四駒笑劇漫画

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妖婆・死棺の呪い ゴーゴリって人知ってる?

2007年05月30日 | 誰も知らないZ級映画評
妖婆・死棺の呪い(1967)

ВИЙ
魔女伝説・ヴィー(ビデオ)
メディア 映画
上映時間78分
製作国ソ連

原作:ニコライ・ゴーゴリ
出演:レオニード・クラヴレフ/ナターリヤ・ワルレイ

『ドラキュラ対フランケンシュタイン』と同じく、大昔の録画、TV吹替え版で鑑賞したので、あっちこっち穴だらけのストーリーに感じましたが、編集のせいかもしれません。

原作はあのロシアの文豪ゴーゴリだそうです。
あのドストエフスキーに「我々は皆ゴーゴリから出た」と言わしめた、巨匠ですので、一度は・・・・スイマセン。
私は岩波文庫は年に一度ぐらいしか読みませんし、ゴーゴリは呼んだ記憶さえありません。
勉強不足もいい処です。
ドストエフスキー「罪と罰」ぐらいならあります。

そんな文学的センスが私には通用しないせいか、何の話かよく判りませんでした。

ちなみに本作と同じ『ヴィー』を原作にバーバラ・スティール主演がした「血ぬられた墓標」(1960)はマリオ・バーヴァ監督の作品でこちらの数倍、痛いシーンや残酷シーンがあるそうですが、私は観た事がないので、なんとも言えません。
ただ、両者共にやはりファンの間では伝説のカルト・ホラーだと云う事です。



神学生の青年ホマーは今日から楽しい夏休み。
古都キエフのブラッキー修道院では神学生たち賛美歌を唄い、しばらく修道院を後にします。
日本では神学生というと「アナタハ神ヲ信ジマスカ?」と話かけれた外人さんを思い出すと思いますが、映画を観る限りでは、結構、自由奔放にしているようで、酒を隠し飲み、女を見ればナンパする頭の弱い学生さんの様な感じです。
とにかくホマーはそんな神学生の中でも孤児で真面目な方という感じです。

ホマーと仲間二人は故郷に向かう途中、道に迷い、途方に暮れます。
老婆の住む小屋を発見し、泊めてくれる様に頼み込みます。
老婆は一人ずつ別々の所で寝るならいいよ。
・・・と云う事で承諾。
多分、若い男三人なので用心の為かな?と思い、承諾する。



その夜、馬小屋のような所で眠る事になったホマーの前に先程の老婆が現れ、彼を魔法にかけ、馬のようにまたがり空高く飛んで行ってしまいます。
魔女だと気づいたホマーはなんとか着地したかと思うと、その魔女を殴り、虫の息にします。
すると、どうでしょう。
今まで魔女だった老婆の姿から美少女になります。
恐ろしさのあまりホマーはその場を逃げ出し、ブラッキー修道院に戻ります。

戻ったホマーを待ち受けていたのは、地主に命令され、ホマーを迎えに来たコサックの村人でした。
ホマーに、先日亡くなった地主の娘の葬式を挙げさせる為でした。
理由も判らず、顔も知らない娘の為に祈祷など出来ないと断りますが、お金と権力を持つ地主はホマーを半ば強引に連れて来させます。

そしてに着くや否や「三日三晩、娘の為に祈祷すれば、好きな物を与える」とホマーに云います。
祈祷をホマーに頼んだ理由は亡くなる寸前の娘の遺言だとか…
祈祷を断れば、殺すと脅され、ホマーは仕方なく祈祷を始めます。



しかし、その死んだ娘はもちろん、見覚えのある顔です。
あの魔女、美女少女だったのです。
そして、その晩から魔女の復讐が始まります。
なんとかホマーを地獄に導こうと襲いかかります。
ホマーは礼拝堂から逃げようとしますが、外から鍵がかけられ逃げられません。
とっさに円を書き、聖域を作り、その中で聖書を読む事でその晩は何とか難を逃れます。



2日目の晩は魔女もパワーアップし、棺桶を宙に浮かし、聖域の見えない壁にぶつけてきます。
ホマーは今にも失神しそうになりますが、神を信じ聖書を唱え続けます。
その晩もなんとか助かります。

流石に最後の晩は魔女に呪いに勝てないと感じたホマーはを逃げ出しますが、村人に捕まります。
村人は娘が生前、魔女だった事を知っていたようで、ホマーの様に馬のりされ、飛んで行った若者の話を聞かせてくれます。
つまり、礼拝堂で起っている事も把握しているのでしょう。
しかし地主の命令には村人は逆らえない様です。



