライのとある町に続く街道。
現地の地形を知悉したガン・ギマリ准尉率いる郷土防衛隊の小隊は、ウルソに向けて進軍するツイステ・モトヒノ連合軍の車列に待ち伏せ攻撃を仕掛けた。
砲弾を利用した街道の仕掛け爆弾を起爆し、敵軍に混乱を生じさせた。
とはいえ、仕掛け爆弾で損傷させられたのはせいぜいが二、三台の車両である。
地形を利用し、小銃で弾幕を張りながら、ロケット砲手が接敵する。
あと少し、あと少しで必殺の必中距離まで達する…、そんな思いで強大な装甲車両の部隊にジリジリと攻め入る小隊員。
我慢できずにロケット弾を発射して外し、発車位置が露呈し、再装填の間に戦車の砲撃や機銃で掃討される者もいた。
一人一人、次々に倒れていく小隊員。
生存隊員が半数を切ったところで、規定の射程距離に達し、二人のロケット砲手が戦車に向けて必殺のロケット弾を発射する。
しかし、必殺ではあるが、必中の武器では無い無誘導ロケット弾の一発は外れ、一発は戦車の前面装甲に当たり、なんとか撃破に成功した。
ロケットを発射した時点で集中攻撃を食らい、再使用可能だという携帯ロケット砲の仕様も意味を成さなかった。自殺兵器としか言えない。
あっという間に、郷土防衛隊ガン・ギマリ小隊の生存者は二、三名になった。
果たして、24名の兵士の命で数台の装甲車両の撃破が、軍事的に見合うものであっただろうか。
もちろん、戦車の価格を考えれば、充分な戦果であるという考えもあるが…。

そんな必死の戦闘をやや後方で冷静に見届ける者がいた。
指揮系統を別にする砲兵部隊の前線観測員の二名であった。
彼らは、戦闘には参加せず、郷土防衛隊ガン・ギマリ小隊の攻撃により、敵部隊が20分ほど進軍を停止したのを確認しつつ、敵部隊の位置を本体の砲撃大隊に打魔伝した。
観測射を見届け、修正を送り、効力射を要請する。
無謀とも言える非正規部隊での襲撃の本当の目的は、砲兵のキルゾーンに敵軍をほんの十数分だけでも足止めすることであった。
強力な150mm砲で破壊されるツイステ・モトヒノ連合軍の車両と兵員。
言うなれば、モトヒノの戦国時代にシマツ家が得意とした、釣り野伏と捨て奸を合わせて現代兵器に置き換えたような非人道的な戦術である。

ガン・ギマリ准尉達の周りにも次々に着弾する150mm砲弾。
「なんだ…これは…!!」
「おい!まだ俺らがいるんだぞ!」

ツイステ・モトヒノ連合軍の車列と彼らは運命をともにした。

効力射の着弾を見届けると、遠方から監視していた観測員は撤退した。
彼らはすぐに次の新たな郷土防衛隊の部隊に配属される。
意気軒昂な彼らの運命を知っている前線観測員の心はどんどん死んでいった。

