経済なんでも研究会

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危うし! 日本の自動車産業 (Ⅱ)

2024-01-24 07:42:02 | 自動車
◇ 中国政府は「EVの世界制覇」を画策 = 中国自動車工業協会の発表によると、23年の新車販売台数は3009万4000台。前年比12%の増加だった。そのうちEVは668万5000台、前年比では24.6%も伸びている。ただ国内ではEVメーカーが乱立、競争が激しい。また不動産不況で景気は悪い。このため多くのEVメーカーが、本格的に海外市場の開拓に乗り出している。その一例がタイ。広州汽車集団など10社が、一挙に進出した。

この結果、タイの自動車販売に占めるEVの比率が急上昇。昨年11月で14.3%と、前年の5.9倍に増大している。タイは日本車の牙城。トヨタが販売台数全体の35%を抑えて第1位だが、EVについては中国車が9割を占める。日系メーカー全体でみると、昨年10月の販売シェアは75%だったが、前年比では8ポイント低下した。またEVのシェアは1%にも満たない。中国メーカーはこのタイを拠点に、東南アジア各国へ進出する計画だ。

中国製のEVは自動運転や人工知能の点では、まだテスラの水準に及ばない。しかしデザインの斬新性や機能性については、高い評価を得ている。そして何よりも強みなのが、価格の圧倒的な安さだ。たとえば同程度の機種で比べると、BYDはテスラの半分以下である。BYDはもともと電機メーカーだったから、車載電池は自社製。だから部品のうち最も高い電池を安く入手できる。これが大きい。

もう1つは、政府による手厚い支援。低利融資・資本注入・購入者への補助金・政府の買い付け・・・。その金額は不明だが、EV販売額の3分の1になるという試算もある。中国政府はガソリン車時代にも自動車産業の振興を図ったが、欧米や日本の製品には敵わなかった。そこへEV時代の到来。こんどこそは「EVで世界を制覇しよう」と目論んでいるわけ。今月11日にも「新車販売に占めるEVの割合を、27年までに45%へ引き上げる」と発表した。

                      (続きは明日)

        ≪23日の日経平均 = 下げ -29.38円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ

危うし! 日本の自動車産業 (Ⅰ)

2024-01-23 06:43:42 | 自動車
◇ 輸出台数では中国に抜かれる = 中国自動車工業協会が発表した23年の自動車生産台数は3011万台、前年比11.6%の増加。販売台数は3009万台、12.0%の増加だった。中国はいま不動産不況で悩んでいるが、自動車産業だけは順調に発展している。また輸出台数も491万台、前年比57.9%と大きく伸びた。中国の自動車輸出は20年時点で100万台にすぎなかったが、この3年間で5倍近くに増大したわけである。

日本自動車工業会が発表した23年の自動車販売台数は477万9080台で、前年比14%の増加だった。前年は半導体不足で供給不足だったことの反動が大きい。このうちEVは8万8535台で、前年比50%の増加。うち輸入車は2万2848台だった。一方、輸出は399万台だったから、中国に及ばない。日本は17年以来ずっと輸出台数で世界一を続けてきたが、昨年は中国に首位の座を譲ったことになる。

中国の自動車輸出先は、ロシアとメキシコ、それにヨーロッパと東南アジアに集中している。ロシアはウクライナ戦争の影響で欧米各国が現地生産を取りやめた後を埋める形。メキシコはアメリカ市場をにらんだ進出である。またヨーロッパと東南アジア向けはEV(電気自動車)が中心。ヨーロッパは脱炭素に熱心な点を考慮、東南アジアはガソリン車が中心の日本を意識した戦略である。

中国の自動車産業で目立つのは、EVメーカーの急速な成長である。なかでも目覚ましい発展を遂げたのが、BYD(比亜迪)だ。EVと言えば、アメリカのテスラがずっと世界一の座に。ところが昨年10-12月期に、BYDが販売台数でテスラを上回った。その製品は技術的にかなり水準が高いうえに、価格が安い。たとえば日本で売られている同クラスのSUV(多目的スポーツ車)でみると、テスラ製が500万円以上なのにBYD製は300万円程度となっている。

                     (続きは明日)

        ≪22日の日経平均 = 上げ +583.68円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2024-01-22 08:02:08 | 株価
◇ ダウもSP500も最高値を更新 = ダウ平均は先週271ドルの値上がり。終り値は3万7854ドルで、1月2日に付けた史上最高値を更新した。半導体関連株が値上がりを主導、SP500も2年ぶりに新高値を記録している。12月の小売り売上高や工業生産が予想以上に堅調だったところへ、FRBのウオラ―理事が「政策の修正を急ぐ必要はない」と発言。利下げが遠のくという観測から売り物も増えたが、それを乗り切っての株高だった。

日経平均は先週386円の値上がり。終り値は3万6000円に接近した。ニューヨークの影響を受けて半導体関連株が上昇、また円安が進んだことから輸出関連株も見直された。相変わらず外国人投資家が積極的に買い、個人投資家も追随している。中国からの乗り換えも目立ち、たとえば上海市場では日本株が過熱、一時は取り引きが停止されたほどだった。

