経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

‟経済大国”から脱落する 日本 (下)

2023-03-09 08:08:35 | 景気
◇ ドイツとインドに抜かれ世界第5位に転落? = 主要国の22年のGDP統計が出揃った。ベスト5を並べてみると、①アメリカ 25兆3468億ドル②中国 19兆9116億ドル③日本 4兆9121億ドル④ドイツ 4兆2565億ドル⑤インド 3兆5347億ドル--となる。これをマラソンに例えると、トップのアメリカは順調な走り。ドイツとインドが猛烈に追い上げ。そして中国は遅れ気味、日本は顔が上がって苦しそう。と言ったところ。

ここからも判るように、日本とドイツの差はわずか6500億ドルほど。驚くべきことは、2002年時点では日本のGDPがドイツの2倍以上もあったという事実だ。その後の20年間、ドイツはGDPを2倍に拡大。一方、日本はGDPを1%しか増やせなかった。多数の専門家が「ことし中に逆転するだろう」と観測している。またIMFは「インドが27年には日本を追い越す」と予測しているから、そうなれば日本は世界第5位に転落することになる。

個人の豊かさを示す1人当たりGDPでみると、日本の状態はもっとずっと悪い。内閣府の集計によると、21年の1人当たりGDPは3万9803ドル。OECD(経済協力開発機構)に加盟している38か国中で20番目だった。韓国の1人当たりGDPはほぼ日本と並んだとみられ、ことし中には追い越されそう。またOECDには加盟していない台湾にも抜かれることは確実だ。

こんな状況では、とても‟経済大国”などとは言えないだろう。どうして、こんなことになってしまったのか。生産性の向上に失敗した企業経営者のせいなのか。それともおカネを貯め込んで使わない消費者のせいなのか。あるいは政策を間違えた政府・日銀のせいなのか。だれ1人として、こんなことは考えていないようだ。

        ≪8日の日経平均 = 上げ +135.03円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

30年間で 22.5%しか成長していない

2023-02-16 08:20:18 | 景気
◇ 長期の経済計画を作れないのか = 内閣府は14日、昨年10-12月期のGDP速報を発表した。それによると、実質成長率は年率換算で0.6%にとどまった。内訳をみると、いずれも年率換算で個人消費が2.0%増、企業の設備投資は2.1%の減少、住宅投資は0.5%減少、輸出は5.7%の増加だった。コロナ規制の解除で経済の正常化が進み、個人消費が上向き。また円安で輸出が伸長した。それでも成長率はゼロに近い低さで推移している。

同時に発表した22年の実質成長率は1.1%だった。21年の2.1%から鈍化している。内訳をみると、個人消費が2.2%の増加、設備投資が1.8%の増加。しかし住宅投資は4.7%の減少、政府の固定資産投資が7.1%の減少。さらに輸出は4.9%増加したものの輸入が7.9%増加したため、外需が成長率のマイナス要因となってしまった。

「すべてはコロナのせいだ」と言う人も多いが、長期的にみても日本は超低空飛行が続いている。たとえば30年前の1992年の実質GDPは444兆9507億円だった。これが22年は545兆3423億円に増大している。だが、この間の増加率は22.5%に過ぎない。単純に割り算をしてみても、年間平均0.75%の成長。実際は複利計算の効果があるから、これより低くなる。

最近、政府は長期経済計画を作成しなくなった。もちろん、高度成長時代のように「10年で所得倍増」などはムリ。しかし「10年間でGDPを1割増やす」程度の計画は作ってほしい。そういう目標がないと、成長分野にカネや人手が回らない。1人当たりGDPで、韓国にも負けてしまう。夢がないから、若い人たちは安心して子どもを産めない。政治家諸氏のご意見を聞きたいものである。

        ≪15日の日経平均 = 下げ -100.91円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

膏薬は貼った 大事なのは次の一手

2022-09-15 07:41:35 | 景気
◇ 問われる「新しい資本主義」の内容 = 政府は先週9日、物価高騰に対処するための追加の施策を決定した。その内容は①住民税非課税世帯への一律5万円支給②ガソリン価格抑制のための石油元売り会社に対する補助金の延長③小麦売り渡し価格の据え置き④地方創生臨時交付金の増額--の4点。必要経費は3兆5000億円前後、今年度予算の予備費から支出する方針だ。

一律5万円の支給は1600万世帯にのぼる見込み。低所得世帯の支出に占める食料品の割合が49%にものぼる調査結果を考慮した。石油元売り会社に対する補助金は9月末までに1兆9000億円を支出、ガソリンの小売価格を1リットル=168円に抑え込んできた。これを12月末まで延長する。地方創生交付金は、自治体が独自の対策に使用できる資金。これを6000億円増額する。