こうした戦術は、ツイステ・モトヒノ連合軍の航空機が航空優勢を確保するまでは猛威を振るったのだった。


第134話 立ち上がれガンギマリ

2022-06-14 10:04:29 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十四話 

ほぼ全兵力を無益なモトヒノ侵略作戦に投下し、損害は軽微だったものの、すぐさまとって返してダイシン帝國との北方戦線に転進させられたコーライ軍の疲弊はかなりのものだ。
そのコーライ軍部隊の配備状況・移動の状態を、仮にも友軍wたるツイステ側はしっかり把握していた。
疲弊はともかく、暫定首都のウルソや北コーライの旧首都プーヤンを超えて、大部分の部隊の北方シフトに移行が完成しかけていたところでの南の港湾都市プーサンで起きたツイステ・モトヒノ連合軍との偶発的戦闘。
理想は、ガラ空きの首都を、ツイステ・モトヒノ連合軍が北方戦線への援軍の体で、近くを通った際に急襲し、ムーン政権をサージカルストライクでスマートに除去し、あわよくばダイシン帝國の南進の大義名分を失わせる、あるいは対決が避けられないにせよ不安定要素である無能な味方という最大の懸念を排除するというツイステの決断が悪いものではなかったはずだ。
当のコーライの政府首脳・軍部も、スッカラカンの南部の状況を把握しており、北から再度南方へのコーライ軍主力に転進を命じてはみたものの、無人の野を征くが如きの精強なツイステ・モトヒノ連合軍がウルソを包囲するのを防ぐのは時間的に無理だろうと実に悲観的であった。
コーライの貴族出身高官には、国外逃亡を企てる者まで続出した。

軍事的に華麗な電撃占領作戦という当初の目論見は破綻したものの、圧倒的な戦力で戦力の空白地帯を進撃し、ウルソを包囲し、落とすプランBだって、それほど筋の悪いものではないとツイステ・モトヒノ連合軍の指揮官達も安易に考えてはいたのである。

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一路、ウルソに向けて進発したツイステ・モトヒノ連合軍の車列。
軍事的に戦闘状態であるのに幹線道路に車列を形成するなど油断の極みでしかないが、今の南部のコーライ軍に対抗できる機甲部隊や砲兵が払底しているのは承知の上での確信犯的舐めプである。

「車長、せっかく戦車を持ってきてもウルソまで戦車戦があるとは思えませんぜ。」
「まあ、そういうな。本番はウルソを占拠した後の対ダイシン帝國との対決だ。それまでは演習だと思って気を引き締めろ!演習は実戦の如く・実戦は演習の如くだぞ!」
「イエス!サーw」

そんな少し弛緩した雰囲気の車列に、道路の脇のビルの窓や屋上から、裏道から、当時の最新兵器である対戦車ロケット兵器の雨あられが突然襲ってきた。
トップアタックや側面、後方を狙われたツイステの誇る最新鋭戦車M1は次々に戦闘不能、擱坐した。さすがに砲塔が吹っ飛ぶほどの痴態は無かったがw。
そこに自動小銃や、携帯ロケット兵器、高性能爆薬ベストを装備した自殺兵が襲いかかり、戦闘歩兵車、装甲歩兵輸送車なども甚大な被害を被った。

「なんなんだやつらはッ!!コーライ軍はほとんど北に行ってお留守な筈じゃ無かったのか?!」
「ゲリラにしては装備が良すぎる!攻撃も組織だっている…。実はカンパネラが把握していなかった伏兵がいたんだ!クソッ!奴らの無能のケツを拭くのはいつも俺らだぜ!」

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そんな敵から高評価のコーライの強者達。
その正体とは、何のことは無い、その辺のプロだけではないアマチュア一般市民までが立ち上がった義勇兵である。
普通の国で、一般市民が突然銃を手に取って軍事行動を始めたところで所詮は烏合の衆になるのが関の山であるはずだ。
しかし、コーライはまったく普通の国ではなかったw。
数十年にわたる分断国家は、南コーライでは二年、北コーライでは十一年の兵役を全国民男性に課し、労働年齢の男子のほぼ全てが近代的な軍事的素養を身につけていた。
その辺の国民に竹槍で訓練していたようなマヌケな国とは違う。

もちろん、そんな兵士の素養だけで、強力な義勇兵が出来るはずは無い。
それを支えたのは、豊富な装備・兵器であった。
当のコーライ軍の首脳はもちろん、ツイステ・モトヒノ連合軍の諜報部も正規軍の戦力は念入りに把握しており、侵攻に当たって正規軍がいないのを確度の高い情報として掴んでいた。
ただ、彼らが数えていなかったものがあったのだ。
国外輸出向けの兵器が、工場に、プーサンからの出荷を待つ倉庫に、それこそ「売るほど」大量にあったのだ。
それは、近年、ムーンのもたらした新構想の技術が結実したコーライ製兵器が、国外にバンバン売れていたことにより、正規軍があと二つは揃えられそうな在庫が船便での出荷待ちの状態であった。

