さんぜ通信

合掌の郷・倫勝寺のブログです。行事の案内やお寺の折々の風光をつづっていきます。 

2022皐月つれづれ 最後のお弁当

2022-05-19 17:29:09 | お坊さんのお話

住職になって26年。
多くのお檀家さんの葬儀を行ってきましたが、お通夜お葬儀は今も緊張します。
16の戒めをちゃんと守ってお釈迦様にお弟子として認めてもらえますように、と念じながらお通夜に授戒をし、
道を間違えることなくまっすぐいけますように、とさらに強く念じながら葬儀では引導を渡します。

しかし、よく知るお檀家さんのお葬儀の時には、読経の最中にあんなおじさんだった、こんなおばさんだったと思い出して眼が潤む事もあります。
葬儀の最中に生前のさまざまなことを想いだすのは、不謹慎かも知れません。
しっかり読経して迷いなき世界へ故人を送り出す。
これが葬儀における僧侶の勤めであることは確かですが、生前の様子を思い出し涙せずにいられない、凡夫のワタシです。

葬儀という場では、生前の家族の様子が鮮やかに浮かび上がることもあります。

数年前のことです。
脳いっ血で寝たきりだった男性が亡くなりました。
残念なことに、倒れてからは一言も声を発することなく、まぶたを開けることも無く逝ってしまわれました。
コロナになってからは、看病に行くことも面会をすることもままならぬ日々でしたので、
家族の方々はどれだけ歯がゆく、辛い思いをしたことでしょう。

お葬儀は感染対策を考慮して、お身内だけの家族葬となりました。
家族想いで後輩の面倒見もよい男性でしたので、コロナでなければきっとたくさんの方が弔問、焼香に訪れたことでしょう。
しかし、たくさんの方々のお気持ちで祭壇には鮮やかな花があふれ、故人の遺影を飾っています。
お酒が好きだったお父さんにと、子どもたちからのウイスキーもお供えしてあります。

  

ウイスキーグラスの隣には、奥様からのチョコレート。
バレンタインデーの日付と回復を願うメッセージが、奥様の書いた小さく丸い字で記してあります。
ふと見ると、別の場所にはジップロックに入った茄子とトマトもお供えしてあります。
袋に書き込まれた日付は、故人が倒れた年の夏のもの。
お通夜の読経の後、故人がベランダで野菜を作っていたことを奥様が教えてくださいました。
「茄子もトマトも自分で植えて生るのを楽しみにしてたから、
意識が戻ったら食べてもらおうと思って冷凍しておいたんだけど・・チョコと一緒に向こうで食べてもらうことにしました」
野菜が植えられたプランターを前に、天候や肥料のことなど楽しそうに会話しているご夫婦の姿が目に浮かび、涙がこぼれました。

翌日の葬儀。
祭壇には新たなお供え物が増えていました。
きれいな折詰パックに入った、色鮮やかな奥さんお手製のお弁当です。
故人が大好きだった鶏のから揚げ、海苔を入れた玉子焼き、エビフライ、ゴマを振った白米にお漬物。
その朝、生前元気に出勤していた時を思い出して作ったのだそうです。
このご夫婦はきっと、数え切れないほどたくさんの「いってきます」「いってらっしゃい」の挨拶を交わしたのでしょう。

出棺まえのお別れの式。
棺の中、たくさんの色鮮やかなお花に囲まれた故人に、参列者が思い思いに声をかけています。
お別れの最後、係に促され、奥様は子供たちと一緒にお弁当やトマトなどの野菜を棺に入れました。

その後、しばし棺のそばに立ち尽くしていた奥様でしたが、
迷いが吹っ切れたようにスッと手を伸ばすと、故人の頬をなでながら屈みこんでなにか小さく語りかけ始めました。
言葉は聞き取れませんでしたが、顔を近づけて話しかけるその様子はとても尊く、侵しがたい姿に見えました。

突然の病魔に人生を翻弄されながらも一日一日を大事に過ごし、そして故人への愛情をしっかり持ち続けた奥様やご遺族。
最後のお弁当に込められたご遺族の気持ちを想い、その後の穏やかな供養の日々を予感したあたたかなお葬儀でした。

・・・・・・

ウチのさんご姫。
この8月で満15歳ですので、もう姫ではありません。人間年齢にしたらエリザベス女王なみ?です。
女王と同じく、足腰もだいぶ弱ってきました。
しかし女王陛下同様、下の写真のように目力はまだまだ鋭く、世の中の不正を見逃すことはありません。
こっそり隠れてケーキなど食べていると、いつの間にか後ろでジッと見ていたりします(;^ω^)



このところのいちばんの悩みは、換毛が上手くいかず、すこし湿疹になっていることです。
悲しいことに、担当してくれていた出張ワンコシャンプー屋さんが急死されてしまったのです・・・ご冥福をお祈りします。
で、元々お風呂ギライの姫は夏前にしてまだ少しモコモコ。

食欲は旺盛ですので、まだまだ元気で長生きしてくれると思いますが・・

きょうはここまで。



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