goo blog サービス終了のお知らせ 

ロータリープロジェクトアーカイブ

国際ロータリー第2670地区(四国)におけるロータリーアンの奉仕プロジェクトをご紹介します。

2015年8月月次レポート

2015-09-25 10:41:58 | 奨学生(地区補助金)
【2014-2015年度】地区補助金奨学生 木原 慎一朗さん(今治南ロータリークラブ推薦)


9月1日、神戸の学生寮で修士論文(dissertation)を書き終えました。

先行研究のまとめ(literature review)、方法論の確認(methodology)、データの収集(data collection)に相当な時間を費やしたため、
収集データの分析(data analysis)、考察(discussion)、今後の研究課題の検討(limitation)などを本格的に書き始めたのは8月に入ってからでした。
バーミンガム大学に入学して以降、6本の論文課題(合計約24000語)を書き、それなりの評価を受けていた自信もあり、今回の15000語を甘く見ていました。
確かに、就職試験と並行して研究を進めることは負担になりましたが、毎日もっとコツコツと進められていたらよかったと反省しています。
特に、最後の2日間(8月30日、31日)は、これまでの人生で最も頭をフル稼働させた48時間でした。
何とかインターネットのマイページから修士論文を提出し、お気に入りのチョコレートを食べながらバクバクした心臓を落ち着かせました。
今回の評価は9月末に発表される予定です。これで卒業できるかどうかが決定するため、チョコレートに頼る生活はしばらく続きそうです。

その修士論文について、内容の概要は次のようになります。
第2言語を学習する教室において、生徒の発話に含まれる誤りに対し、教師は口頭でこれを訂正しますが(oral corrective feedback)、その訂正は以下の6種類に分類されます。
明示的訂正(explicit correction)、リキャスト(recasts)、明確化要求(clarification requests)、メタ言語的訂正(metalinguistic feedback)、誘導(elicitation)、繰り返し(repetition)です。
明示的訂正とは、生徒の誤りを否定し、正しい表現を提示することを言います。
リキャストとは、会話の流れを維持したまま、生徒の誤りを正しく言い換えることを言います。
明確化要求とは、生徒の自己訂正を促すために、言い直しを要求することを言います。
メタ言語的訂正とは、言語的(例えば時制や人称について)誤りがあることを指摘することを言います。
誘導とは、明確化要求と同じく、生徒の自己訂正を促すために、生徒の誤りの直前まで、その発話を模倣することを言います。
繰り返しとは、生徒の誤りを上昇イントネーションで繰り返すことを言います。
先行研究によると、上記6種類の口頭訂正フィードバックの中では、リキャストの使用頻度が最も高い傾向にあります。
これが日本人学習者を対象とした教室(Japanese context)にも適用されるかどうか観察しました。
4人の英国人教師の授業を観察した結果、先行研究の傾向とは必ずしも一致しませんでした。
すなわち、観察した授業の少なさを考慮する必要はありますが、日本人英語学習者に対する口頭訂正フィードバックの傾向には、それまでの傾向が適用されない独自性があることが明らかになりました。
また、この観察と同時に、自身の口頭訂正フィードバックについての各教師の信念(beliefs)について、アンケートによる調査をしました。
実際の教室活動における訂正の傾向と、自身の信念の間の乖離程度を明らかにするためです。
これを明らかにすることにより、教師が教室活動と信念のギャップを自覚することができ、よりレッスンプランに沿った授業を展開できるようになることが期待できます。
アンケート調査の結果と前述の教室内口頭訂正フィードバックの傾向を比較してみると、全体的に両者不一致の状況にあることが明らかになりました。
今回の研究の弱点としては、研究期間の短さと被験者の少なさが挙げられます。これを改善し、より精度の高い分析結果を出すことが、今後の研究課題です。
学生としての研究はこれで終わってしまいますが、これからも研究は続けていきます。それが、多くの方々に支えられながら学生生活を送った私の使命(mission)であると考えています。
趣味としての研究になりますが、その立場に甘んずることなく、第2言語習得(Second Language Acquisition(SLA))と英語教授法(Teaching English as a Foreign Language(TEFL))の研究領域に貢献できるよう精進します。

