goo blog サービス終了のお知らせ 

ひょっこり猫が我が道を行く!

カオスなオリジナル小説が増殖中。
雪ウサギが活躍しつつある、ファンタジー色は濃い目。亀スピードで更新中です。

真夏の夜の夢①

2011年08月07日 18時00分10秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 真夏の蒸し暑い夜。
 ひょっこり猫島の雪ウサギラクト家にて猫型ベッドで就寝中に、耳障りな羽音が聴こえた。

 プーン…
「う…」

 プーン、プーン…
「うぅん…このっ、このっ」

 短い手で体中をはたき回すが、倒れる気配のない彼奴(きゃつ)。
 まだ血を吸い足りないのか、己の体の周りをうろついてくる。体力がなくなった隙を狙って、更なる食事にありつこうというのか。すでに二か所ほど血を吸われた頬と腕は、ぷくりと赤く膨れて熱を持つ。
 我慢出来ない痒さまで伴って、脳みそが沸点にまで達したその時、口から零れたのは侮蔑を含んだ嘲笑(あざわら)い。くまの○ーさんとエル○、猫のリオ似なぬいぐるみが窓辺にちょこんと並ぶ、ファンシーな部屋に不気味に木霊した。

「あっはっはっ、私の血を食事に選ぶなんてマヌケな蚊にょ。そんなマヌケな蚊には、あれがお似合いにょ!」

 怒髪天ならぬ、雪ウサギのお耳が天高くそそり立った時――ボリボリと頬を掻きながら、流星の如き素早さで一階の洗面所まで駆け下りていった。
 洗面台の下に取り付けられた収納庫から取り出したのは、蚊を抹殺する蚊取り線香。専用の台とライターを手に持ち、雪ウサギラクトは階段をびょんびょんと駆け登った。

 ジュボッ!

 自分の部屋に入るなり、ライターを手に持つ。アルミ製の台に乗せてうずまき型の蚊取り線香に火を点けた。
 今度こそ安らかな眠りを得られるだろう。そして、次の日の朝は奴がお陀仏になっているに違いない――ほくそ笑みながら、目蓋(まぶた)をゆるゆると閉じた。

***

【ラクト家二階、別室にて】

「コケッ、コケッ、コケコッコー!」

「ふあぁぁ、よく寝た…」
「リオ、まだ眠い…」
「ニャ、もう起きよう? 私、お腹減ったよぉ」
「よし、任せろ。リオにミルクと猫まっしぐらなご飯を用意するからな」 

 ガウラァと、甘えるような猫鳴き声で一鳴きすれば、守護獣ガウラは覚醒した。
 野性味溢れる琥珀色の瞳がリオを捕らえ、軽いキスと頬ずりをしばらく繰り返した後、木目調の洋服ダンスの取っ手にハンガーで引っかけられたエプロンを素早く装備、頭に三角巾まで括りつけた。
 別世界で作られた地上のテレビ番組やドラマを見て、主夫とやらを研究していたらしい。女が喜び、自慢したくなるような男性ぶりを愛しいリオに見せつける為だった。

 美形な青年が白いフリフリのエプロンを惜しげもなくさらし、主夫と化す守護獣ガウラ。今にも戦いに行きそうな面持ちで顔を引き締め、猫のリオを優しく抱き上げて寝室を後にする。向かった先はこの家の主で、自分たちの生みの親でもある雪ウサギラクトの部屋だった。
 
「おい、ラクト。朝だぞ。もう起きろ」
「ニャー、ラクトッ、朝だよ、起きてっ。一緒にガウラのご飯食べよう♪」
「リ、リオ…」
「ガウラが作ってくれたご飯は美味しいよっ」
「…ラクトに作るご飯は無いが、優しいリオがこう言ってるんだ。さっさと起きろ、雪団子」

 白い扉に猫の肉球まで再現したドアノブは、完全に雪ウサギラクトの趣味だった。
 異世界人であるリオを猫の姿にするほどの猫好き、その上ひょっこり猫島や猫型の家まで作る始末。呆れを通し、一撃でも喰らわそうとしたが、リオからの説得もあり共に居座る事にした――
 
