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S&R shudo's life

ロック、旅、小説、なんでもありだ!
人生はバクチだぜ!!!!

真冬の狂想曲20-4

2006-12-03 19:15:04 | 真冬の狂想曲
 駅にはちょうど今9時54分の下り電車が着いたところだ。まだ松達の姿は見えない。ベンツの車内も沈黙が続いている。俺はときどき意味も無く平井を睨みつけた。その度見せる平井の怯えた顔が、この退屈な時間を少し楽にさせてくれる。
 5分後、ザキと松木社長の若い者に身体を拘束された、一見普通のサラリーマン風の男が松と松木社長と一緒に駅から出てきた。あれが中村だろう。5人はそのまま松木社長が乗ってきていたクラウンに乗り込んだ。突然コートのポケットから「MY WAY」が流れ出した。俺は携帯電話を取り出し、通話ボタンを押した。
「やっちゃん、悪いけどどっかで時間潰してきてくれん?後でまた電話するけ」
「いいけどよー、どんぐらい?」
「まだちょっと分からんけ、また後で電話するわ」
 俺は溜息一つついて終話ボタンを押した。またしばらく平井と二人っきりになると思うと気分が重い。仕方なく俺はベンツのエンジンをかけて新飯塚駅を後にした。
 しばらくベンツを転がしていると、ファミレスの「ロイヤルホスト」が目に入った。少し腹も減っていたので迷わずベンツを「ロイヤルホスト」の駐車場に突っ込んだ。俺は平井を先に歩かせ店内に入った。アルバイトの店員に窓際のテーブルに案内された。俺は店の入り口が見えるように座り、平井は入り口に背を向けて座った。メニューを開き、ハンバーグステーキとコーラを頼んだ。平井には同じものとコーヒーを頼んでやった。店員が飲み物のタイミングを聞いてきたので、すぐ持ってきてくれと頼んだ。煙草の吸い過ぎで喉がカラカラだった。

真冬の狂想曲20-3

2006-12-01 00:29:01 | 真冬の狂想曲
 ザキの買ってきたコーヒーを飲んで俺達はステーションホテル地下の駐車場に向かった。平井は俺とザキに挟まれて歩いている。駐車場に2台分のスペースを取って停まっている白のベンツS500が松の車だ。
「やっちゃん、転がしてくれん?左ハンドル大丈夫やったろ?」
 俺は松からベンツの鍵を受け取りキーレスエントリーのボタンでドアロックを解除して、鍵をコートのポケットに突っ込んだ。新型のベンツを運転出来る事は庶民には滅多にない。俺は喜んでベンツのエンジンを始動した。ザキは平井の腕を掴んだまま後ろの座席に座った。ベンツの持ち主は助手席だ。
 小倉駅北から都市高速に乗り、黒崎で降りバイパスを通り40分程で新飯塚駅に着いた。ベンツに付いているデジタル時計は9時20分と表示している。松木社長はもう駅に着いていた。若い者を一人連れていた。あまり大きくはないがいかにも悪そうな男だ。
「やっちゃん、ベンツ目立つけちょっと離れた所に停めちょって。ほんで平井見よって。ザキやったっけ?お前俺と一緒に来てくれ」
 俺は松とザキをベンツから降ろし、平井を助手席に移動させてベンツを駅から少し離れているが、駅の様子が見える場所へと移動させた。平井は黙っている。
 松とザキは松木社長達と合流し、駅の中へと消えていった。俺はベンツの窓を少し開けて煙草に火を点けそれを目で追った。平井もポケットから煙草を取り出したが俺はそれを許さなかった。神経が少しささくれだっているようだ。俺は深く煙草を吸ってゆっくりと煙を吐き出した。