今治北高校在籍時から、海外(当時はどちらかというと米国志向でしたが)で勉強することについての憧れは持っていました。
しかし、自身の能力不足に加え、具体的な留学先のイメージが確定できなかったこともあり、大学院留学は夢のまま終わるところでした。
それが、こうして英国留学するに至り、グラスゴー・インターナショナル・カレッジ(グラスゴー大学の語学養成カレッジ)とバーミンガム大学で無事にコース修了まで在籍してこられたのは、資金援助があったからこそです。
日本人が学位取得のための留学をしないのは、日本の大学卒業時期と海外(主に欧米)の大学入学時期のズレ、海外の大学卒業時期と日本の就職時期のズレが大きな原因であると指摘されています。
この点、私個人の例のみを根拠に主張するなら、それは全く見当はずれの分析です。
確かに、日本の多くの大学は3月に卒業式を迎え、海外の大学の9月の入学式までは約半年間のギャップがあるため、その期間を無駄だと感じる気持ちは理解できます。
しかし、海外に1度も出たことがない学生にとって、そのための準備は不安なことだらけで大変であり、実際のところ、半年間では足りないくらいです。
その準備を日本の大学在籍中にするとしたら、研究に支障を来し、何のための留学なのかわからなくなります。
したがって、入学時期についてのギャップは、むしろプラスの側面が大きいと思います。
海外の大学の卒業時期についても、9月の卒業式から翌年4月の就職までのギャップが何の問題になるのでしょうか。
日本の就職活動の時期については、今年に大きな変革(就職試験解禁日の後ろ倒し)がありました。
残念ながら、それを実施しているのは一部の法人に限られているようですが、留学生(帰国生)にとって、いい方向に動いているのは間違いありません。
日本の大学生にとっても、夏季休暇中に就職試験を受けることになるため、これまでの就職活動状況と比較すると、勉学への影響が小さいと思われます。
にもかかわらず、今年の変革に否定的な意見が多いようですが、ニュースを見ている限り、納得のいく批判理由はありません。
前置きが長くなりましたが、日本人の留学を抑制している大きな要因は、留学にかかる費用であると考えます。
英国の大学に関していえば、その学費は日本の大学とは比較になりません。さらに、毎年30万~50万ほどの授業料の値上げは当然のように行われます。
銀行の教育ローンについても、そう簡単に受けられるものではありません。
このような状況において、日本人学生のための奨学金制度の存在は、非常に大きな助けとなります。
私の場合、ロータリークラブの補助金があったからこそ、英国留学を実現できたと言っても過言ではありません。
改めて、この場をお借りして、ロータリークラブの皆様に深く感謝申し上げます。

★グラスゴー・インターナショナル・カレッジ


★グラスゴー大学


★バーミンガム大学



2015年7月月次レポート

2015-08-18 10:05:02 | 奨学生(地区補助金)
【2014-2015年度】地区補助金奨学生 木原 慎一朗さん(今治南ロータリークラブ推薦)


修士論文(dissertation)提出前の最後の更新です。

今治と神戸で論文の執筆をしていると、グラスゴーとバーミンガムの涼しさが恋しくなることがあります。
先日のテレビニュースにて、ガーナからの観光客が、「(アフリカより)日本の方が暑い」と話していたのには笑ってしまいましたが、最近は笑えないほど修士論文と就職試験に焦っています。

思えば、留学直後は、常にわかりやすい英国らしさを求めていたような気がします。
ジェームズ・ボンドの愛車「アストン・マーチン(Aston Martin)」を見つけてはバチバチ写真を撮り、
ウイスキーはスコッチ(「シーバス・リーガル(Chivas Regal)」や「バランタイン(Ballantine’s)」など)にこだわり、
ショッピングセンターはニュー・ストリートのセルフリッジズ(Selfridges)と決めていました。
それまで海外経験がなく、ヨーロッパへの根拠のない憧れを抱いていた私にとって、目に映るもの全てが新鮮でした。

英国滞在中は、観光に関していうと、そのような物質的な珍しさに満足していたところがあったように思います。
しかし、帰国して以降、日本と英国の人間的な違いを強く意識するようになりました。
ケンブリッジ大学のクレア・カレッジに留学していた白洲次郎氏も指摘していることですが、英国人は、相手がメイドや執事であれ、食品雑貨屋の店員であれ、自分に何かをしてくれたときには、ほとんどの人がお礼を言います。
実際のところ、私の見てきた限り、バーミンガムでは、レジの会計をしてくれるスーパーマーケットの店員やチケットを切る駅員に対して、全ての人が必ず「Thank you」と一言お礼をする、とても気持ちのいい文化がありました。
ここで、私自身の日本での行動を振り返ってみると、何と横柄な態度をとっていたことかと反省することが多々あります。
料理を運んでくれたウェイトレスやウェイターに何も言わず、お弁当を温めてくれたコンビニのスタッフから黙って商品を受け取ることが多くありました。
東京大学法学部を首席で卒業した後、財務省官僚を経て、現在は弁護士として活躍する山口真由氏(2015)の著書『いいエリート、わるいエリート(新潮新書)』によると、留学経験は人間の傲慢さを取り去る手段として効果的なようです。
私の場合、その指摘通り、バーミンガムでの生活を通して、自分の驕りに気づくことで、人間的な成長があったと思います。

