四駒笑劇漫画

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『影武者』石田一著 光文社「伯爵の血族 紅ノ章」より

2007年05月13日 | 読切エッセイ
久々にブログ更新。
忙しいのはいいが、少しは余裕が欲しい毎日。
小説を買いましたので、ご報告を!

『影武者』石田一著 光文社「伯爵の血族 紅ノ章」より

痩せた男―――とは言っても、高い知性を示す広い顔を備えた顔こそ骨張ってはいるものの、その胸板は厚く、体格そのものは決してひ弱な印象はない。

冒頭、この文章を読んで、私は叫んだ

カッシングだ!ピ-ター・カッシングだ!

(短編小説なので、あまりストーリーに触れると営業妨害になりそうなので、細部はこれ以上、触れない様にするつもりです)

著者である石田一先生が普段、カッシングの事を語る時、いつもそうおっしゃってた…。
だから、私には名前が明記されてなくてもカッシングだと確信した。
むしろ、小説から石田先生の声が聞こえてくるようだった。
さらに、読み進めて行くと…
登場人物はハマー・プロダクション制作の「吸血鬼ドラキュラ」を観ている…そう感じた。
私の脳裏には映写機の音まで伝わって来た…

私にはこの小説の前半に出てくる映写室、ソファーやテーブル、色や形まで小説を読まなくても理解出来た。
私がよく見た風景だ。
これは著者の住む部屋にそっくりだ!
これは石田一先生本人の物語なのか?
そう思う程だった。

しかし、先日、著者に喫茶店でこの件を、直接、聞いた処、それらは関係者や読者を巻き込む『罠』だったと確信した。
つまり、後半で書かれている事、同様全てが幻想であり、事実なのだ。
そして、それは小説の外でも、まだ続いている事になる。
私は永遠にパラノイア・ワールドから抜け出せない事になる…

小説は二部構成になっている。
制作時から聞いていたのだが、実は、二つの小説だったのだ!
諸事情で一つになったものなのだが…
そう言われると、別々の小説が無理矢理掲載されているように想像する人もいるかもしれないが、実際に読むとそうではない。
それはある一つのテーマがそうさせる。
そう!!『ドラキュラ』、その人である。
読んだ人の中には、短編である事より、長編にして欲しかったと、感じた人も多かったのはではなかろうか?
そうすれば、更なる多くのエピソードが読めたのに!
そんな吸血鬼ファンの心とは裏腹に短編小説になっている。
しかし、そこは石田一先生、上手くまとまり、充分、短編でも納得のいく内容になっている。
しかも、二度得した気分になるか、二回罠にかかるかは、読む人次第だ。

また、ドラキュラの解説が小説の中に散りばめられ、他の小説とはその点からも差が出ている。
これは石田先生の長年の研究の一部に過ぎないが、小説を読みながら、自然に知識として手に入るので嬉しい。
さらに、内容は(ここでは詳しく書けないが・・・)さらに興味深い。
むしろ、新しいドラキュラの物語かと思いきや、実は伝説誕生の秘話だったりもする。
おっと、書きすぎたかも…

とにかく、吸血鬼信仰者だけなくホラーファンなら、手を上に挙げて拍手喝采するのは間違い。
また、そうでない人もニヤリとほくそ笑むだろう。
そんな傑作小説なのだが、残念な事に売り切れ店が続出しているようだ。
私はもう二冊買おうと思い、本屋を探しまわったが、一向に見つからない。
本と云うのは初回は配本制なのだが、一旦売り切れると本屋の亭主がよっぽど気に入らないと仕入れない。
出来る事なら、書店経営者の皆さんは追加注文を…

そして最後に私個人的意見として聞いて頂ければ、幸いだ。
これは石田一先生の小説の中では最高傑作だ!…と思ってます。
ただ、著者の全部の小説を読んだ訳ではないので、今後、意見が変わる可能性もあります…

※写真は私が撮影したものです。ちなみにあのフィギュアは映画「ヴァン・ヘルシング」の吸血鬼らしい…あまり似てない


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