姜尚中 続・悩む力

福島の原発事故をめぐる原子力工学や放射線研究の専門家、エキスパートたちの発言を見れば、ジェイムズの指摘は意味深長です。なぜなら、民間のシンクタンク、日本再建イニシアティブが立ちあげた検証委員会による「福島原発事故独立検証委員会　調査・検証報告書」を読めば、ジェイムズの言う生活に根ざした直感と遊離した電力会社や政府関係の機関、担当者の言動に、あらためて驚かざるをえないからです。
ウェーバーが「プロ脳」の末尾でシニカルに批判している「精神のない専門人」、これに極まれりという感じがしてなりません。
それだけではありません。電力源を過疎地域の原発に依存しながら、不夜城のような生活を疑わず、その「安全神話」の上に胡坐をかいていた首都圏の多くの人びとに「心情のない享楽人」というレッテルが貼られても、無下に反論はできないはずです。そして、私もまたその一人であったことは言うまでもありません。