2020年に開催される東京五輪の1つのアピールポイントとして、日本人の「おもてなし」精神が大きく取り上げられていますが、「おもてなし」される側にもそれ相応の品格が必要であると思います。
従順なホストに徹するのではなく、時には相手の行動を戒めることも必要でしょう。
「おもてなし」に対する相手の行動にどのようなレスポンスを返すかが、国際的な立場における日本の今後の評価を左右することになると思います。

ロータリークラブでも頻繁に聞く言葉ですが、コミュニケーションは「インターアクト(interact)」なもので、発信者と受信者相互の意思が釣り合ってこそ、親密な関係を築けるものだと考えます。
渡英前は、自分の意思を上手く伝えられるかのみに気を取られていましたが、会話の中で、相手の意思を上手くくみ取ることにも注意すべきだと気づかされました。
相手の善意を受け取る際の心のあり方が、学業と共に今回の大学院留学で学んだ大きな収穫の1つです。

次回の更新時には、既に修士論文を提出し終わっています。研究の成果に加え、これまでの留学生活の集大成について、書いていこうと思います。

★アストン・マーチン


★セルフリッジズ


★バランタイン

2015年6月 月次レポート

2015-07-14 11:45:44 | 奨学生(地区補助金)
【2014-2015年度】地区補助金奨学生 木原 慎一朗さん(今治南ロータリークラブ推薦)

就職試験のため、神戸の学生寮からの更新です。

英国では体験できない梅雨の暑さに早くも夏バテしそうですが、日本の健康的な食生活を続けていれば安心です。

グラスゴーとバーミンガムの生活で、雨には慣れているつもりでしたが、日本の大粒の雨は、英国のしとしと降るそれとは全く違います。
ところで、私の見てきた限り、英国人は少々の雨では滅多に傘をさしません。
現地で傘をさしているのは、ほとんどがアジアからの留学生です。
渡英前は、霧雨の中こうもり傘をさして歩く紳士たちの姿をイメージしていたので、びしょ濡れになりながらも気にしない英国人の実情には衝撃を受けました。
学生の間では、傘の代わりにフードを被るのが主流です。
一気にまとまった雨が降る日本と違い、天気が不安定で、いつ雨が降り出すかわからない英国では、かさばる傘より気軽に羽織れるフード付きコートの方が合っているのかもしれません。



バーミンガムで生活していながら、これまでのレポートでは、現地の観光スポットをほとんど紹介していませんでした。
そこで、今回は、バーミンガムを訪れる観光客の間で人気の行楽地について書こうと思います。

妻で女優のヘレナ・ボナム=カーターとロンドンに在住する映画監督、ティム・バートンの「チャーリーとチョコレート工場(Charlie and the Chocolate Factory)」の
モデルとなったチョコレート工場が、バーミンガム郊外にあります。世界的に有名なチョコレートメーカー、「キャドバリー(Cadbury)」社の工場です。


会社のイメージカラーである紫に包まれたその工場周辺は、できたてのチョコレートの甘い香りが漂い、館内(「キャドバリーワールド(Cadbury World)」)に入る前からうきうきします。
劇中でチャーリーたちがウィリー・ウォンカ(ジョニー・デップ)に案内してもらったように、館内は、チョコレートの製造過程をトロッコに乗って体感できる遊園地のようになっています。
その終着地で、工場で作ったチョコレートを食べたり飲んだりすることができ、チョコ好き(chocoholic)にとっては最高のツアーです。
味はというと、いかにも外国産のチョコレートという感じで、日本人の間では好みが分かれそうです。
しかし、それが意外と癖になり、その「キャドバリーデイリーミルク(Cadbury Dairy Milk)」目当てに通い詰めてしまう恐ろしい魅力があります。
紫のパッケージに金色のサインが印刷されたそのチョコレートは、日本の一部のお店でも入手できるようなので、興味がある方にはおすすめです。
館内には、もちろんお土産コーナーが設けられていて、オリジナルグッズや様々なチョコレートの山が眩しいです。
以前のレポートで言及したピザと比べて、ここのチョコレートを全種類制覇するのは相当時間がかかりそうです。