「…起きないな、いつもならすぐに飛び起きるんだが?」
「ちょっと中を覗いてみようよ」

 びょんっと、猫のリオはドアノブ目掛けて飛びかかる。両手でガチャリと器用に開け、部屋のど真ん中まで移動した。猫型のベッドによじ登り、主不在のシーツと枕しか確認出来なかった。

「あれー? 居ないね」
「珍しいな、奴がオレ達より早起きするなんて」
「きっと、ラクトもお腹が減ってたんだよ。もう食べてるんじゃないかな」
「そうだな、奴はよく腹をすかせてるし、既に食べ終えてるかもしれない」
「ニャ、私達も一階に降りよう」

 二人はラクトの部屋のドアを開けたまま、一階まで下りて行った。


←カオス文庫へ戻る   ②へ進む→

銅の門②

2011年06月19日 09時28分31秒 | 小説作業編集用カテゴリ




「インディー○ーンズじゃないんだんからぁぁぁ~!」
「ニャオォォォ~(ギャァァァ~)!!」
「リオっ、しっかりオレに掴まってろ!」
「あらあら、いきなりな歓迎ねぇ☆」

洞窟内に響き渡る轟音。
うす暗闇の中で眼前に差し迫ってきたのは通路いっぱいまでありそうな特大の岩。
私達が居る下り坂を物凄い勢いで転がってくる。反射的に四人は一斉に駆けだした。

「ニャオッ、ニャオッ(そもそも、ラクトが怪しい線に引っ掛かるから悪いんだよっ)」
「ちょ、あんなとこに糸があるなんて私に分かるわけないじゃん! 幾ら生みの親でも想定外だってのっ」

びょんびょんと跳ねながら逃げるも、ラクトの逃げる速度が遅すぎるのでルビリアナに抱き上げられた。両手が使えなくなるので、こんな時の為にラクト用のナップサックを周到に準備していたらしい。赤い鞄の中におさまり、リオと口喧嘩していた。

「う~ん、逃げるのは性に合わないのよ…ね!」
「ル、ルビリアニャちゃん、何をする気にょ? 早く逃げないと…」
「ハァッ!!」

雪ウサギラクトを背おったまま、岩に立ち向かう。
上級魔族のルビリアナが、自身の腰に括りつけたメイスを目にも止まらぬ速さで岩を一点に突き出した。するとヒビが数か所入り、岩の速度も遅くなる。手応えを感じたルビリアナは素早く方向転換し、リオ達の元まで急いで進んだ。

「あともうちょっとじゃない☆ ほら、ガウラッ」
「そうだな、ラクト、リオを頼むっ!」
「え。もげっ! ぐるじぃにょ…」
「ニャオーー(ガウラァ!)」

ナップサックに入ったラクトを下敷きにして、リオを上から入れ込んだ。
赤い鞄からはみ出たリオに、頬を撫でて安心させてから岩の近くまで移動する。
腰には長剣、ズボンの太もも辺りのポケットには調理用の包丁とサバイバルナイフを二本、背中にはフライパンを装備したガウラ。サバイバルナイフを二本抜き、刀身に冷気を込めながらヒビの入った場所へ深く突き刺した。岩の威力にも負けず、主夫は真顔でこう告げる。

「オレの妻・リオに害なす奴は無機物でも許さない、砕けろ――ッ」
「ニャアァァーー!(まだ結婚してないよっ!)」

ナイフをつたい凍っていく岩。
全体が凍った後、岩は音を立ててパキンと細かく砕け散った。その瞬間、洞窟内は静まり返る。
戻ってきたガウラが満面の笑みでリオを抱き寄せながら、一同はさらに奥深く進む事にした。

***

「寝泊まり用のベッド…? ここは炭鉱用の洞窟だったのかなぁ」
「炭鉱用っていっても、さっきのトラップまがいは尋常ではなかったわ。侵入者を除外する為の仕掛けだと思うの」

ある一か所に来ると、ベッドやテーブルといった休憩所を見つけた。そこで四人は一息つく。
雪ウサギラクトはルビリアナの太ももの上に座り、リオとガウラも近くのベッドに腰掛けた。
そんなに古くはないらしい。ベッドのシーツはふかふかするし、食料棚には食べれそうな保存食が並べられている。
享楽に使うものだろうか、何枚ものカードが木製のテーブルの上に、乱雑に置かれていた。