真冬の狂想曲20-2

2006-11-22 23:59:02 | 真冬の狂想曲
 缶コーヒーを飲み干し、バスルームで顔を洗っていると、もう一つのカードキーでドアを開けて松が1211号室に入ってきた。
「おはよう!やっちゃん。よく眠れた」
 朝からこのテンションだ。高血圧の奴が羨ましい。
「まーボチボチの」
 朝は機嫌の悪い俺は低い声で愛想無く答えた。
 部屋の奥に進んだ松は、転がっている平井に気付き俺に振り返った。
「こりゃなしか!すぐほどいてやれ!いったい何のつもりなんか!」
 ほとほと甘い松は下着姿で転がっている平井に同情でもしてるようだ。自分を引っ掛けた相手にお優しいもんだ。
「お前何言いよんか。こうでもせんと俺達が安心して眠れんやんか。縛りもせんで寝ちょって逃げられたら俺にやかまし言おうが!だいたい甘いんよ松は」
 俺の言っている事が理解出来たのだろう、溜息を深くつきながらも納得したようだ。
「解ったけ、もうほどいてやってくれ」
 俺はザキに目で合図して、平井の手足のロックタイを切断させた。平井は怒気をおびた目で俺を睨みつけたが、平井には何も出来ない。睨みつける事ぐらいが精一杯だった。
「兄さん、松崎さん、俺コンビニ行って来ますけど何か要りますか?」
「おう、俺温かいコーヒーと煙草買ってきてくれ。松は?」
「俺もコーヒー買ってきて」
 俺はベッドの下に放り投げていたコートのポケットから千円札を2枚取り出し、平井にもコーヒーを買ってやってくれと頼み、ザキに金を渡した。

真冬の狂想曲20-1

2006-11-21 22:37:00 | 真冬の狂想曲
 携帯電話のアラームで叩き起こされる。ベッドサイドの時計は7時30分を指している。隣のベッドには昨日の昼前に律儀に現れたザキが眠っている。ベッドの下の床には平井が一昨日と同じ格好で転がっていた。それを見ても俺は何も感じない。麻痺してるのか、それとも元々こういう風な冷淡な一面を持ち合わせていたのかは解らない。俺はザキを起こし、平井を蹴飛ばした。そろそろ松も現れるはずだ。
昨日、松からの電話で今日の10時頃、中村が新飯塚駅に降りるはずだと佐々木から連絡があったと聞かされた。詳しい時間はまた佐々木から連絡が入るようになっているらしいが、俺達は9時頃までには新飯塚駅に着いていないといけない。早めに起きて頭をハッキリさせとかないと。俺は昨日の夜買っておいた缶コーヒーの栓を開けた。

真冬の狂想曲19-2

2006-11-14 20:37:17 | 真冬の狂想曲
 駅の構内にあるコンビニはもう閉まっていた。俺は一人毒づいて真冬の夜中の街に歩きだした。5分も歩いてないが、1時間以上歩いたような気分だった。コンビニに入ると店内の暖気に身体も脳ミソも弛緩した。急に1211号室に戻るのが嫌になった。しかし戻らないわけにはいかない。俺はハサミと缶ビール、缶チューハイと雑誌を買って、また真冬の寒気の中に足を踏み出した。
 1211号室に戻ると、俺に気付いた平井が恥ずかしさに身を縮めた。俺は平井の手足からロックタイを外し、足で平井の身体を仰向けにした。
「平井ー、バスルームからタオル持ってきて自分で掃除せい」
缶ビールの栓を開けながら平井に言った。平井はのそのそと起き上がり昼間俺が買って来た下着に手を伸ばした。
「おい!先に掃除やろうが!俺にお前の小便踏めっち言うんか!すぐ掃除せい!」
 俺は夜中だと言うのに大声を出していた。
「はいっ、すいません。すぐ掃除します」
 平井は慌ててバスルームからタオルを持ってきて、床に這いつくばった。俺は窓際の椅子に腰掛け缶ビールを飲みながら、それを見ていた。
「それが終わったら、バスルームで服洗って来い。下着の換えしか用意してないぞ」

 洗濯が終わり下着を換えて中年の崩れた身体のライン丸出しの平井を跪かせ、またロックタイで手足を縛った。もちろん口にはタオルをくわえさせている。そのままの状態で平井を壁際のベッドに寝かせ、俺は缶チューハイを一気に飲み干した。そして入り口近くのベッドに潜り込んで今日一日を終わりにした。