攻守双方の正規軍人達は、もとより員数外、国内での使用を想定していないそれらを数の内に入れていなかった。
愛国心に駆られた兵器製造者・輸出業者は、それらを義勇兵に無料放出したのだった。

そして最後の最大のファクターであるが、それはムーンの持つ異能「夜郎自大」によるコーライ国民の異常な志気の高まりであった。
この異能は、自国への愛国心を異常なまでに過熱させるという特性を持っている。
数千万人の命知らずの挺身兵という敵軍にとっての悪夢。
高性能爆薬を持って、M1戦車の底面に走って滑り込み、自分で起爆するというマジキチの戦術や、助けを呼ぶ母親を保護しようとしたら赤ん坊は爆発する赤ちゃん人形だったなどという狂気には、ツイステ兵の精神は大いにヤられた。

エアカバーについてもいつものツイステの一方的な弱い者イジメのパターンが通用はしなかった。
プーサンに橋頭堡こそ確保し、陸揚げは出来たが、空軍基地の確保にまで至らなかった。
一方、コーライ側は、さすがに航空戦力の呼び戻しは、比較的短時間で行えたし、東海(モトヒノ海)に浮かぶ、今世界唯一の原子力空母の艦載機もあったために、コーライ本土上空での制空権とも言われる絶対的な航空優勢をツイステ・モトヒノ連合軍が確保することはかなわなかった。
もちろんツイステ・モトヒノ連合軍はプーサンの郊外に急遽、仮設飛行場を設営はしたが運用上の制限が大きく、また航空機の質でもコーライ製のFK-21は、今世界航空機発祥の本家だけのことはあり、ツイステ・モトヒノ連合軍の装備の主力戦闘機F-1/2/3より質の上では優っていたのである。
余談であるが、せっかくのコーライの誇る唯一の原子力空母であったが、戦場が本土である以上、艦載機はむしろ陸上基地で運用・活用した方が制限が少なく(STOLで発艦する戦闘機は燃料や兵器搭載量に大きな制限がある)、広大な大海原の戦場で機動戦を行うには、モトヒノ海は狭すぎるのであるw。
莫大な軍事費を費やして建造したにしては、国防には大して用兵・戦略的に役に立たない無用の長物なのであった。
まあ、本当はこれはあくまでデモ機で海洋覇権国家・侵略戦争大好きなツイステ当たりに高額で売り払う腹づもりだったのではあるが。

加えて、コーライの軍首脳は、コーライの南部に、出荷前の員数外の新品の戦車や自走砲、砲弾があることにようやく気付き、妙案を思いついた。
北に派遣した戦車や自走砲を再度南に派遣するには輸送上の困難が極めて大きいと見切り、そうした正規軍の戦車兵・砲兵を下車させ、暴走トラックや特急魔導列車で、身ひとつで移動させることにした。
南の工場や倉庫で、まだシートにビニールを被っているような新車を受領し、戦力化させたのである。
さすがに義勇兵だけで正規軍を相手にするのは無理があったが、正規に訓練を受けた専門技能を持った乗員だけを高速輸送するという鬼手で、これで、なんとか戦車戦・砲戦を行えるだけの体制を間に合わせることが出来た。

 


第133話 ミンジョク自決

2022-06-09 09:32:34 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十三話 

「プーヤンで、ツイステ・モトヒノ軍との戦闘が始まりましたッ!」

「ハァアアア?!」

愕然とするムーンを始めとするコーライ政府首脳。

「誰が勝手に戦闘を始めたニダ?!停戦を命じるニダ!!ツイステ・モトヒノ大使を呼ぶニダ!!」

とパニックを起こし、叫ぶムーン大統領。

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押っ取り刀で大統領官邸・赤瓦台まで駆けつけた在ウルソ・ツイステ大使であった。
モトヒノの大使は、大使館が群衆に囲まれ来られないとの無情な通達をよこしたw。