またバーミンガムに戻る時は、どんどん新しい穴場を開拓していこうと思います。そのために、早く内定をもらわなければなりません。
就職活動と修士論文執筆の両立は、想像していたよりはるかに厳しいです。
2010年に、米国「Time」誌の「今年の人(Person of the Year)」に選ばれた、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグは、
「完璧を目指すよりまず終わらせろ。(Done is better than perfect.)」と言いますが、その言葉通り、まずは修士論文の指定文字数を書き上げることにします。

2015年4月 月次レポート

2015-05-12 14:21:27 | 奨学生(地区補助金)
【2014-2015年度】地区補助金奨学生 木原 慎一朗さん(今治南ロータリークラブ推薦)

英国の日照時間はかなり長くなりました。

冬の昼の短さは精神的にかなり堪えましたが、最近はそのような心のモヤモヤも晴れきっています。
夜9時頃まで陽が射し、朝6時過ぎには既に昼の明るさになってきています。
毎朝5時半になると、雁やカモメの群れが大学寮近くの湖に飛んでくるため、その鳴き声で目が覚めます。
他にも、日本ではあまり見かけない水鳥、キツネやウサギが敷地内をウロウロしており、ちょっとした動物園気分です。
特に、キツネには頻繁に出くわしますが、つい先日、そのキツネに噛みつかれた寮生がいるようなので、気を付けなければなりません。

論文課題に取り組んでいた頃は、1日の時間の感覚がほとんどなく、相当不規則な生活を送っていたため、まともな生活リズムを取り戻すのに苦労しています。
先月は、深夜4時頃に就寝し、正午前に起きることも少なくありませんでした。
しかし、やはり朝食抜きの生活は頭の回転にも響くので、修士論文の準備のために、しっかり1日3食とるよう心掛けています。

日本でよく言われる英国の食べ物についての評判は、ある程度当たっていると思います。
昨年に体験したグラスゴーにも、現在のバーミンガムにも、日本のスーパーマーケットでは当たり前に並んでいるようなお惣菜の文化はありません。
自炊のための食材が多いかというと、決してそのようなこともありません。
冷凍食品の品揃えも、日本ほど多くありません。
そのため、外食でもしない限り、食事は単調になりがちです。
昼食には、1ポンドか2ポンドの冷凍ピザを食べることが多いのですが、そのピザもあっという間に全種類制覇してしまいました。
どうでもいい話になりますが、バーミンガムで私より多くピザを食べる日本人は、ほとんどいないと思います。

そのような生活の中、前ターム(Spring Term)の打ち上げを兼ねた気分転換として、
教育学部の同じコース(Teaching English as a Foreign Language (MA TEFL))に在籍する日本人学生6人で、
シティセンターの「Kyoto Sushi & Grill」というビュッフェ形式の寿司レストランに行ってきました。
日本で食べる握り寿司とは微妙に味が異なりますが、久しぶりの日本食はとても美味しく感じ、幸せな気分を味わいました。
皆、卒業後は教育の道に進むことを決めており、その意気込みに励まされながら、いい刺激をもらうことができました。

4月13日に論文課題を提出して以降、しばらく大学の研究から離れて、好きな本を読んだり、大学図書館で借りたDVD(字幕がないので、内容理解にかなり苦労しますが)を観たりしながら過ごしていました。
バーミンガムに来て以来、最も落ち着いた時間だったと思います。

そのような春休みも終わり、5月6日から、指導教授とマンツーマン(メールでのやり取りも含む)の修士論文の執筆のための授業(Summer Term)が始まります。
論文のテーマは、「日本人学習者を対象とした外国語としての英語学習のための教室における教師の口頭訂正フィードバックと
その信念の関係性についての一考察(An investigation into the relationship between teachers’ oral corrective feedback and their beliefs in EFL classrooms in Japanese contexts)」の予定です。
この研究を通して、生徒の授業中の発話ミスをどのように訂正すれば、それが英語習得に寄与するのかを明らかにする突破口を見出したいと考えています。
5月13日には、ロンドン郊外の日本人学校に授業見学に訪問します。8月の提出日までに、約15000語の論文をまとめる必要があります。
データの分析作業に加えて、文法や単語の手直し作業をしなければならないことを考えると、それほど時間的余裕はありません。
いい評価が得られる論文に仕上げるために、気持ちを切り替えて研究に励みます。

指導教授と相談したうえで、5月末に一時帰国するつもりです。
そのため、次回のレポートは日本から提出することになると思います。
有意義な更新ができるよう、これからまた先行研究調査(literature review)に取り組んでいきます。

★昼のキツネ


★夜のキツネ


★午後7時30分のキャンパス


★シティーセンター


★大学寮裏庭

2015年3月 月次レポート

2015-04-16 10:29:47 | 奨学生(地区補助金)
【2014-2015年度】地区補助金奨学生 木原 慎一朗さん(今治南ロータリークラブ推薦)

