![]() | キング・コングアイ・ヴィー・シーこのアイテムの詳細を見る |


ピーター・ジャクソン版『キング・コング』をご覧になったのなら、または今からでも観るご予定があるのなら、1933年製作オリジナル版も観なさい!と申し上げておきます。
現在、書店販売等で500円の廉価版も何種か出回っていますし、オリジナルをご覧になれば、PJ版への理解も深まり、PJがあちこちに施した仕掛けにも膝を打つことでしょう。
但し、廉価版の画質は正直言ってよろしくありません。うちにあるのはLDですが、そちらの画質の方が数段上です。テレビの洋画劇場で使用した映像そのままなのでは?という疑惑すら覚えます。
さて、この種の、怪獣映画や特撮映画に対する自分自身のスタンスは、男性のマニアな人たちに近いかも知れないと思います。
その観点から申し上げれば、いわゆるジャンルムービー(SF、特撮、ファンタジー、怪奇物、ミステリ等)に対する批評や感想で、そのジャンルへの愛情を感じられないないものは、どうしても好きになれません。もしくは、そのジャンルなりの、否、それに限らず映画というものの「歴史」に対する敬意の感じられない文章は、と言ってもいいでしょう。
それを踏まえた上で------1933年版『キング・コング』こそは全ての怪獣映画の原点であり、ウィリス・H・オブライエンによるストップ・モーションアニメは、当時の最先端技術であったと申し上げておきます。
ご存知の通りPJ版では、コングの演技や恐竜たちの動きは殆どCGによるものですが、トリケラトプスの出て来るシーンで、ほんの数秒ストップモーションアニメを使用して、オブライエンにオマージュを捧げているそうです。
1976年版リメイクに欠けていたのは、そういう「敬意」(或る意味稚気溢れる)だったかも知れません。
コングの造形はかなり凶悪で、「大きいゴリラ」と言うより、やはり「怪獣」です。
劇場公開時、また現在出回っているソフトでもカットされていますが、本来は髑髏島住民やNY市民たちの惨殺も、もっとシーン数が多かったようです。
そんな恐ろしい怪獣に追い回されては、フェイ・レイ扮するアン・ダロウも「絶叫」して逃げ惑うだけです。
とは言え、それもこれもデナムのせいであることは、オリジナル版の時から明らか。しかも、このオリジナル・デナム氏、後悔もしなきゃ悪びれる風情もないので、却って「憎めないヤツ」に見えるほどです。
かの有名な
「ヤツを殺したのは飛行機じゃない。美女が野獣を殺したのだ」
も、このデナム氏があっさりと言うからこそ映画史上に残る名台詞たり得たのであって、PJ版のいろいろ付加されたデナムでは、「オマエが言うな!」と各所でツッコミを入れられているのも当然でしょう。
一方でこの台詞は、「飛行機」がまさに最先端技術の象徴であった時代ならではのものだとも思います。
そういう科学技術が「勝った」のではなく、コングは「自然」な欲望に従い、それに「負けた」のだということ-----より露骨な表現をすれば、オスとメスの闘争に負けたのだということを、当時リアルタイムでこの映画を観た観客は、はっきりと感じ取ったことでしょう。
これを単に「科学文明批判」と呼ぶのは安直に過ぎる気もします。
コングは「恐ろしい」ものであると同時に、大不況の中で閉塞感を抱いていた当時のアメリカ人の、プリミティブな情動を解放してくれる存在でもあったはずで、しかし、だからこそコングは「負け」なければならなかったのです。
「怪獣」とは(ゴジラもそうですが)、常にそういう二律背反の存在です。
さて、PJ版で最も「怖い」どころか「気持ち悪い」例のシークエンス、あれもオリジナル版に本来あったものだそうで、やはりあまりに残酷だから(またはストーリイを停滞させるから)という理由で、公開時にはカットされたとのこと。
アメリカでは、この幻のシークエンスや、その他カットされたシーンも復活させ、PJインタビュー等特典も満載の「スペシャル・エディション」が出ています。
Amazonのこのページ、いきなりReviewが出て来るので驚きますが、少しスクロールすれば、ジャケット画像や内容紹介をご覧になれます。
但し、日本版は発売未定。ぜ、是非日本でも出して下さい!買う人は絶対買いますから!
なお『かいじゅうたちのいるところ』は、モーリス・センダックの有名絵本のタイトル。但しこの場合「かいじゅう」は"monsters"ではなくて"wild things"です。
さっそくレンタルリストにいれました。
私が借りるところは2種類あって、日英字幕付きドルビー・ステレオのほうにしてみたのですが…。こっちだと画像もキレイになっていることを祈りつつ。
>「オマエが言うな!」と各所でツッコミを入れられている
え!デナム不評っすか。私、あのJ.ブラックデナムの "It's the beauty that killed the beast." は、コングの末路と、いつか映画作りという妄執が命取りになるんだろーなーと自分の行く末とをしれっと重ねてるようなうそ寒い雰囲気がすごい! "It's the dream that will kill Denham." てなかんじかー?と感動してしまってましたよ。プレミア来日のやつれはてたPJの印象が強かったせいかしら。
やはり「原点」ですから、歴史的意義ということでだけでも、ご覧になってよろしいかと。
そう言えば『ジュラシック・パーク2』を観た時も、これをやりたかったんだろうなあ…と思いました。
>だかつさん
いえ「不評」というほどのことではなくて「ツッコミ」だと思います(笑)。
にしても、ジャック・ブラックのデナムは、彼の内なる怪獣をその後飼い馴らすことはできたんだろうか?と考えてしまいますね…
一方、オリジナルコングには『コングの息子』なる続編があるそうで、デナムは性懲りもなくまた髑髏島に行って、コングの息子(そもそも母親はどこに!?)の捕獲を試みるそうです