経済なんでも研究会

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イギリスとEUの 死闘が始まる!

2020-01-31 08:13:41 | イギリス
◇ 移行期間は延長される公算大 = きょう1月31日、イギリスは正式にEUから離脱する。だが明日になっても、イギリスとEUの関係は何も変わらない。ことし12月31日までは移行準備期間で、従来の状態が継続されるからだ。しかしイギリスはこの期間中に、EUや他の諸国と死に物狂いの交渉を行うことになる。およそ750の条約や協定を新たに結ばなければならないが、年末までにどれほどの交渉をまとめられるのか。全世界が見守ることになる。

まずは最大の輸出市場であるEUとの交渉。イギリスはこれまで通りの「ヒト・モノ・カネの自由な往来」を要求するが、EU側が応じるはずはない。勝手に脱退して分担金も払わなくなる国に、加盟国並みの待遇を与えることは出来ないからである。そこで交渉は品目ごとの関税率を決めることになり、面倒な作業が必要だ。ほかに漁業権やエネルギーなど、厄介な問題も解決しなければならない。

同時にイギリスは、アメリカや日本などEU以外の国とも、FTA(自由貿易協定)を結ぶ必要がある。いかに大英帝国とはいえ、これだけの作業を短時間でこなすだけの官僚はいないだろう。特にEU内部には「これから先、イギリスは貿易の競争相手になる。だから厳しく対応しなければ」という空気も強い。結局、EUとの交渉は長引き、移行準備期間を延長せざるをえないのではないか。こんな観測が、早くも関係者の間には流れ始めた。

ところが交渉が長引けば、その間にイギリス経済はじわじわと蝕まれて行く。だからジョンソン政権としては、一日も早くEUや各国との協定を結びたい。しかし不利な条件で妥協すれば、国民の支持を失ってしまう。スコットランドや北アイルランドの独立運動に、火が付くかもしれない。必死の覚悟のイギリスとEUとの激闘が始まる。

       ≪30日の日経平均 = 下げ -401.65円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

大英帝国の 波高き船出 (下)

2019-12-15 08:20:37 | イギリス
◇ ノー・サイドで結束できるのか = 総選挙で圧勝したから、ジョンソン内閣は議会の運営には困らなくなるだろう。しかし問題は、スコットランドと北アイルランドの抵抗。ラグビー発祥の地ではあるけれど、ノー・サイドというわけにはいかなさそうだ。このうちスコットランドは、もともとウイスキーや機械類の輸出先としてEUへの依存度が高い。このため残留派が多く、スコットランド民族党は「独立のための住民投票」を掲げて総選挙を戦い、議席を大幅に増やしている。

スコットランドでは、14年に独立の賛否を問う住民投票が実施された。このときは独立が否定されている。ただ当時は、イギリス全体のEU離脱などは考えられていなかった。しかし今回は、離脱が現実のものとなった。おそらく住民投票が行われれば、こんどは独立派が勝つだろう。したがってジョンソン首相が、いかにしてスコットランドの住民投票機運を抑えるか。なかなか難問であることに違いはない。

北アイルランドの問題は、もっと微妙である。ジョンソン首相がEU側と合意した案によると、イギリスがEUを離脱した場合、北アイルランドとイギリス本島との間には関税などの境界線が敷かれる。これは「北アイルランドを差別する措置だ」と、現地では怒りの声が強い。また独立国アイルランドとの間は自由往来のまま。それに賛成する人たちと反対する人たちの対立。宗教問題もからんで、不穏な様相を呈している。ジョンソン首相は、その衝突を回避できるのだろうか。

イギリスは1927年に、イングランド、ウエールズ、スコットランド、それに北アイルランドが加わって、現在の連合王国となった。正式名称は「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」である。もしイギリスのEU離脱がきっかけとなってスコットランドあるいは北アイルランドが独立すれば、大英帝国は分解することになる。               

大英帝国の 波高き船出 (上)

2019-12-14 08:06:11 | イギリス
◇ EU との厳しい条件交渉 = イギリスの総選挙は、ジョンソン首相が率いる保守党の圧勝に終わった。多くの有権者は3年間にわたる堂々巡りの政局に嫌気がさしており、離脱一本で臨んだ保守党に決着を託したように思われる。労働党は国民投票の再実施を公約したが、これでは再び混迷状態に陥ると懸念されたようだ。もし労働党が残留一本で戦っていたら、結果は違っていたかもしれない。

この結果、イギリスが来年1月31日にEUを離脱することは確実となった。進むべき航路が決定したわけである。だが「よかったね、おめでとう」とは言いにくい。これから乗り出す海路には、暴風が吹き荒れていると予想されるからである。その最大の難関は、EUとの条件交渉。イギリスとEUは来年2月から年末までの移行準備期間のうちに、数多くの協定を結ばなければならない。