英国にも春が来ました。

キャンパスのサクラは満開を迎え、芝生ではリスが走り回っています。
イースター休暇には、大学までピクニックに来ている家族連れを多く見かけました。
こちらのサクラは日本の桜と比べてスレンダーなスタイルをしており、同じさくら並木でも新鮮な感じがします。

英国の気候は極端なもので、つい最近まで夕方4時には真っ暗になっていたのですが、サマータイムが始まった途端、夜8時過ぎまで明るい日が続いています。
とは言っても、朝方は3度くらいまで気温が下がるので、まだまだ冬の気配も残っています。
半袖短パンに衣替えした現地学生が増えてきましたが、私はまだダウンジャケットが手放せません。

1月から始まった今ターム(Spring Term)は、あっという間に過ぎました。
心配していた毎週の課題も何とか乗り越えることができ、今はほっとしています。
最終講義では、教授を囲んで絵本を読みました。
その最中、昨年9月の渡英からの楽しかったことや苦しかったことが思い出され、教授の優しい語り口も相まって、泣いてしまいそうになりました。
(その時の写真を後から見てみると、自分1人が険しい顔で写っていたので笑ってしまいましたが)
修士論文を仕上げるために、指導教授との面談はこれからも続きますが、もう講義が行われることはありません。
本当に、あっという間の院生生活でした。

ロータリークラブへのレポートとして、前ターム(Autumn Term)の論文課題のことを書いたのが、つい昨日のように感じられます。
そうかと思うと、もう今タームの論文課題の提出締め切りがやってきました。
前タームと同じく、4000語の論文課題が3本です。
内容は前回より難しく、ちょっとした統計処理をしなければならなかったため、例によって、4月13日の締め切り当日まで書いていました。
正直なところ、そのクオリティーに満足できないまま提出したので、どのような評価が返ってくるか不安です。
成績が発表されるのは1ヶ月後なので、それまでは修士論文の準備を進めるつもりです。

今回のレポートにて、1つ訂正したいことがあります。
11月の月次レポートで、英語を話す際には、内容が充実してさえいれば、流暢性(fluency)を重視する必要はないという趣旨の文章を書きました。
今タームのコミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング(Communicative Language Teaching(CLT))に関する授業を通して、
その考えは、少なくとも英国内では通用しないことを学びました。
その授業のために読んだ文献は全て、コミュニケーションにおいて流暢な英語を話すことの重要性を指摘しています。
流暢性の定義は、研究者によって異なります。
多くの研究者が、発話の速さ、もしくは発話中の沈黙の少なさをその定義に含めていますが、これに発話量の多さを含めるべきだと主張する研究者もいます。
しかし、適切な意志疎通のためには、対話者とのテンポのいいやり取りが必要であるということが、研究者の間の一応の共通認識です。
そのテンポに乗り切れないと、肝心の話の内容を聞いてすらもらえないことも頻繁にあるようです。
それを聞いて、グラスゴー時代に、運送会社に電話した際、私の英語のあまりのたどたどしさのせいで、
相手を呆れさせてしまい、途中で電話を切られそうになったことを思い出しました。
文献によっては、文法の正確さや単語の適切さを少々犠牲にしてでも、流暢性が必要であると書いてあるものもあります。
話の内容は、コミュニケーションの中の意味交渉(negotiation for meaning)によって深められるため、その意味交渉のために流暢性が要求されます。

映画「英国王のスピーチ(The King’s Speech)」では、吃音に悩まされるジョージ6世が、言語療法士のライオネル・ローグと共に、その克服に向けて奮闘する姿が描かれています。
ジョージ6世のスピーチの内容自体には問題はなかったようですが、流暢性の欠損のために、その内容を聞き入れようとしない聴衆が多かったそうです。
流暢性とは少し離れるかもしれませんが、映画「マーガレット・サッチャー:鉄の女の涙(The Iron Lady)」でも、同じような状況が描かれています。

スピーチと対話は別物です。
相手の発言に迅速に対応する必要がある対話においては、スピーチよりもさらに流暢性が求められます。
英語を外国語として扱う学習者にとっては、流暢性の習得には限界があるでしょう。
しかし、流暢性がないために、自分の話が聞き入れられないとしたら、それは孤立につながってしまいます。
英語ネイティブであるジョージ6世やサッチャー元首相がそうしたように、多くの日本人も、流暢性の習得に向けて努力する必要がありそうです。


★大学寮裏庭


★サクラ


★最終講義