開口一番、ツイステ大使が言う。
「貴国が我がツイステ軍に組織的襲撃を加えたとの報告を聞いております。いかなるつもりなのか。」

「そんなの知らないニダ。何かの陰謀ニダ。友軍の振りをしてだまし討ちなどウリナラがするわけがないニダ!!」
と必死に訴えるムーン。

「フッ…。なんてね…、わかっていますよ…。我が軍の諜報の水準はお粗末なモノです。友軍のフリをしてウルソまで軍を展開し、一気に斬首作戦を行うという秘策も神算鬼謀を誇る貴君にはバレバレだったのですね。ここまで来たらいいわけはしません。」
と、言い放つと、元海軍大将だった経歴の大使は、懐から拳銃を取り出すと、自分の口にくわえて発砲した。
どこまで自国政府の人間から信用が無いんだカンパネラ(ツイステ中央情報局)w。

目の前であっという間に自裁した大使を見てムーンのパニックは更に増すことになった。
平時でさえ、友好国であるはずの大使が民衆に切りつけられるコーライである。
戦争状態になったら敵国の大使が民衆にリンチされ、死体を槍の上に突き刺されてデモされるくらいの事態を予想して悲観した元軍人のツイステ大使の悲壮な思い切りの良過ぎる身の処し方であった。
どうせなら手榴弾のピンでも抜いてムーンも巻き込めばもっと良かったのであろうにw。

大脳部が吹っ飛んだ大使の遺骸を前に、恐怖と困惑の極みに陥ったコーライの首脳部。

「どどど、どうするんですか?」
「どッ、どうするニダ?!」
「とにかく、ツイステ・モトヒノが我が国を支援するために軍を派遣したんではなくて、占領するために来たのは明白なのねん!」

その場で、一番肝が据わっていたのは、キムボール・ジョンソン将軍であった。
何十年も対ツイステ・ダイシン帝國戦略を指導していただけはある。
というか自分の手で部下を目の前で処する血生臭い場数が一線を画しているw。

「といっても、南のモトヒノに派遣したと思ったら、こんどは北のダイシン帝國国境に軍のほとんどを転進させて、南方の戦力はガラガラですよ!」
「すぐに呼び戻すニダ!」
「とはいえ、度重なる内線戦略は破綻寸前で、急には展開できないのねん!」

このボンクラ政権の軍事的良心は、まだ軍事的素養のあったキムボール・ジョンソンだけだという悲劇w。

「モトヒノ大使を呼び出すニダ!」
「魔伝話してみましたが、大使を呼びつけて殺害するようなところには怖くて行けないと拒否られましたァ!」
「なんで、もうバレてるニダ!ていうか、ウリがやったんじゃないニダ!濡れ衣ニダ!」

ちなみに覚悟ガンギマリのツイステ大使が、友邦たるモトヒノの大使に生前・召喚直前に万が一の際には自決するからそれを政治利用しろと因果を含めていたのだった。
ツイステ大使のあまりの愛国心にモトヒノの大使は感涙したという。

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かくして組織的抵抗は難しい、強力なツイステ・モトヒノ連合軍はすぐさまウルソまで到達し、だまし討ちよりは多少抵抗は出来ても城下の誓いを行わさせられるまでさほど時間は掛かるまいと当のムーン大統領ですら覚悟していたのだったが…。


