PRESSMAN GOGO

オートバイスポーツ、トライアルを中心にディレクター生野涼介が日々の気がついた事、取材した時の思いなど、日常のブログです。

2016年全日本トライアル 第7戦東北大会

2016-11-03 18:41:26 | 日々の事
2016年全日本トライアルシリーズ。ランキングトップの小川友幸選手は、この試合で6位以下におちなければタイトル確定です。
IASチャンピオンが事実上決まった状態で迎えた最終戦、選手たちには笑顔があふれ、会場にはなごやかな空気が流れます。

ランキング6位を賭けて田中善弘選手を追い詰める野本佳章選手も、パドック前でお昼寝の余裕です。


この最終戦東北大会、昨年は野崎史高選手、その前は黒山健一選手が優勝。
今年のタイトルをほぼ手にしている小川友幸選手は、2年続けて優勝出来ていないのです。

選手にとって最終戦で負けるということは、その悔しさを来年春まで引きずるということ。
明るく楽しいオフシーズンのためにも、友幸選手は「なんとしても勝ってチャンピオンを決めたい」と意気込みます。


逆にタイトル奪還ができなかった黒山健一選手は、ここで勝てば来年への大きなジャンプ台になるというわけです。
前戦でデビューウィンを飾った新型マシンはさらに進化したそう。

今回は中部にはなかったスペアマシンまで用意。

どちらもまだまだ手作り感が残りますが、万全の体制で2連勝を狙います。


そしてここSUGOではめっぽう強く、得意会場に自信を持っている野崎史高選手。
今年は「ドラゴンボール」の界王神のような髪型で、狙うは当然テッペンです。


またしても3人が激突する最終戦は、ドラゴンボールの「神と神」の上を行く「神と神と神」という展開を見せました。

昨年の東北大会は3ラップが終わった時点で、この3人が合計減点1点で並ぶという大接戦でした。
これを反省したのか、今年のセクションは少し難し目。
基本設定は昨年と同じなのですが、長くしたりステアへの角度を変えたりなどの手法で、ひとつ以上のひねりが加えられています。
たとえば第3セクションのこのコンクリートブロックには、この角度から飛びつかなければなりません。


加賀国光選手


砂田真彦選手


藤原慎也選手


野本佳章選手


氏川湧雅選手


結果選手たちの減点は確かに昨年よりは多くなりました。
Top3はその第3はクリーンするものの、友幸選手は第7セクションで転落。

それでも1ラップ目は合計6点で1位です。

対する黒山選手も6点で並び、野崎選手も合計9点で2人を射程圏内に収めます。




2ラップ目に入ると、友幸選手が第3セクションで5点。

手首を痛めしばらく立ち上がれないほどの転倒をしてしまいます。


ここをクリーンした黒山選手と野崎選手は友幸選手を逆転しますが、黒山選手はすぐとなりの第4で失敗。


野崎選手も第7セクションでマーカーを飛ばしてしまいます。


3ラップ目は第7を1点で抜けた友幸、野崎選手に対し、今度は黒山選手は5点。


この結果、3ラップが終わった段階で、
 1位:小川友幸(減点13)
 2位:野崎史高(減点15)
 3位:黒山健一(減点17)
と差は2点ずつ。
勝負はふたつのスペシャルセクションにもつれ込みます。
※実は野崎選手はこの他に1ラップ目のタイムペナルティー3点があるのですが、これについては後述します。

SSの第1はこの巨大タイヤ。

晴れていたとはいえ地面から染み出す水分で、タイヤは猛烈にスリッピー。
アウトの巨大タイヤまで行きつけなかったり、最後で落ちる選手が続出します。

加賀国光選手


岡村将敏選手


氏川湧雅選手


小川毅士選手


優勝をかけたトライに最初に入った野崎選手。手前はクリーンで巨大タイヤに挑みます。
ここは先に走った野本佳章選手、田中善弘選手、柴田暁選手が3点で抜けていて、足をついてマシンを引き上げれば脱出が可能。
ただ野崎選手は逆転優勝のためには足を着けなかったのでしょう、クリーンを狙いすぎてついにここで落下してしまいます。


続く黒山選手は、2点でアウト。


これで友幸選手はクリーンを狙わないと危ない状況に追い込まれます。
その結果がこちら。


SS第1が終わって
 1位:小川友幸(減点18)
 2位:黒山健一(減点19)
 3位:野崎史高(減点20)+TP3
友幸選手は厳しい表情で、勝負はいよいよ最後のSS第2です。


ここは第4セクションの改造で、入り口すぐのヒルクライムが超難題。

岡村将敏選手


加賀国光選手


柴田暁選手


多くの選手が失敗しますが、ここさえ越えればあとはそれほどでもなく、斎藤晶夫選手、吉良祐哉選手はクリーンしています。
そして野崎選手、黒山選手も0点でアウト。




Top3にとってはきっとそれほど難しくはないのだろう、このままゼッケン番号の順位で試合終了かな?と思った瞬間でした。
最後に入った友幸選手が失敗してしまったのです。


友幸選手らしくない失敗でしたが、実は試合当日の朝左腕に水がたまって腫れ上がり、出走できるのか不安になるほどだったとか。
もしかしたらその影響が最後に出てしまったのかもしれません。


今シーズン最後の試合の最後のセクションの最後のライダーでの大逆転。
この結果
 優勝:黒山健一(減点19 c20)
 2位:野崎史高(減点20+TP3=23 c20)
 3位:小川友幸(減点23 c19)
という劇的な結末となったのです。

