つまりはバーカ！と。
人口5万人に満たない●●郡●●町。全盛期には確かにゾクもいた。西肥狂走連合紅孔雀●●支部。さすがにこの程度の町の中心である駅前を流しても誰も気づきもしないし、いくら爆音を立てようとも苦情など警察に通報しない。土曜日の夜ともなれば、およそ30分ほどでたどり着く10万人程度の町の駅前を総本部と合流する。駅前には多数のギャラリーが存在し、またほぼ確実にパトカーに追い掛け回される。運よく?こういう形でしかカッコウ付けようのないがゆえに、ギャラリーのうちの女から連絡先が書かれた紙を手渡され、こうして「ギャラリーの女と知り合ってもうたけ！」という結果に…
「和博！やけんいいよろうが、カミサン今ではデブで国道沿いのパチンコ屋で働いとるようなけど、な？オイが知りおうた頃はやぜ？聞きようや？やけんな？ゾクちいうても今みとうにゲリラ式に走りよらんで、毎週土曜日にやぜ？合同で走りおうて、500台から集めよって、博多の連中がこっちにまでケンカしにきようけ、1000台から連ねて来て、こっちも受けてたたんと・・」
さすがに後半はウソだ、と。500台からのあたりから非常に怪しくなってきたが、しかし★★土木に就職し、この男堀江が初対面時に見せてくれた「ヤンキーロード」に掲載された地元グループの紹介記事からすると、前半分は本当だ。堀江も今とは違ってやせて精悍な顔つきをしている。今じゃパチンコ屋の前でジャージ着て並んでる奴らにありがちな顔をしている。
正直あの時代に対する憧れは確かにある。正直上半身裸になって野太い声で「いつでもかかってこいや！」とか「オイらはケンカをいつでも買う度胸はあるけん！」とか叫んでみたい、と本気で思う。またスプレーで街道沿いの壁に勇ましさを誇示する文字を書き連ねてみたい！と本気で思う。
でも同好の志など誰もいない。先輩の家に置いてあった、先輩のお兄さんの持ってた「特攻の拓」を読んでいくうちに血が沸き立つような感じを覚えた。先輩のお兄さんは10万人の町Kでゲーム喫茶の従業員をやってて、ヤクザの知り合いがいるというのでちょっと憧れる。一度ゾク時代の写真を見せてくれて、口の中が乾いていくような感じがしたのを覚えている。
「和博君！オイはな、塾に所属しようけ、塾ちいうても学校の勉強ちがうけ、国のことを考えて…」「これからはちゃんと国のことも考えんといかんけんな！オイらがK駅前をパトロールしようや？半端もんが駅前でちゃらちゃらしとうけ、注意したって塾にいれたら、ビッとしてからに、見てみ街宣時でもちゃーんとしてから。半端なことはできんけの」
大日本△心塾と書かれたワゴン車がK駅前に止まってるのを見た。ワゴン車の上でスピーカー以って「国」とか言ってるけど、正直何が言いたいのかわからないが、ズンとくるものがあった。
「なあ、博敏？右翼カッコええや？」「何いいようや？キサンもアホなモンにかぶれてからに、この前はゾクやるや？いうてなら筑後会の人に話通さないかんけいうたら面倒や言うて、ゾクなんてやれんめーって」「ゾクなんかとちゃうやろが？国のことを考えて、やぜ？わからん奴やのう？筑後会の人も国のこと考えて、やけ愛国活動に身を投じて・・・」「アホか?筑後会はヤクザや？わかりよろうが？ヤクザにいい人なんておるわけあんめーて？どうせ月々会費とかとらえるや？とらんかったってどうせ事務所に待機せなあかんし、それやくざと同じやろうが？」「おめえもわからんのー、あの筑後会のひとは海岸沿いをパトロールして朝鮮からの密航者を・・・」
筑後会系右翼団体大日本△心塾は筑後会系暴力団△山一家△心組組長江添を主幹とする右翼団体である。構成員は全てヤクザというわけではなく、★★土木社員、ダンプ運転手、つぶれたすし屋上がりのゲーム喫茶従業員、ホスト崩れパチンコ屋従業員、生活保護受給者等も含んでいる。いずれもヤンキーという経緯の途中で、江添と知り合い、後に所属した。
堀江もオレの中にある「力」「男らしさ」に対する憧れに気づいていたのだろうか?「カッコええやろうが？」とにやけた顔をしてるのを見て、ふと心の中を見透かされたような気がした。「勉強会があるけ、来るいうなら来てええぜ？」
