愛媛の旅 朝っぱらから内子を歩く

フェリーで東予港に着き、壬生川から特急しおかぜに乗った。港から今治や松山まで行って
くれるバスもあったのにあえて壬生川から乗ったのは、ＪＲ乗り放題のバースディきっぷ
だからというだけではなく、四国の旅を小さなローカル駅から始めたかったから。

まず降り立ったのは、内陸の山間部のちいさなまち、内子。
ここは江戸～明治時代に木ろうの生産で大変栄えたところであり、それにより財を成した
一族を中心に豊かな暮らしの跡が今もまちなみに残る。

内子座は１世紀近い歴史を誇る木造の芝居小屋。
メイン通りから横町に入り、さらにもう一度折れた小さな袋小路に、小屋は面している。
この隠れるようなロケーションは意外。動物園前の商店街の脇で見た大衆演劇場を思い出した。
先日行った京都の南座などは四条通に堂々と面しているのに、庶民向けの施設だからなのか？

内部は中央部に枡形に仕切られた平席、左右と後の三方には二階席もあり立派である。
先日南座を見たのはとてもためになった。
奈落ももちろん見たが、これは近年改修したものらしい。



町家と思えないほど贅沢な、吉祥モチーフをちりばめた本芳我家のファサード。まちなかには
分家であろう上芳我、中芳我、下芳我、もあり、本家には及ばないがそれぞれ立派な建物である。




端まで行ったらぐるっと回って裏の道を歩いて戻ろう。
こちら側は比較的新しい住宅に日常的な飲食店や商店が混じる、ありふれた街なみであるが、
たまにこんなモルタル塗りの元医院なども。


マキの木が門の上に立派な枝を伸ばす。


おや？家々の間からちらりと見えたあの尖塔は何？


こんなレトロな洋服屋のある路地を入ってみると、、、


うわっ！なんじゃこりゃ！？映画のセットか！？ただものじゃないぞ。
しかし駅で取ってきたマップを見ても何の記載もない。


スカイラインを段々に切り取るファサードはゆるやかな曲面。中央部に突き出した台形の
バルコニー（？）とひさし。軒裏の板を苦心して張ったことが窺える。そしててっぺんには
さっき見えた尖塔が。そのヘンテコで不思議な造形にしばし見とれ、うなり、歩き回る。


打ち捨てられお酒のケースなどが置いてあるが、券売所のような部分があるところを見ると
劇場だったのだろうか。ペンキで塗り分けられた壁も俗っぽさを感じさせる。
近所のおっちゃんに聞いてみたところ、これは映画館だったようだ。


細い路地どうしの辻に建つこの建物のロケーションもまた内子座と共通している。
庶民の楽しみの場であった二つの興業場、一方はきれいに整備されて観光客が次々と訪れる
伝建地区の目玉施設に。もう一方は路地裏で朽ちゆくままに放置されている。皮肉なものだ。

こんな建物もあった。明治１２年に旧化育小学校として建てられ、郵便局、農協などいろんな
用途に使われ、現在は改築され児童館として使われている。内子の教育発祥地だ。


児童館と並ぶこちらの建物は昭和１１年築の元内子警察署。入口上に「町立図書館」とあるが
新しい図書館ができているのでここはもう使われていないのかもしれない。
しかしここもマップに載っていないのはなぜだろう。


小さなまちなのにさらっと回っただけでも２時間かかった。しょっぱなからこのペースだと
今日どこまで見れるだろう。。。心配になってきた。

続く。