「ニャ…?(ん?)」
「どうしたの、リオ」

頭にパラパラと土が落ちてきたらしい。リオは上下に頭を振り、それを見たガウラがほこりを取っていた。
崩れる心配は無いと願いたい。しかし振動が伝わってくるので、もしかすれば出口は近いかもと一同は休憩所を後にした。


←前に戻る  カオス文庫目次ページに戻る

  blogram投票ボタン

銅の門①

2011年06月18日 20時31分37秒 | 小説作業編集用カテゴリ


――ひょっこり猫島のラクト家にて――

「きええぇーー!」
「ぶふっ…! 凄い奇声だね、ラクトぉ~~」

腹を抱えて床にのたうち、転がり続ける白い猫のリオ。
金色の瞳からは涙がチョチョ切れ、口元はひきつき可愛さのカケラもない。
今日は一体どうしたのだと、両手を上下に振っている雪ウサギラクトに問いかけた。

「あー…最近冒険してないなと思ってね。つまんないから武芸でもしてた…」
「え、さっきの武芸だったの。てっきり肩叩きを極める為の動きかと思ってたのに」
「私の短い手と足じゃ肩叩きに見えるのか…ま、まぁ良いや、ところでリオ、この棍棒に見覚えは?」
「はわっ、こ、これは…!」

ジャンっと効果音でも付きそうな勢いで、雪ウサギラクトの丸い手に握られた物を見た。
違う世界で大活躍した生命の杖。頭部に女神らしき姿を象った、魔力が宿った杖。この杖がここにあると言う事は、もしやもしや…?

「私を誰だと思ってんの? これでもあんた達の(小説の)生みの親だからねー♪」
「ふ、ふーん。でもこれ持ってどうすんの?」
「ふっふっふ…、私も冒険したいと思ってこんなの用意してみました。にゃむにゃむ、わおっ」
「ぶふっ!」

ラクトの奇妙な呪文に笑いながら、その後静止した。なんと、三つの門がいつの間にか設置されてたからだ。
銅と銀に金の門――どの門も大きくて立派だ。しかも自分達よりも数百倍でかいのだから、ビビるしか他ない。

「嫌な予感がするんだけど! ラクトってば、また私をどっかに連れて行こうとしてない?」
「大丈夫、今回はガウラと私、ルビリアニャちゃんもメンバーとして連れてくからね!」
「ご、豪華メンバーだねぇ。でも大丈夫かなぁ」
「リオッ!!」

台所から慌ててやってきた守護獣ガウラ。
胸にハートマークを付けた白いエプロン姿は、既に主夫と化していた。
猫のリオを常に射止めて置きたいと強く願うあまり、最近は食べ物でも釣る様になったという。
食べ物がないと生物は生きられないのと同じように、リオにとってのガウラもそうであって欲しいと常々愚痴を零しているのを、耳にタコが出来るぐらい聞かされていた。

「今日も愛しいオレのリオ。この白い体がオレの目には眩い。その愛らしい姿で他のオスを誘わないように、オレがしっかり見張っておかないとな」
「ニャ、ニャに恥ずかしい事を言ってんの! もう、ガウラはいっつもこうなんだからぁ…」
「照れてるのか? そんなリオも可愛い…」

とろける様な眼差しを送り、猫のリオの喉をゴロゴロとさすり続ける事・約五分――バフォちゃんに抱き上げられた上級魔族のルビリアナお嬢さまがやって来た。クロウ家特有のダークゲートを使って、瞬時にテレポートしてきたようだ。床の魔法陣を消さぬまま、こちらに近づいてきた。

「こんにちは。リオちゃん、ガウラ、それにラクト☆ 」
「こ、こんにちは、ルビリアナさん…もげっ、ガッ、ガウラァ…」
「ふん、もっと遅くに来るものかと思ったが、今日は早かったんだな。特に期待はしていないが」
「ガウラ! お、おこんにちは、ルビリアニャちゃん。待ってたよ」
「うふふ、気にしないわ。以前の時と今の私も、性質はそんなに変わっていないもの――っと、今日はお招きありがとうね。さて、どの門にしましょうか。あ、バフォちゃん、また後で喚ぶかもしれないから、よろしくね♪」