第132話 戦車女

2022-06-08 10:51:32 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十二話 

一方、その頃、大コーライ連邦の大統領官邸・赤瓦台では…。

主席大統領補佐官、マルペ・ヨンジューン君が、嬉々として報告する。

「ムーン様!ツイステ合州国の援軍が、次々とプーサン(コーライ半島南端の港湾都市)・チョチョン(東部の港湾都市)に到着し、陸揚げが始まっているそうです!対モトヒノシフトしていた我が軍もダイシン帝国との再戦が予想される戦線への転換配備も順調に進んでおり、これならなんとかダイシン帝国の再侵攻にも対抗できそうです!」

「まったく来るのが遅いニダw。しかし、これで勝ったな!ガハハ!」

「なのねん!しかし、ダイシン帝国とツイステの間の戦争の舞台にされるのを防ぐという当初の構想はどこに行ったのねん…。モトヒノ侵攻の意義が…。」

「あ、あのときは、それが良い考えと思ったニダ!」

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そんな三馬鹿のやりとりを他所に、プーサン・チョチョンには、次々とツイステ合衆国軍とモトヒノ軍が上陸していた。
そこには、ツイステのコーライでの軍事活動には憑きもの、いや付きものの反戦w活動家が、抗議のためのデモを行っていた。

「ツイステ帝国軍は聖なるコーライの地から出て行けー!」
「モトヒノは再び、コーライを植民地にしようと来たのだ!上陸を許すなー!」

一応、コーライをダイシン帝国の侵略から守ろうという建前で友軍に失礼千万な物言いであったが、言論の自由を言い訳にコーライの治安当局の取り締まりは実に適当であった。
そんな弛緩した隙を突いて、一人の女学生が戦車の車列の前に立ち塞がった。

車長が「ヤレヤレこんな調子じゃ俺らが前線に着くまでにダイシン帝国軍がウルソまで着いちまうぜ…」という内心で罵りながら、車列の停止を合図し、コーライ治安当局に排除するように命令しようとした。

「キーーー!ツイステ帝国はコーライから出て行きなさーい!ここを通りたかったら私を轢き殺してから…」

その時だった。
ターーーーンとMXスィッチ青軸キーボードで、煽りコメントを叩きつけるように入力したときの如き、銃声が響き、その女学生の額に穴を空けた。

「撃ちやがった…」
「ツイステ軍のやつら撃ちやがったぞ!やっぱりやつらは神聖なるコーライを侵略に来たんだッ!」

ちなみに撃ち殺された女学生は飛び出すように指示はされたが一応、進歩的思想の一般学生であり、せいぜい逮捕される程度で殺されることなど想定もしていなかったが、彼女を撃ち殺したスナイパーと群衆で騒いだ扇動者は、しっかりダイシン帝国の諜報員であった。

「ツイステ帝国軍の侵略を許すな!」
「立ち上がれ!」

と次々に北コーライ製の小銃で武装した市民wが現れた。彼らの十数人は仕込みであったが、小銃自体は100を超える数があり、血気盛んな意識いや戦意の高い市民wに現地で配布し始めたのである。
流石に最初から武装していたら、いかにコーライの治安関係者が緩んでいたとしても取り締まっていたことだろう。

「誰が撃ったんだ?!命令してないぞ!気持ちはわかるがッ!」
「サー、誰も撃っていません!」
ツイステ軍側もこんらんしている。

そこに自動小銃による銃撃が始まった。
戦闘準備状態では無かった装甲車両には車長が視界確保のために顔を出しており、またいわゆるソフトスキン・軽装甲の車両も少なくなく、自動小銃のライフル弾程度も決して侮れない脅威であった。
次々に倒れる車長や軽装甲車両の乗員兵士。