突然の優勝に自分でもびっくりの黒山選手。

SS第2からパドックに戻る途中、多くの人から祝福を受け、ハグを繰り返します。
その中で、新型マシンに2連勝をもらった開発者木村治男さん。確かに目には涙が・・・

黒山選手はパドックに戻っても、今度は友幸選手とハグをしていました。




2016年全日本トライアル最終戦は、選手たちの健闘を祝福するような赤い夕陽のもとで幕をおろしました。


優勝 黒山健一 減点19 c20
2位 野崎史高 23 c20
3位 小川友幸 23 c19
4位 小川毅士 34 c14
5位 柴田 暁 53 c9
6位 田中善弘 55 c8
7位 斎藤晶夫 57 c3
8位 加賀国光 59 c9
9位 野本佳章 63 c8
10位 成田 亮 71 c7
11位 吉良祐哉 79 c7
12位 藤原慎也 81c6
13位 氏川湧雅 82 c3
14位 岡村将敏 83 c4
15位 武井誠也 91 c5
16位 砂田真彦 95 c4

ところで、野崎選手のタイムペナルティー問題。事件は1ラップ目の第4セクションで起きました。
IASの最後に入った野崎選手は、ヒルクライムの途中で一旦止まる作戦。
この時後輪がテープに接触します。

このテープ、はじめからかなりゆるく張られていて、ここで止まるラインの選手の多くは同じようにテープに接触してから再スタートしていました。
ところが野崎選手にだけ5点の笛。判定を下したのは、この大会では「競技総監督」の肩書を持つMFJ東北の畑山和裕さんです。

「あのテープはマーカーのようなものなので、膨らんでも接触しても5点」というのが、その判断基準です。
野崎選手は「テープはマーカーのようなものではなく、テープですよね」「テープは最初から膨らんでいました」「テープは接触しても伸ばしても、切れない限り問題ないんじゃないですか」「他の選手はOKだったのに、なぜ判断基準が違うのでしょうか」との質問をします。
現場のオブザーバーは「後輪は出ていない」との証言。野崎選手は「審判は5点ではないと言っているのに、オブザーバーではない畑山さんがなぜ5点と言うのですか」とも。


この部分だけでおよそ3分がかかっています。さらに判定は「オブザーバーだけで協議します」と野崎選手を待たせ、審判側に引き取られました。
結果5点の判定は1点に変わりましたが、野崎選手にとってはおそらくここで5分以上のタイムロスがあったと思われます。
野崎選手には1ラップ目、3点のタイムペナルティーが加算されています。
もしこれがなくても総合減点では黒山選手には追いつけませんが、特に今回のような神経戦では1点をめぐる駆け引き、作戦によって試合結果が変わってくるのは当然の事。たとえばSS第1で、野崎選手はあえて1点をついて5点を避ける方法も可能になったはずです。
個人的には今大会の優勝は野崎選手であったかもしれない、と思います。

もうひとつ。
SSの第1に最初に入った武井誠也選手は、最初のタイヤから飛び降りた時、おそらく左肩を脱臼してしまったと思われます。



パンチを受けると直ちにセクション横に来た救急車で運ばれ、SS第2は走っていません。

ところがリザルトを見ると武井選手の最終セクションは5点となっており、リタイア扱いではありません。

しかしSS第1から救急車で運ばれた武井選手が、自分で戻ってきて申告5点のパンチを受けゴールする事が可能だったのでしょうか。
ルールにはSSは「指定された順番にイン出来ない場合は、減点10点になります」とあります。
もし武井選手のSS2が10点だとすると、砂田選手は最下位を免れることができた計算です。
あるいは救急車に乗り込んだ武井選手が病院よりも先にSS2に行って、申告5点のパンチを受けたのかもしれません。
通常のセクションの場合選手本人とマシン揃っていないと申告5点は認められないはずですが、SSの場合はどうなのでしょう。
またその場合、他の選手がSS1をトライ中、すなわちSS2がオープンされる前に申告5点が行われたことになります。
果たして試合が始まる前にパンチを受けることは、可能なのでしょうか。

今回は当日券で入場した場合、駐車料金も含めると1人4000円以上も必要となる、全日本トライアルとしてはかなり高額な出費を強いられる大会でした。
会場ではSSに限らず解説者がマイクを持って各セクションを回っていたのですが、ほぼ全観客が目撃した異常な転倒で多くの人が心配する武井選手に関する情報は皆無。
大会運営者や解説者が救急車で運ばれた選手に対して、何の心配や関心が無かったと思いたくはありません。
もう少し観客に、必要なことをきちんと伝える情報サービスがあっても良かったのではないかと思います。
選手たちのパフォーマンスはまさに感動ものだっただけに、大会運営にすっきりしないところが残ったのが非常に残念でした。

2016年のランキングは
チャンピオン 小川友幸 129
2位 黒山健一 124
3位 野崎史高 111
4位 小川毅士 91
5位 柴田 暁 75
6位 田中善弘 67 野本選手に6位に迫られていた善弘選手、逃げ切りました。
7位 野本佳章 62
8位 斎藤晶夫 45 同ポイントながら、最後に加賀選手を逆転です。
9位 加賀国光 45
10位 吉良祐哉 28
11位 成田 亮 14
12位 岡村将敏 8
13位 藤原慎也 7
14位 砂田真彦 6
※氏川湧雅選手、武井誠也選手はノーポイントでした。

東北の太陽があっという間に沈んでからの、小川友幸選手タイトル獲得を祝う恒例のバイク胴上げ。

今年は他に国際B級で氏川政哉選手、国際A級では久岡孝二選手がチャンピオンを獲得し、TeamMitaniはなんと全クラスを制覇です。
おかげでバイクの担ぎ手が足りなくてちょっと苦労しましたが、それでも3台いっぺんのバイク胴上げで華やかにシーズンを締めくくりました。
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