経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-12-02 07:45:07 | SF
第7章 終 局

≪61≫ 世界 = けさのテレビ・ニュースは、中東で起きたテロと報復爆撃の様子を生々しく伝えていた。地球の異常な寒冷化で人類の存続が危ぶまれたとき、世界各国は一致して対応策の構築に努力した。だが脅威が去ると、状況は元へ後戻り。宗教的な色彩の強い地域的な戦争が、しばしば勃発。米中ロの3大強国は残り少なくなった資源の取り合いに狂奔。みな自国第一主義に走って、リーダーの風格を有する国は全く姿を消した。

――ねえ、マーヤ。地球人はほんとに進歩しないね。こんなテレビ画面をみていると、ぼくはダーストン国が羨ましくなるよ。たしかウラノス博士がUFOの秘密を話してくれたとき「地球人はまだ野蛮で、戦争をしている」と言ったね。だからダーストン星にバリアを張って、暗くて冷たい星に見せていると説明してくれたときだ。
マーヤは無言だった。地球人の悪口は言いたくないのだろう。

ぼくに言わせれば、いまの地球は経済の面でも悪い方向に進んでいる。もう何十年も前から、日本を含む先進諸国は景気を維持するために、膨大なおカネを放出し続けている。その結果、株式や商品あるいは為替や仮想通貨などに大量の投機マネーが集中。いわゆるマネー経済が、急速に拡大した。

このマネー経済分野で儲けるのは、ほんの一握りの人たちだ。大多数の国民は汗水流して働いても、なかなか生活がよくならない。このため貧富の差は拡大するばかり。その不満は政治に向けられる。ところが選挙になれば、これら庶民の票がなければ勝てない。そこで政府・与党は、景気対策とか福祉対策でまたカネをばらまく。

すると投機資金がさらに増えて、働かない人たちがまた儲かる。庶民の不満がさらに嵩じると、政治家はポピュリズムに走る。こんな悪循環が止まらなくなっていると思う。

月日の流れは、宇宙船のように速い。気が付いてみると、22世紀も間もなくだ。ぼくが地球を飛び立ってから、もう50年近くも経ってしまった。こんな調子で、200年後の地球はどんな星になっているのか。思わずため息が出る。

そんなぼくの気持ちを察知したマーヤが、上を向いて言った。
「ダーストン国も200年前は、大した技術を持っていませんでした。地球人も頑張るでしょう。きっと、よくなりますよ。私たちも前を向いて、物事を明るく見ましょうよ」

                          (続きは来週日曜日)

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