100丁以上の自動小銃から放たれる銃弾の嵐!
鉄火の投射量に、これが単なる暴動とは思えないツイステ合衆国軍の指揮官は自衛攻撃を命じた。
「自衛射撃開始!」

更にはウェポンフリーの許可を得るべく、上申したのだった。

コーライ支援ツイステ派遣軍、モトヒノ軍の下級士官レベルにまでは通達されていなかったが、元々、この連合軍はコーライの首都ウルソに近づいたところで、一気呵成にウルソを落とし、ムーンを殺害もしくは逮捕してコーライの主権を剥奪し、ダイシン帝國の侵略の大義名分を失わせつつ、対ダイシン帝國戦線の混乱の要因であるコーライ軍のロボトミーを行うという特秘作戦任務が課せられていたのだった。まあ、賢明な読者にはバレバレではあっただろうが。
そういう後ろ暗いところのあった師団長レベルは、100丁以上の自動小銃による攻撃を、大隊レベルの襲撃を組織的なものと誤認した。

「クソッ!やつらにバレてるではないか!カンパネラ(ツイステの謀略機関)の仕事はいつもこうだッ!」

発砲を始めたツイステ軍に多くの群衆は逃げ惑い始めた。将棋倒れになり圧死する人間も出る始末。
最初は、車両の重機銃による射撃、歩兵の自動小銃による反撃射撃であったが、どこからともなく最新兵器たる対戦車ロケットを持ち出した市民が現れ、暴徒の陰から、戦車の背後・履帯などを狙って攻撃を加えた。
このレベルになると、さすがにただの暴発などでは有り得ないだろうと、師団長・幕僚は腹を括り、全面戦闘状態にエスカレーションしていった。


第131話 フットーしそうだよぉ!

2022-06-01 12:26:27 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第百三十一話 沸点

コーライ半島南端のコーライ海運の要衝であるプーヤン港に次々と陸揚げされるツイステ合州国海兵隊を中心とした先遣部隊と、大洋戦争後初めてコーライ半島の地に足を付けたモトヒノ軍。
それらを憎々しげに眺める集団がいた。
良心的コーライ市民平和主義者達である。

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良心的コーライ市民平和主義者と呼ばれる市民団体は、コーライ戦争直後の南コーライ軍政下で発生した。
反戦活動や民主化を求める活動をしていた彼らであるが、9割方は、当時の北コーライの工作員の活動の影響を受け、南コーライと在コーライツイステ軍の国防活動を妨害するためにありとあらゆる手段を取っていた。
デモや集会は当然として、基地周囲に人の輪を作る。フェンスに南京錠をかける。ツイステ大統領の像を作って毀損する。ツイステ国旗を歯で食い破る。唐辛子や排泄物をまく…などよくもまあ思いつくなということをしまくり、南コーライの公安関係者を悩ませていた。
ムーンによる北コーライとの「電撃結婚」により、北コーライ工作員のハンドラーは仕事を失った。
ノーサイドの精神で、北コーライの南での工作活動は不問にされることが密かに決まっていたので、というかあまりにも南に浸透しすぎていて、彼らを全員パージすると南コーライの社会が機能不全に陥るからという現実的な理由もあったw。
しかし、本職の工作員は我が身が生き延びたことに安心して割り切って身を引くことが出来ても、なまじ本気で活動していた市民団体メンバーは残り、むしろ「北コーライとの戦争が無くなったので、ツイステ合衆国軍は聖なるコーライの地から出て行け」と気勢を上げることとなった。
そこに目を付けたのがダイシン帝國である。北コーライの工作員が組織していた市民団体を「居抜き」で引き継いだ。
今までは北コーライのショボい工作予算の活動費では市民のカンパなどで細々と活動するしかなかったのが、ダイシン帝國諜報機関の豊富な資金援助で一変した。
パートタイムの市民活動家は、もはやその活動だけで生計を営むことが可能になり、アマチュア市民活動家から、意識の高い「プロ」市民活動家に華麗に転身するものが続出した。
活動は一気に尖鋭化し、反ツイステ活動のみならず、反モトヒノ活動までその活動範囲を広げた。
例えば、近年の魔導集積回路の進歩により、対ダイシン帝國の最新式のSIGINT(魔動波情報収集活動)施設をコーライに新設するというダイシン帝國にはイヤな動きを掣肘しようと団体を動かし、施設を不便な郊外の潰れた球技場に追いやり、その施設に通じる街道を24時間365日、プロ市民が勝手に検問を設けて消耗する部品や人員のための補給品搬入を妨害するという活動を行った。
まともな国家であれば、当該政府の治安機関が取り締まるべき無法が、コーライではほとんど放置された。
ツイステ合州国軍は、その施設への補給のためだけに陸路を諦め、大型ヘリを運用せざるを得ず、コーライ政府に改善を要求していたが暖簾に腕押しの有様であった。