ただ日経平均は、ことしになってから2500円も上昇した。このため出遅れ感・割安感は急速に縮小している。たとえばプライム上場企業のPER(株価収益率)は15.9倍に上昇。過去10年平均の16.2倍に近付いた。PERのさらなる上昇を食い止めるには、利益の拡大が必要になってくる。その利益は円相場の動向に左右されやすい。こうした観点からも、23日の植田日銀総裁の記者会見には注目が集まる。

今週は24日に、12月の貿易統計。26日に、1月の東京都区部・消費者物価、12月の企業向けサービス価格。アメリカでは25日に、10-12月期のGDP速報、12月の新築住宅販売。26日に、12月の中古住宅販売が発表される。なお日銀の政策決定会合は22-23日、植田総裁の会見は23日の予定。

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 

12万5000年ぶりの暑さ! : 昨年の気温

2024-01-20 07:26:11 | なし
◇ 戦争なんかしている場合か! = 「昨年の気温は最も高かった」--世界中の気象研究機関が、いっせいに観測の結果を発表している。たとえばNOAA(米海洋大気局)は先週12日「23年は観測史上最も暑い年だった」と発表。20世紀の平均に比べ1.18度高く、これまでの最高だった16年の平均気温を0.15度上回ったと説明している。また水深2000メートルまでの海水温も史上最高。ことしも最高を更新する確率は3割強にのぼると予測した。

WMO(世界気象機関)も同じ日「23年の世界平均気温が産業革命前に比べて1.45度上昇、観測史上最高になった」と発表。特に23年の後半は6月から12月までのすべての月で、月ごとの最高気温を記録したと解説した。なかでも驚かされたのは、EUの気象情報機関コペルニクスの発表。「過去12万5000年で最も気温が高かった」という研究結果を公表した。

気温上昇の原因は、地球温暖化の進行にエルニーニョ現象の影響が加わったため。その結果、大洪水や干ばつなどの異常気象・海面上昇といった破壊的な現象が続出している。WRI(世界資源研究所)によると、20-22年に山火事で焼失した森林は831万ヘクタール、東京都の約40倍にのぼった。またパナマ運河は水不足で、通過できる船舶数が大幅に減少している。

各国首脳は11年のパリ協定で「地球の平均気温を産業革命前の1.5%増に抑制すること」で合意した。科学者が「それ以上になると、異常気象や海面上昇が抑えられなくなる」と警告したからである。ところが温暖化ガスの排出量は、少しも少なくならない。そしてWMOによれば、昨年の気温は産業革命前に比べて1.45度の上昇。さらにコペルニクスによると、昨年11月17日の世界平均気温は産業革命前を2.06度も上回ってしまった。地球が壊れようとしているとき、戦争なんかしていていいのだろうか。

        ≪19日の日経平均 = 上げ +497.10円≫

        【今週の日経平均予想 = 1勝4敗】     

成長率5.2%の 真偽 / 中国

2024-01-19 07:54:06 | 中国
◇ あまりにも座り心地のいい数字 = 中国の統計局は17日、23年のGDP速報を発表した。それによると、実質経済成長率は5.2%。習近平政権が目標として掲げた「5%前後」を達成した。ただ22年はゼロ・コロナ政策で都市閉鎖などが断行され、成長率は3.0%にまで落ち込んでいた。その反動で5%を超えたのだと、専門家は解説している。また名目成長率は4.6%で、22年の4.8%を下回った。これは物価が下落し、経済がデフレ状態に陥っていることを示している。

同時に発表された主要な経済指標をみると、鉱工業生産は前年比4.6%の増加。小売り売上高は7.2%の増加、固定資産投資額は3.0%の増加だった。ただ不動産開発投資は9.6%の減少と、深刻な不動産不況は継続中。輸出も4.6%減少しており、経済は低迷状態から抜け出せない。そんななかで前年の反動とは言え、生産や小売りがよく伸びたという感じがしないでもない。

不思議に思うことは、GDP速報の発表の早さだ。アメリカでも23年の速報値は1月25日に発表される予定。日本は2月15日が予定日だ。中国は面積も広いし、人口も極端に多い。しかも正月休みを考慮すれば、半月足らずで集計したことになる。結果の正確性はどうなのだろう。目標の「5%前後」に対して、「4.9%」でも「5.0%」でもない。「5.2%」という結果は、全く座り心地のいい数字だ。最初から「5.2%ありき」ではないかと、勘繰りたくなってしまう。

統計局は同日、人口統計も発表した。それによると、23年末の総人口は14億0967万人で前年より208万人減少した。これで2年連続の減少。中国もいよいよ本格的な人口減少局面に突入した。言うまでもなく、人口の減少は経済成長のマイナス要因になる。中国はいま直面している不動産不況と、長期的な人口減少にどう対応して行くのか。習政権が「24年の成長目標」をいくらにするのか、きわめて注目される。

        ≪18日の日経平均 = 下げ -11.58円≫

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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