経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-07-29 06:33:44 | SF
第5章 ニッポン : 2060年代

≪43≫ 絶対条件 = 「君の帰国は、これで本決まりじゃ。ただ1つだけ、絶対に守ってもらわなければならないことがある。それは地球に帰ったら、このダーストン星のことはいっさい口外しないこと。君がこの国で5年過ごしたことも、話してはならない。地球人にはダーストン国の存在を知られたくないからね。

君は例のダーストニウム合金を地球に持ち帰り、太陽光発電を各国に広める仕事を始める。しかし仮に君がこの約束を守らないときは、UFOがダーストニウムを破壊する光線を発射することになるだろう。すると地球は再び深刻なエネルギー不足に見舞われる。マーヤの神経系統にも異常をきたすから、十分に注意してもらいたい」

ウラノス博士の顔つきは引き締まり、声はいっそう低くなった。
――判りました。絶対に秘密を守ります。

「この5年間、君は記憶を喪失していたことにしてくれ。とにかく計画はわれわれが練り上げ、マーヤがそのすべてを記憶する。だから君は、マーヤの指示に従って行動してくれればいい」

あくる日から、マーヤはがぜん忙しくなった。病院に行って、日本の文字についての読み書き能力をインプットする。どこかで日本の女性に関する思考や習慣も、記憶装置に投入しているらしい。さらに科学院にも通って、ウラノス博士が言う“われわれが練り上げた計画”なるものを学んでいるようだ。

逆に、ぼくの方はやることがない。行き付けになった近所の居酒屋風集会所に、ひとりで出かけることが多くなった。顔見知りも増えたが、やはり言葉は通じない。それでも、みんなが歓迎してくれるから嬉しい。身振り手振りで、なんとか意思は通じるようになっている。特にガーシュおばあちゃんがいると、身振り手振りでも盛り上がった。

夜遅く、マーヤが帰ってきた。
――大変だね。疲れたろう。
「いいえ、ロボットは疲れません。貴方と大きな仕事が出来るので、とっても嬉しいんです。日本の女性のことも、ずいぶん判ってきました。貴方こそ、もう寝ないと」

このごろ、マーヤはぼくの隣で寝ることが多い。もちろん、ロボットだから本当に眠りはしない。でも、ぼくの方はマーヤの手を握っていると、深い眠りに落ちる。

                           (続きは来週日曜日)


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