いずれも過去の施策を拡大・延長するだけだから、あっという間に対策は組み上がった。しかし、これらは傷口に膏薬を貼るだけの対症療法。日本経済の将来に希望を持たせるような内容ではない。だから政府が10月中にまとめる予定の総合経済対策に、大きな期待がかかる。ところが永田町から流れてくる情報によると、その内容は今回決めた膏薬のさらなる延長が中心になるという。

これでは膏薬貼りばかり。エネルギーや食料の問題をどう解決して行くのか。日本は今後どういう国を目指すことになるのか。その指針が明らかにならないと、個人も企業も将来設計を建てられない。岸田首相の「新しい資本主義」も内容が乏しければ、国民の信は失われるだろう。永田町から漏れ出る情報が誤りであることを願うばかりだ。

        ≪14日の日経平均 = 下げ -796.01円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

疑問点も多い GDP速報

2022-08-16 08:16:43 | 景気
◇ 4-6月期は2.2%のプラス成長だったが・・・ = 内閣府は15日、ことし4-6月期のGDP速報を発表した。それによると、実質成長率は年率換算で2.2%、名目成長率は1.1%となっている。コロナによる行動規制が解除され、個人消費が増加して成長率を押し上げた。個人消費は年率換算で4.7%伸びている。企業の設備投資も5.8%増加した。ただ住宅投資は7.3%減少している。

実質GDPの実額は542兆円。コロナ前の19年10-12月期は540兆円だったから、ようやくコロナ前の水準を取り戻したことになる。また4-6月期の成長率はアメリカがマイナス0.9%、中国がマイナス10.0%、ユーロ圏はプラス2.8%だったから、日本の成績はまずまずと言えるかもしれない。ただしアメリカとユーロ圏は昨年中にコロナ前の水準に戻っており、この点では日本がいちばん遅い。

またプラス2.2%成長になったと言われても、景気がよくなったという実感は乏しい。名目成長率が1.1%しか増加しなかったからである。雇用者報酬も名目ではプラス0.5%だったが、実質ではマイナス0.9%だった。ここで1つの疑問。雇用者報酬では物価が上昇したため、実質値がマイナスになった。しかしGDP統計では、実質値が名目値を上回っている。なぜだろう。

さらにGDP速報では輸出が3.7%の増加、輸入は2.7%の増加となっている。輸出の伸びの方が大きいから、その分が成長率を押し上げたと考えられる。だが財務省が集計した貿易統計をみると、4-6月期の前期比の伸び率は輸入の方が輸出よりずっと大きい。この食い違いは、なんなのか。もっともらしい説明はあるのだろうが、なんとなくフに落ちない。

        ≪15日の日経平均 = 上げ +324.80円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 

景気後退を織り込む 市場

2022-07-13 07:33:07 | 景気
◇ NY株式市場だけは変則行動 = 多くの金融・商品・為替市場が景気後退の到来を織り込み始め、このところ値を下げている。ウクライナ戦争がもたらした物価の上昇に、インフレを阻止するための金融引き締め政策が重なって、消費が頭打ちに。景気後退は避けられないという見方が強まっている。世界銀行もことしの世界経済の実質成長率見通しを4.1%から2.9%へと、大幅に下方修正した。

ロシアの供給停止が懸念されることから、ヨーロッパでは天然ガスの価格が急騰している。ところがニューヨーク商品市場のWTI(テキサス産軽質油)先物価格は急落。12日には1バレル=95ドル台まで下落した。これは世界的な景気後退で、原油の需要が減少するという予想が広がったため。また鋼材や銅、アルミなどの金属類、それに綿花や木材の相場も大幅に下落した。このところ堅調に推移してきた金価格も下げている。

円の対ドル相場は最近、136-137円で推移している。日本の自動車メーカーにとっては、大儲けが出来る環境。だが東京市場では先週、自動車株が大きく売り込まれた。アメリカが景気後退に陥り、自動車の販売が急減するという観測が強まったためである。もちろん、こうした環境の変化は自動車だけではない。すべての輸出品について言えることである。

こうしたなかで、やや趣を異にするのはニューヨーク株式市場だ。全体としては不況を警戒して下げているが、いまは景気後退を歓迎するムード。失業保険の申請者が増えたり、景況見通しの悪化が報道されると、株価は上がる。景気の見通しが悪化すると、FRBによる金融引き締めのテンポがゆっくりになるという期待が強まるからである。ニューヨーク市場ではしばしば現われる倒錯した論理だが、いずれは景気後退を心配する正常な感覚に戻るだろう。

        ≪12日の日経平均 = 下げ -475.64円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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