四駒笑劇漫画

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文字が書けない・・・。

2005年04月15日 | 読切エッセイ
イラストは下のエッセイとは関係ありません。

■文字が書けない・・・。

 昔、ニフティのパソコン通信っていうのがあって、これは今の掲示板やチャットみたいなもので、一時このパソコン通信って奴の為に、高額の支払いをしてくだらない話をダラダラしていた時期があった。あと、有線放送の音声チャットって言うのもあったが、流石にこれは恥ずかしくて参加できなった。
現在ではBBSやCHATはインターネットの世界では常識で全てのPCで当然のようにできるようになったし、高額の支払いの請求もないし、名前や顔を明かさなくても参加できる完全匿名性にもなった。良い事尽くめように思うが、そうでもない。特に匿名性が高いのは非常に問題である。
ある日、BBSに「今時、文字が読めない奴がいるのか?」と記載してあった。次のコメントでは「そんな奴は●×◎です」。もちろん酷い差別用語だった。確かに、現代社会では文字が読め、一定の教育を受けている事が前提で事が始まる。
しかし、僕の知っている人は文字があまり書けない。なぜ?なぜ、その人は義務教育を受けてないんだ?きっとBBSに書き込んでる連中は馬鹿にしたように聞くだろう・・・・。

『戦後、日本は酷い状況だった』と政治家は言う。しかし、本当に酷い状況だったのは当時の子供だったのかもしれない。ノートや鉛筆はなく、靴さえはいていない児童はたくさんいたらしい。
僕の母はそんな貧乏な児童の一人で生きる為に子守りの仕事をしながら学校に行ってたらしい。しかし、小学校も高学年になる前に家の事情で学校を辞め、いろんな処に住みこみで働かされたと言う事らしい。「『おしん』を見て泣くのは自分の子供の頃を思い出すからだ」と、口癖のように言っていたのを覚えている。
母は学歴がないだけではなく、大した教育を受けていない事もあり、水商売や屋台の仕事を手伝って生計をたてていた。これらの仕事なら学歴が必要とされないからだ。父と結婚してからも、子供のようにすぐ仕事を辞めて失業してくる父の代わりに、目一杯、働いていた。
しかし、ある日、泣きながら帰って来た。母が泣くのを見たのは初めてだったので、少々驚いた。母が言うには同じパート仲間にある文字が読めない事を笑われたのが悔しかったらしい。母はその日の晩から、みんなが寝静まったのを見計らって、小学生用のノートに文字を書いて、漢字の練習をする事にしたらしい。そんな、母をこっそり見ていた僕は胸を鷲掴みにされたような気分になった。普段なら『夜にコソコソ何をやってるんだ、まぶしいなぁ』とエラそうな事をいうが・・・。その日は何も言わずにソウッと寝た。

僕が成人になり、家を出て、既に20年近くになる。しかし、今でもあのノートの事を思い出すと胸の当たりに何かつまったようにギュッとなる。
それは当時の僕のどこかに文字を読めない人や一定の教育レベルに達していない人に対する差別や偏見があったからだろう。それは人としてとても愚かな事だと、母に教えられたような気がする。


明日はZ級シネマ・エッセイです。

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