いよいよ最後の晩、娘は地獄から悪魔を呼び、最後には何でも見通す悪魔ヴィーを呼び、ホマーに襲いかかります。
翌朝、村人が目にしたのは…変わり果てた娘の姿でした。
彼女は老婆の姿に変わり果て死んでいたのです。
ホマーは魔女に勝ったのです。
しかし、その代償は彼の命でした。

と、まあこんな感じですが、実際の演出はやたら明るくコミカルなので然程、全体的には重苦しくはないようです。
しかし、棺桶が宙に飛ぶシーンの力強さは見事でそのスピード感は当時のロシア映画の技術力を物語っています。
更に、この映画のラストの悪魔の総出演シーンは圧巻です。
目が6つに鼻が4つの怪物や、壁から湧き出る腕、壁を這い回る悪魔達、目が蓋のような物で覆われているヴィー等々、それは強烈です。
全体の色もハマー・ホラーを真似た様な色使いで非常にいい雰囲気です。
美女少女を演じたナターリヤ・ワルレイの可愛らしい事。
リア・ディゾンより妖艶でセクシーなのにキュートな瞳にホマーでなくても勝てそうにありません。

ただ、全体的には矛盾も多く、勝手に想像して上のあらすじを書きました。
それでも判らない部分が多数有り、中でも…
地主の娘が何故、魔女だったのか?
あるいはいつから魔女とすり替わったのか?
あるいは地主は理由があって、魔女を生み育てたのか?
原作では別人と表記してあるとか…(さらにわからん)
永遠の謎です。



原作を読めば、分るのかもしれません。
少々、テンポが遅く苛つくシーンもありますが、全体としてみれば、楽しめました。
ただ、近代映画に慣れている若い人は耐えきれないかもしれません。
そんな、作品です。

水木しげる先生が貸本屋時代にこの映画と良く似た漫画を描いた事から、『パクった』『贋作だ』等という書き込みをネット等にするバカ者、否、若者がいますが、元々ストーリーはパブリックドメインなので問題無し。
ドストエフスキーも影響を受けたとハッキリ言ってるぐらいです。
妖怪も、普通に書けば、大体あんな感じになるでしょう。
その前に、あの悪魔の造形自体、映画のオリジナルと云うより、あらゆる書物の引用ですので問題無し。
若者よ、人の批判をする間にもう少し下調べ給え!----と、自分にも言い聞かせる今日この頃。


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2 コメント

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Unknown (X^2)
2007-08-01 22:09:49
ゴーゴリの作品で日本で一番有名なのは、恐らく「外套」と「鼻」そして「死せる魂」かと思います。前の二つは中篇の怪奇というか幻想小説で、「死せる魂」は未完ながらロシア文学の最高傑作のひとつと言われています。「ヴィー」は確か怪奇小説集に入っているのを読んだのですが、原作では飛行している最中にホマが呪文を唱えて逆に魔女に馬乗りになって鞭を当て、最後は殴り殺すという展開だったと覚えています。魔女と娘との関係はどうだったか、はっきりとは書いていなかった記憶が。
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味わい深い怪奇映画 (安川ひろかず)
2017-03-20 08:56:05
こんにちは、『妖婆・死棺の呪い』、よくぞ取り上げて下さいました。タイトルを初めて目にしたのは中学校の頃に買っていた『ロードショー』。「関東のローカル局ってB級ホラーやってて羨ましい、見たい」とずっと思ってました。大人になってBSで初めて見て、「あ、ゴーゴリの『妖女(ヴィイー)』」なんだ」と大喜びしました。中学時代に原作を、創元社推理文庫「怪奇小説傑作集」で読んでいたのです。映画は原作の牧歌的な味わいを佳く再現しているなと感じました。特撮は正直大したこたは無いのですが、そこを様々な表現力で面白く見せてくれてます。特に後半は舞台劇の味わいも。娘役の女優が本当に美しい!そして原作より怪物のヴィイーが小さくて、ここはちょっと拍子抜けの笑いが。この作品のDVDを購入し、家族で一・二年に一回ほどのペースで鑑賞しています。日本で言うとやはり水木しげる先生の作風に通じる物がありますね。たまにはこんな映画を観て、心を和ませるのもよいかと思います。
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