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映画・舞台の感想や俳優さん情報等。基本各種メディア込みのレ・ミゼラブル廃。近頃は「ただの日記」多し。

『夕凪の街 桜の国2018』

2018-08-06 23:59:39 | 映画・DVDレビュー
ときどきのち
今日も蒸し暑かったです。朝ごはんはまた外食にしようと思ったけれど、朝からのあまりの暑さに断念。途中のコンビニでパンやサラダその他いっぱい買って帰りました。

そんなわけで、相変わらずダラダラと一日を過ごした後、夜7時半からNHK総合TVで放送されたこのドラマを観ました。

NHK広島開局90年ドラマ 夕凪の街 桜の国2018

原作は『この世界の片隅に』と同じくこうの史代先生。発表は本作の方が早いです。
もう10年以上前から愛読している本なので、このドラマが放送されることを知った当初は、現代設定や登場人物の設定、オリジナルキャラクターの存在等に戸惑い、正直あまり期待せずにいました。そんなわけで、夕食の支度をしたり食べたりしながらの流し見で(録画予約はしていました)、現代パートは何だかゆるい感じ…などと思いつつの視聴でしたが──
途中から目が離せなくなりました。
特に「過去編」のヒロイン皆実が、原爆投下直後のことを思い出して苦しみ、雨に打たれるシーン。回想部分は「原爆絵」で構成され、正視に堪えぬほど生々しくショッキングなシーンが続きます。しかし、これこそがまさに皆実が見た光景であり、彼女の恐怖、彼女の苦悩や苦痛そのものです。何よりも、これは73年前現実に起きたことなのです。そう思うと、目を背けることはできませんでした。
発病してからの皆実の意識や視界──原作のあの「真っ白」な画面もドラマ映像ならではの方法で再現してくれました。そして、原作のあの衝撃的なひとこと──


嬉しい?

十年経ったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
「やった!またひとり殺せた」
とちゃんと思うてくれとる?



これもちゃんと使ってくれたのです。セリフとしてこれを聞いた時、悲しみと怒りが同時にこみ上げ、食事時だというのに思わず嗚咽していました。
演ずる川栄李奈さんも大変な熱演でした。フジミ役キムラ緑子さんの、明るく優しいお母さんだけれど時おりどうしようもない悲しみや憎しみを垣間見せる演技も秀逸。打越さん役の工藤阿須加さんもいい役者さんになったなあと思います。
旭さんがしていた仕事が広島復興を目指すゼネコン関係(?)で、いわゆる「原爆スラム」撤去にも関わっていたことから、立ち退きに反対する住民が押しかけるというオリジナル展開もありましたが、時代背景を知る上では良い脚色だと思います。フジミさんを守り、怖いオッサンたち相手に啖呵を切る京花ちゃんは、原作よりしっかりしとりんさった。これがあったから、旭さんとの結婚に反対していたフジミさんも認めてくれたのでしょうか。

現代パートは、七波の年齢設定が原作より10歳以上高く、広島への旭父さん尾行旅も幼馴染の東子ちゃんとではなく、(おそらく彼女と)弟の凪生の娘である風子を伴ってのものになります。それはそれで、現代の若者に「広島」そして「原爆」を伝える役割を担っていたと思えて、危惧していたほどの違和感はありませんでした。
影の主役とも言える旭さん役の橋爪功さんが良かったのは言わずもがな。若き日を演じる浅利陽介さんも良かったです。お顔もなんとなく橋爪さんに似ていますし。
旭さんが「七波」「凪生」という子供たちの名前の由来を語るシーンもドラマオリジナルですが、これはこうの先生自身のお考えによるものだったのでしょうか。
ともあれこの現代パートの扱いは、原作のやや難解な構成や「桜の国」パートに於ける「この話やキャラクターは一体どこに通じるのか?」という謎を、こういう形で再構築したのだと納得できました。

何より、この作品をまさに原爆が広島に投下された本日8月6日に放送することに意義があり、作品の出来も合わせてNHKの矜持を見た思いです。
そして、『この世界の片隅に』もそうですが、こうの史代先生の作品とその映像化作品は、「あの原爆」の話でも夏の風物詩でもなく、これがまさに現代のわたくしたちと地続きの世界であり、そこにはごく普通の人たちの日常があったのだということを再認識させてくれます。東日本大震災を経たからこそ、という側面もあると思いますが、こうの史代先生によって、戦後70数年を経てようやく「原爆」「戦争」は、それを直接知らないわたくしたち自身の物語になり得たと言っても過言ではありません。

『夕凪の街 桜の国』原作について、今から10年以上前に書いた当ブログ記事はこちら
2007年映画化作品への感想はこちらです。原作を愛するあまり何となくネガティブな書き方になっていますが、これはこれで良い映画でした。

原作の構成や様々な仕掛けについては、11年前にも言及しましたが、こちらのブログが非常に参考になりました。今も記事を残してくださっていることに感謝します。

ただのにっき

最後に、こうの先生の原作巻頭辞を──


広島のある日本のあるこの世界を
愛するすべての人へ



夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)
こうの 史代
双葉社


原作はアマゾンでは残念ながら現在品切れ中の模様。再入荷または再販に期待します。

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