いつも貴方はそうだった。
本当に自分勝手で。
調子よく周囲にはいつも軽快な口調で話しているくせに。
一番身近な人に限って大切な事は何も話さず。
いつも温和な笑顔を振りまいているのに。
いつも肝心なことはその笑顔で煙に巻いて。
だから、私も好き勝手な道を選ばせてもらった。
貴方とは違うまっとうな道を進むと、
貴方は反面教師だと思い込むことにして。
「今回はちょっと調子が悪いだけだから、すぐ退院できるはずだ。だから見舞いはいいぞ」
…バレバレだよ。
来て欲しいなら、そう言えばいいのに。
「なんだ、仕事はおさぼりか?」
素直じゃないんだから。
スーツ姿で駆けつけた私を見て最初に言う言葉って、それ?
目が嬉しくってたまらないって言ってるよ。
でも。
いつもなら、
「今度の週末は来るか?旨い物でも食べて行けよ」
とか
「悪いが頼まれごと請けてもらえないか?」
とか言うくせに。
どうしてあの時だけ。
部屋を出ようとする私と目を合わせた瞬間、涙を流したの?
…バカ。
いくら反発しても、貴方の子なんだよ。
何を伝えたいかぐらい、目を見れば分かっちゃうんだから。
それから4日後。
息を上げながら駆け込んだ病室で貴方は
不思議なほど気持ちよさそうな穏やかな寝顔のまま。
『上出来だ。思ったより早く着いたな』と言っているようで。
病院のスタッフからお悔やみを伝えられても実感が沸いてこなくて。
意識が混濁する中、唐突に母の顔を見て、いつもの満面の笑みを浮かべたって聞いたよ。
本当に貴方らしいよね。
最後の1日は声も出せなくなっちゃっていたらしいから
笑顔で『ありがとう』と『さよなら』を伝えたんだね。
その後、母と担当医から想像もしていなかったことを聞かされた。
最期の最期、旅立つ直前にもう声が出ないはずの貴方が絞り出すようにして残した、最期の言葉。
それは…
「あなたのお名前でした」
…え?!
だって、もう声を出す体力すらなかったはずなのに…
「最初は探すように『あなた”は”』と」
「近くにいないことがわかったのでしょう。最期に2回、『あなた”に”』と…」
「あなたのお名前を呼んで、声にならない短い言葉をつむいだ直後に穏やかにお亡くなりになりました」
あの穏やかな表情は、最後の瞬間に間に合わなかった私を咎める表情じゃなかった。
自分の最期の瞬間と恐らく判っていて、最期に口にしたのは、私の名前。
…何を言いたかったのかは、私にはよくわかるから。
きちんと心の奥に刻んでおくから。
……
………
…ずるいよ…
本当に自分勝手で。
調子よく周囲にはいつも軽快な口調で話しているくせに。
一番身近な人に限って大切な事は何も話さず。
いつも温和な笑顔を振りまいているのに。
いつも肝心なことはその笑顔で煙に巻いて。
だから、私も好き勝手な道を選ばせてもらった。
貴方とは違うまっとうな道を進むと、
貴方は反面教師だと思い込むことにして。
「今回はちょっと調子が悪いだけだから、すぐ退院できるはずだ。だから見舞いはいいぞ」
…バレバレだよ。
来て欲しいなら、そう言えばいいのに。
「なんだ、仕事はおさぼりか?」
素直じゃないんだから。
スーツ姿で駆けつけた私を見て最初に言う言葉って、それ?
目が嬉しくってたまらないって言ってるよ。
でも。
いつもなら、
「今度の週末は来るか?旨い物でも食べて行けよ」
とか
「悪いが頼まれごと請けてもらえないか?」
とか言うくせに。
どうしてあの時だけ。
部屋を出ようとする私と目を合わせた瞬間、涙を流したの?
…バカ。
いくら反発しても、貴方の子なんだよ。
何を伝えたいかぐらい、目を見れば分かっちゃうんだから。
それから4日後。
息を上げながら駆け込んだ病室で貴方は
不思議なほど気持ちよさそうな穏やかな寝顔のまま。
『上出来だ。思ったより早く着いたな』と言っているようで。
病院のスタッフからお悔やみを伝えられても実感が沸いてこなくて。
意識が混濁する中、唐突に母の顔を見て、いつもの満面の笑みを浮かべたって聞いたよ。
本当に貴方らしいよね。
最後の1日は声も出せなくなっちゃっていたらしいから
笑顔で『ありがとう』と『さよなら』を伝えたんだね。
その後、母と担当医から想像もしていなかったことを聞かされた。
最期の最期、旅立つ直前にもう声が出ないはずの貴方が絞り出すようにして残した、最期の言葉。
それは…
「あなたのお名前でした」
…え?!
だって、もう声を出す体力すらなかったはずなのに…
「最初は探すように『あなた”は”』と」
「近くにいないことがわかったのでしょう。最期に2回、『あなた”に”』と…」
「あなたのお名前を呼んで、声にならない短い言葉をつむいだ直後に穏やかにお亡くなりになりました」
あの穏やかな表情は、最後の瞬間に間に合わなかった私を咎める表情じゃなかった。
自分の最期の瞬間と恐らく判っていて、最期に口にしたのは、私の名前。
…何を言いたかったのかは、私にはよくわかるから。
きちんと心の奥に刻んでおくから。
……
………
…ずるいよ…
リアルがお忙しいのかなと思っていましたが、とても悲しい出来事だったのですね・・・
心より、ご冥福をお祈り致します。
何もできませんが、愚痴をこぼすだけでも構いませんので、いつでもログインして下さい。
お心遣い恐れ入ります。
母の代行として務めた一連のことも
ようやく一段落しそうです。
最期の瞬間まで自分のことを思っていて
くれた人がいたというのは、小説や映画
などの世界ではしばしば見かけます。
でも、リアルでそれを体験すると言葉で
どう表現していいのか分からないほどの
「重み」を感じます。
もう少し落ち着いたら、
またログインしますね。
…ありがとう。