さんぜ通信

合掌の郷・倫勝寺のブログです。行事の案内やお寺の折々の風光をつづっていきます。 

20250331 R7春彼岸会講演録 「歯磨き長生き道元禅師」後編 口腔健康の重要性とケアの必要性

2025-03-31 15:47:36 | 倫勝寺の行事報告

令和7年3月20日開催 春彼岸会講演録・・道元禅と私たちの生活1「歯磨き長生き道元禅師」より
後編の今回は、和田先生の講演要旨を掲載します。

毎日の歯磨きが健康寿命につながります。
ご一読ください。

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口腔健康の重要性とケアの必要性

【口腔は身体の入り口】
自分の歯でおいしくたべられることは生きる力に直結しています。
自分の歯はもちろんですが、入れ歯になっていてもよく噛める人は
健康寿命(健康上の問題では日常生活が制限されることなく生活できる期間)が長いことがわかっています。
ヒトは生きていくうえで体内に必要な栄養や酸素を摂取しなければいけません。
体内に取り込まれたものは、身体を維持するためのエネルギーに変化し、生命の活動に貢献します。
口腔は、その入り口として存在しており、消化器、呼吸器の他に感覚器、運動器としての役割を果たしています。

食物が口腔内に入ると、まず歯で噛み砕かれ、唾液と混ざり、飲み込みやすい食塊となり、胃へと運ばれます。
しかし、歯がぐらぐらしている状態や、歯が抜けたままになっていると食物を十分に噛むことができず、
消化の際に胃に負担がかかることになります。
サイレントディズィーズ(静かな病気)と言われ、自覚症状がほとんどなく、気がつかないうちに進行する歯周病は、
誤嚥性肺炎、糖尿病、狭心症・心筋梗塞など、全身の健康にさまざまな影響を及ぼします。

例えば、誤嚥性肺炎は口腔内細菌を含んだ唾液が誤って気管内に入り肺炎を引き起こします。
糖尿病は歯肉の炎症により血糖コントロールが悪化⇒高血糖により歯肉の炎症が治りにくくなり、
歯を支える骨の破壊が促進⇒歯周病の悪化という負のスパイラルにはまります。

【口腔ケアの必要性・目的】
口腔内は細菌が増殖しやすい条件が揃っているため、感染源になりやすい場所でもあります。
さらに、呼吸器や消化器に通じる入り口であり、唾液腺が開口しているため、
口腔内の汚染は全身性の感染症を引き起こす可能性があります。

口腔ケアの主な目的は、口腔内の清潔保持と歯肉への刺激です。
これにより、誤嚥性肺炎などの感染予防、食欲増進、生活リズムの調整といった作用がひきおこされます。

また、口腔ケアは全身の健康維持にも関わる重要な要素であるため、定期的なケアが推奨されます。
歯磨きが不十分だと歯の表面にネバネバとした歯垢が作られます。
患者さんにお話しする時に例えるのですが、イメージとしてはキッチンの水回りの水切りカゴに付いたヌルヌル、ネバネバ汚れです。
これは細菌の塊で、歯周病菌もこの中で増え続け、炎症を起こして歯を支える組織(歯周組織)を破壊していきます。
歯周ポケットから入り込んだ歯周病菌や歯周病菌が出す毒素、炎症性物質が歯肉の毛細血管に入り、血流にのって全身を巡ってしまいます。
そのため先にあげたような全身に関わる疾患につながってきますので、歯周病に関連のある病気をお口のケアで防ぎましょう。

【口腔ケアの具体的方法】
①歯磨きの前にブクブクうがいで食物残渣(食べかす)を除去します。
特に就寝中は唾液の分泌量が覚醒時の1/3に減少し、自浄作用が大きく低下し、細菌が増えてしまいます。
朝起きて洗顔の時にブクブクうがいをしてから朝食を摂っていただくのと良いと思います。

②ブラッシング:
毎食後、歯垢のたまりやすい場所(歯と歯の間、歯と歯肉の境目、奥歯の噛み合わせの面の溝)、歯を丁寧にブラッシングすることで、歯垢の蓄積を防ぎます。
ブラッシング圧が強くなりすぎないよう鉛筆を持つように歯ブラシを持つと良いでしょう。
磨くというとゴシゴシ床を磨くイメージを持ちやすいですが、
外出後の服の生地を傷めないようブラシ掛けをしてほこりを落とすイメージの方が良いと思います。

また、磨く順番を決めて磨くことで、磨き忘れを防ぐことができます。
(例えば12分割、①左上頬側奥歯→②上顎唇側前歯→③右上頬側奥歯→④右下頬側奥歯→⑤下顎唇側前歯→⑥左下頬側奥歯
→⑦左下舌側奥歯→⑧下顎舌側前歯→⑨右下舌側奥歯→⑩右上口蓋側奥歯→⑪上顎口蓋側前歯→⑫左上口蓋側奥歯に戻る)