猫のリオに頬ずりを止めぬまま、横目でチラ見して嫌味を吐くガウラ。
昔の凄惨な出来事を忘れちゃいまいとする態勢は、ひょっこり猫島に来てからも未だに崩さないらしい。それほどに彼の心を傷付けたのだから、生みの親としても心苦しくなった。

「…今日はラクトが楽しむ為の催しでしょ? 貴方達を裏切るような事はしないわ」
「オレは良い。リオを悲しませる様な事をしないと誓ってくれれば、今日の所は何も言わない」

今の時点では論議する事を止めたらしい。
疑惑に満ちた瞳を消して、ふやけた表情に戻したガウラは猫のリオに高速の頬ずりを再開していた。

「ニャ、ニャオー…ラクト、どの門に行くのか、早く決めてよ」
「そ、そうだね、じゃあ…銅の門に行ってみようか?」
「うふふ、どんな場所かしら。さあ、ラクト」
「うん! にゃむにゃむ、わおっ!」

銅の門が開かれる――
来たれ、勇気ある守人よ


←カオス文庫目次ページに戻る   ②に行く→

④ひょっこり猫で賽ノ河原編

2011年05月07日 09時34分27秒 | 小説作業編集用カテゴリ

「ラクトッ!」
「ル、ルビリアニャちゃん!」
 
漆黒の翼を広げて空中で佇む、上級魔族のルビリアナお嬢様。
今一番会いたかった自慢の娘。彼女が居れば百人力だ。

「行くわよ、地獄の業火で炒めた豆、とくと体で味わいなさい!」
「お、鬼は~外にょ!!」

ゴウッ!!

巨大なフライパンを振りかざして、鬼の周囲に勢いよく豆が落ちて行く。
顔や腕、背中に当たり、熱さと痛みに耐えきれずに鬼は棍棒を落としていた。
今の内だと雪江ちゃんと一緒に石を積み上げ、ルビリアナちゃんには雪江ちゃんが作っている石の山へ鬼が近づけない様にと豆をまいて貰った。そして遂に――

「わ、わぁ、出来たよ、初めて出来た!」
「良かったね。雪江ちゃん!」

石の山は綺麗に三角を形作り、最後まで完成させた。
すると、雪江ちゃんの体は白く光り始める。

「ラクトうさぎさんとお姉ちゃんのおかげだね。私、今度こそちゃんと眠れる…」
「ゆ、雪江ちゃん…」
「泣かないで。私は、うさぎさんとお姉ちゃんに会えて嬉しかったよ。本当だよ」

私と手を合わせた雪江ちゃんの手が透けて行く。
これで良かったんだ、だけど、涙が止まらない。

「あ、お父さんとお母さんだ!」
「にょ?」

和式寝まきを着た女の人と男の人だ。どちらもまだ若くして逝ったのだろうか。
二人とも頬笑みながらこちらへ会釈して、雪江ちゃんを黄金に輝く天へと導いた。

「……」
「ラクト?」
「私はひょっこり猫島では死ねない。そして上級魔族のルビリアニャちゃんやリオ、ガウラもどっちか言ったら長寿だよね。そう考えたら私は幸せなのかもしれないにょ」
「ふふっ、まだまだ退屈せずにはいられないってね☆」
「そうだね…さぁ、私たちも閻魔さんにこの豆を持ってひょっこり猫島に帰ろうか!」
「え、まだダメよ」
「にょ?」
「もうしばらくここに居て、成仏できない魂を救ってやって欲しいって。閻魔さまからの依頼よん☆」
「うーん、豆だけ閻魔さんに渡せば良いのでは? もしかしてそれもバイトに入ってるにょ?」
「時給500円…ゴホンッ、それと極上の調味料を数種類渡すって!」
「今500円って聞こえたけど、極上の調味料かぁ。ちょっと気になるにょ」
「ねっ、そうと決まれば行きましょうか、次なる魂の元へ――」
「もう、ルビリアニャちゃんはいつも強引なんだから」
「ふふっ、だからラクトって大好きよ」