イギリス側にとっての理想は、これまで通りEUとの間で「ヒト、モノ、カネ」の行き来が自由に出来ることだ。しかしEU側としては、EUの政策に従わず分担金も支払わない国に、そんな待遇を与えるわけにはいかない。ここで甘い顔を見せれば、加盟国のなかから離脱を希望する国が出てくる可能性を生みかねない。

たとえばFTA(自由貿易協定)を結ぶにしても、ヒトの往来は自由にする。しかしモノの出入りには、関税をかける。カネの移動も全く自由にはさせないという具合に。すると品目別の関税率をどう決めるか。カネの移動をだれが監視するかなど、おそらく1000を超える項目について交渉しなければならない。その結果によってイギリス経済への影響が変化し、ロンドンの経済的地位が変動する。

                               (続きは明日)

       ≪13日の日経平均 = 上げ +598.29円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

イギリスは 分解の危機?

2019-12-12 08:10:26 | イギリス
◇ 運命を決めるきょうの総選挙 = イギリスではきょう12日、EU離脱の是非を問う総選挙が行われる。最近の調査では、EU離脱を掲げるジョンソン首相が率いる保守党が43%、離脱には反対で国民投票の再実施を主張する労働党が33%の支持率。年配層は保守党、若年層は労働党といった傾向が明確になってきた。特に若年層の労働党支持が急速に増えているので、結果は予断を許さないという。

考えられる結果は次の3通りだ。①保守党が過半数を制し、イギリスは来年1月31日にEUから離脱する②保守党が過半数を獲れず、現状のままの混迷が続く③労働党が勝って、国民投票が実施される。このうち③のケースは、きわめて確率が小さい。残るのは①と②だが、そのどちらの場合でも、新しく2つの大問題が発生する可能性がある。イギリスが分解するかもしれない大問題だ。

1つはスコットランド。ウイスキーや機械類の輸出で、EUへの依存度が高い。このため残留派が圧倒的に多い。イングランドとの対抗意識も強く、最大の地域政党であるスコットランド民族党は「大英帝国からの独立を目指す住民投票の実施」を掲げている。保守党が過半数を上回っても下回っても、スコットランドでは独立運動が盛んになるという見方が強い。

もう1つは北アイルランド。ジョンソン首相の離脱案では、英本国との間に関税などの境界線が敷かれる。これは「北アイルランドの切り捨てだ」という批判が急速に高まった。同時に、プロテスタント系とカトリック系の対立が再燃する危険性も指摘されている。スコットランドや北アイルランドが独立すれば、大英連合帝国は分解する。だがイングランド南部地方では「それでもEU離脱を強行すべきだ」という世論が強まっている状態だから、イギリスは歴史的な危機に立たされたと言えるだろう。

       ≪11日の日経平均 = 下げ -18.33円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

予測不能! イギリスの行き着く先

2019-11-02 07:57:49 | イギリス
◇ 12月12日の総選挙は決まったが = イギリス下院は29日、総選挙を12月12日に実施する特別法案を賛成多数で可決した。ジョンソン首相が提出したこの法案に、最大野党の労働党が一転して賛成したためである。EU離脱の可否を巡る判断を再び国民に問う形となったが、最終的にどんな結果に落ち着くかは全く予測不能。いぜんとしてロンドンは、深い霧に包まれている。

これまで解散・総選挙に反対してきた労働党が、急に賛成に回った。これについて、労働党のコービン党首は「EUが離脱期限を1月31日まで延長したことによって、“合意なき離脱”が避けられる見通しになったため」と説明している。この言い方から判断すると、労働党は“合意ある離脱”なら賛成するようにも思われる。もしそうなら、総選挙での争点は離脱に対する可否ではなくなってしまうだろう。

その一方で労働党は「総選挙で勝ったら、再び国民投票で離脱の可否を問う」とも言っている。つまり総選挙の結果では「離脱か残留か」は決まらないことになる。片やジョンソン首相が率いる保守党の方は、総選挙で勝てば1月末までに断固として離脱する姿勢だ。ここでは「国民投票の結果を総選挙で再確認できるのか」が問題になりかねない。

いま保守党の議席は298で、過半数の325議席には達していない。選挙の結果でも過半数に届かなければ、他の党と連立を組まなければならないことになる。しかし「離脱賛成」を掲げる政党は、ほとんどない。さらに保守党のなかには“残留派”もいる半面、労働党のなかには“離脱派”もいる。選挙の結果どうなるかは、全く見通せない。

       ≪1日の日経平均 = 下げ -76.27円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

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