また、コーライ戦争後に、旧宗主国として、様々な支援活動を行ったモトヒノに対し、コーライの経済水準が向上すると、もはや用済みとばかりに大洋戦争以前の植民地時代のアレコレで無理筋の難癖を付けるようになった。
時効もいいとろの徴用した工員に法外な給与補償を求めたり、山を掘り起こして未開のコーライ国土を近代技術で測量した金属標を民族精気を吸い取る呪いの杭だと言いがかりをつけたり、毎週モトヒノ大使館前で、もはや何の抗議だかわからない迷惑集会を行ったりし始めた。
モトヒノ外務省は、いくらコーライ政府に取り締まりを要求しても対応してくれないことに業を煮やし、施設の老朽化を理由に大使館を取り壊し、ウルソの賃貸ビルに移転する始末である。
そしたら、今度はそのビルの玄関に魔導車トラックで突っ込むw。やりたい放題である。

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「見てみろ!あれは悪名高い合州国海兵隊第一海兵師団。コーライ戦争のクロム鉄鉱石作戦で同胞の北コーライ人民を虐殺した殺人部隊だぞ!」
「まだモトヒノ駐在の海兵隊が来るのは理解出来るが、ツイステ本国の部隊まで派遣されるとはただ事では無いな…。」

下手な軍オタより知識のあるプロ市民達である。

「それより、あれを見ろ!あの太陽を象ったにっくきモトヒノ軍旗!半世紀前の侵略を再現しに来たとしか思えない!」
「モトヒノ軍は演習ですら敷居をまたがせたことが無いのに…。なんてこった!」

じつのところそんなこともなく、モトヒノ軍人が一応名目上は同盟国みたいな感じの微妙な距離感のコーライ軍施設で小規模な演習を行っていたりはしていた。
その時も、モトヒノ側は罰ゲーム的に選抜され、派遣された高級士官主体の戦闘能力的には微妙なチームに対して、コーライ側は最精鋭の特殊部隊員を動員し、シミュレーション演習で無双して悦に入っていた。
海軍や空軍も多国籍演習で一緒になるのはしょっちゅうだし、戦争中毒のツイステが巻き起こす小規模な戦争には両国とも常連メンバーである。
最近では国聯平和維持活動でご一緒することもあり、モトヒノがトリガーハッピーのコーライPKO軍に弾薬の融通をしたこともあったが、現地では相身互いで好意でやったこの行為も、わざわざ本国のお注射済みのコーライ議員が国会で問題視し、哀れなコーライPKO軍の司令官は更迭された。

「モトヒノ軍が再び、神聖なるコーライの地を踏むなど絶対許されることではないぞ!」
「そうだそうだ!」

もちろんダイシン帝國工作員のお仕事である。
戦略級大規模魔法とエルフ災害による痛手で、せっかくの南進作戦の好機を失いつつあるダイシン帝國はかなり無理筋の工作を指示していたのだった。
まだツイステ軍の増援だけなら、火付けは不発に終わった可能性が高かったが、そこにモトヒノ軍という触媒が加わったのが妙味であった…。

「どうやら、隠匿していた北コーライ製の武器が火を噴くときが来たようだな!」
「コーライの平和は俺たちが守る!」

平和のためには武力行使も厭わない意識の高いコーライ市民達が立ち上がろうとしていた…。