永遠に続く地獄などない。
打ち震える孤独と闇に呑まれそうになりながらも、それでも必死で這いつくばれるのは…大切な誰かを想う気持ちが勝る時だ。生前の大切な記憶と、確かに愛されたあの瞬間だけは、宝石よりも光り輝くはずなのだから。


←前に戻る     カオス文庫目次ページに戻る 

③ひょっこり猫で賽ノ河原編

2011年05月07日 09時23分37秒 | 小説作業編集用カテゴリ

鬼の嫌いな物をルビリアナちゃんに作って貰ってるうちに、二回目に作った石の山は半分くらいまで積み上がった。
彼女が戻ってくるまでまだ時間が掛かるかもしれないので、休憩して雪江ちゃんと喋っていた。

「ね、雪江ちゃん、ここには長くいるのかな?」
「分からないよ、考えた事もなかったかな」
「そ、そう。ケーキとか食べた事ある? 三角形の形をして甘くて美味しいの」
「? さつまいもなら、ほんの少し食べさせてもらえたかなぁ」

地獄には時間の概念が無いのか、その事に触れられても分からないらしい。現実世界で換算するともしかすれば五十年、百年は経っていてもおかしくないのだ。
気の遠くなるような悠久の中、この子は石を積み続けていた。そう思うと胸の奥から虚しさ・切なさが込み上げて来て、この子の前で涙だけは流すまいと必死に笑顔を繕った。

「…、あー、雪江ちゃんに猫島にあるヤシの実のジュースとか、特製のジャンボケーキとか食べさせたいなぁ」
「じゅーす? けえき? うさぎさんのいる所って面白そうね。良いなぁ、あたしもそんな所に行ってみたかった…」
「ひょっこり猫島は、雪江ちゃんみたいな可愛い子を歓迎するにょ!」
「えへへ、ありがとううさぎさん」
「私の名前はラクトっていうにょ。出来れば名前、覚えてね」
「うん、分かった。ラクトうさぎさん」

胸に抱き込まれ、しばし互いの抱擁にひと時のあたたかさを感じる。
この子の本当の幸せは、ここにはなくて別の世界にある。早くここから連れ出さねば!

***

「あとちょっとだね…」
「でもこれ以上積み上げるとさっきの鬼が来ちゃうにょ…あっ!」

ズシン…ズシン…
地面とお腹に深く響くような地響きを感じた。
さっきよりもまだ完成に近づいてないのに石の山を崩されたら、また一からやり直さなければならない。
この河原にある石は丸い形に近いモノが多くて、土台を作るにも一苦労する。崩されたら同じ石を探すのは至難の技な上に、幾らなんでも時間が掛かり過ぎてしまう。だから成仏出来ない魂が増えて行くんだ。

「き、来たにょ…」
「うさぎさん、怖いよぉー」
「雪江ちゃんは石を積み上げてて! こっちは私が何とかするにょ!」

巨鬼(キョキ)ではなかろうか。正直、顔も怖すぎて直視出来ない。それでも棍棒を振り回されて、石の山を崩されるのを指をくわえて見ていろとでも言うのか…否、それだけは阻止しないと!

「お、鬼さん、あんたの相手はこっちにょ!」

すると棍棒がこちら目掛けて振り下ろされた。
当てるつもりはないのか、今のは完全に大きくはずされたようだ。もしかして威嚇された?

「あんたの時代は終わったにょ。もう多くの魂を解放して! 閻魔さんの依頼なんだから――!」

ゴッ!

今度は地面を叩き割るような攻撃を仕掛けてきた。小さな石が粉々に粉砕されている。
危なかった――もう少し横へずれてなかったら、私は潰れたカエルの様になっていただろう。

「ラクトカエルなんて嫌にょ…あっ!」
「あ、あ…」

私から対象を変えた鬼は、雪江ちゃんが積み上げている石の山。また非情な行いは繰り返されるのか。後少しで石の山は完成するのに!

「止めて――!!」
「ラクトッ!」

頭突きでも繰り出そうと体を前に出した時、頭上から女の子の声がした。バイトだと言って私を賽ノ河原に連れて来た張本人、上級魔族のルビリアナお嬢様だった。


←前に戻る  カオス文庫目次ページに戻る  ④に行く→