③補助清掃用具
デンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブラシで歯と歯の間の清掃、ワンタフトブラシで普通の歯ブラシでは毛先が届きにくい場所の歯垢をしっかり取り除きます。

④義歯用歯ブラシ
流水下でブラッシングし、1~2週間に1度義歯洗浄剤に浸けるとよいでしょう。

⑤鏡を見てチェック
歯垢がついていないか、歯肉が赤く腫れていないか、歯と歯の間の歯肉がピンク色に引き締まっているかを確認します。

⑥定期的な歯科検診
定期的に歯科医を訪れ、専門的なクリーニングと検診を受けるようにします。

⑦バランスの取れた食事
栄養価の高い食事を摂取し、口腔内の健康を維持します。

口腔ケアを怠ることは、全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、日常のケアを徹底し、健康な口腔を維持することが重要です。
健康長寿のためには「口腔健康管理」が重要です。
自分で毎日行うセルフケアだけでは、歯のトラブルを完全に防ぐことはできません。
そのため、歯科医師や歯科衛生士による定期的なプロフェッショナルケアを併せて行うことが、健康寿命を延ばすことにつながります。
困ったときにいつでも気軽に相談できるかかりつけ歯科医を決めておくと、
それまでの治療履歴を把握し、年齢と経過に応じた対応とアドバイスをしてくれます。

 

【介護を必要とする方の口腔ケア】
介護が必要な状態になると、セルフケアで行き届かないケアを介護者が補う場合が増えてきます。

歯ブラシを自身で持てるのであれば時間がかかっても、できるだけ自分で歯磨きを促します。
「まだ自分でできる」という自信につなげます。

介護者は、口腔の健康維持が全身につながっていることを意識して手助けをします。

口腔内の細菌や汚れを取り除いて口腔環境を良好にし、口腔機能訓練やマッサージを実施して、口腔の機能維持・向上の介助に努めましょう。

認知症になると自分から痛みを訴えられないケースも出てくるので、お口のトラブルが進まないようにするためにも
プロによる定期的なケアが必要となってきます。
認知症になっても継続してケアを受け口腔健康管理を行うことで、症状の進行を改善することができるので、
かかりつけ歯科医を持つことがとても大事になります。

【介護者が気をつけたいケアの手順】
普段から介護する人のお口の中に注意をすることが大切です。いつも見ていることで小さな変化も見落とすことが少なくなります。

1.口腔内をチェック
歯の状態(虫歯、グラグラしている歯、欠損など)、乾燥、口臭やブラッシング時の出血、歯垢や歯石の有無、歯肉や舌の状態を確認します。

2.お口の粘膜、舌の汚れを取る
お口の汚れを取るために、水分や保湿剤を含ませたスポンジブラシなどでお口の中を事前に湿らせます。
その後、舌ブラシやスポンジブラシで頬の内側、上顎、舌などの汚れを優しく拭き取ります。

3.歯を磨く
ブラッシングは汚れやすい歯の裏側(ベロ側)や歯と歯肉の境目を中心に、軽くペンを持つような持ち方で行います。
歯ブラシの毛先がどこに当たっているか確認しながら磨きます。

4.保湿ケアをする
唾液の分泌状態、口腔乾燥状態に応じて、保湿剤を口腔内に薄く塗って乾燥を防ぎます。

舌ケア
:1日1~2回、奥から前へ10回程度擦過すれば白い部分が残っていても大丈夫。
汚れている舌をピンク色の舌にすることではなく、舌の表面で過剰に細菌が繁殖しないようにすることが目的です。
舌苔除去をやり過ぎてしまうと、舌乳頭の先が傷ついてしまい、赤く血が滲んできてしまうようなこともあります。
舌苔は全身状態と関連していることから強い力で除去しなくても、
全身状態(食べたり、しゃべったり、口を十分動かして、舌をしっかり機能させる)が改善されれば減少するとも言われています。

【まとめ】
口は身体の入り口であり、虫歯菌や歯周病菌は全身に影響を及ぼします。
自身や介護者の口腔内をしっかり見て、毎日のケアをしていただきたいです。
セルフケアとプロフェッショナルケアを併せて行うことで健康寿命を延ばすことができるので、かかりつけ歯科医をもつことをお勧めします。

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いかがでしたでしょうか。

お口の中のちょっとした気遣いで、全身の状態に影響するといっても過言ではありませんね。
道元禅師がわざわざ洗面や歯磨きを強調したのも、健康であって初めて修行がかなう、ということを身にしみて感じていたのかも知れません。
また、仏祖に対する礼儀、仏祖の行為としての歯磨きがあったのですね。
私たちの日常には、お釈迦様お教えがまだたくさん埋もれています。

お口の健康についての講演録はここまで。

園内は桜が5分咲になりました。



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