goo blog サービス終了のお知らせ 

経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

1年で3倍以上に : 原油価格

2021-03-19 08:06:23 | 原油
◇ バブルの最終局面へ? = 原油の国際価格が急騰している。ニューヨーク商品市場のWTI(テキサス産軽質油)先物価格は、今週1バレル=65ドル前後で推移。2年4か月ぶりの高値を付けた。昨年3月の価格は20ドル強だったから、この1年間で3倍以上の高騰をみせたことになる。明らかにバブルの症状を示しているが、価格はまだ上昇するのだろうか。

原油価格が高騰した理由は、いろいろある。まずはOPEC(石油輸出国機構)やロシアなど、産油国側の減産。現在も日量800万バレルを減産中で、いま4月以降の継続を検討している。その一方で、世界の需要は増えてきた。中国経済がいち早く回復。さらにワクチン接種が進み、ことし後半の世界経済は確実に立ち直るという見方が強まっている。このため投機資金が流入、価格を押し上げた。

原油価格の高騰は、各国経済に大きな影響を及ぼす。たとえば電気代やガソリン代の上昇を通じて、企業や家庭の負担を増大させる。アメリカでは物価上昇を加速させ、FRBの金融緩和政策を終わらせることにつながるかもしれない。また日本でもコロナ不況からの脱出にとって、重荷となることは避けられない。

原油価格がこの先どうなるかは、投機資金しだい。投機筋がバブル崩壊の危険を感じれば、価格は急反落するだろう。まだ先高と考えれば、100ドルを超える可能性もないではない。原油市場は株式市場に比べると、はるかに規模が小さい。このため価格の変動も大きくなりがちだ。したがってバブルの崩壊も、株式市場に先行して現われることが多い。

       ≪18日の日経平均 = 上げ +302.42円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

“カナリア”になった 原油価格

2021-02-25 08:44:02 | 原油
◇ バブル崩壊かインフレかを予見 = 原油の国際価格が、じわりと上昇してきた。ニューヨーク商品市場のWTI(テキサス産軽質油)先物価格は先週、1バレル=60ドルの大台に乗せた。産油国の減産に加えて、コロナ終息後の景気拡大に対する期待、それに投機資金の流入が価格を押し上げている。正確には計測できないが、需給による価格の上昇は40ドル程度。あとの20ドルは、投機資金によるものと考えられている。

WTI先物価格は昨年3-4月に、コロナ不況の影響で10-20ドルにまで低落した。さらに4月20日には、アメリカで貯蔵タンクが満杯となり行き場を失ったため、価格がマイナスになるという珍事まで惹き起こしている。慌てたOPEC(石油輸出国機構)とロシアなどが、5月からは日量712.5万バレルを減産。サウジアラビアは独自に日量100万バレルの追加減産に踏み切っている。

投機資金が入り始めたのは、ことしになってから。株式市場がバブル色を強めたことから、投機筋が原油にも触手を伸ばしたものと思われる。だがバブルが崩壊しそうだと感じれば、原油市場の投機資金は株式市場よりも早く逃げ出す傾向がある。株価は暴落しても限度があるが、原油価格はゼロにまで下落する危険性があるからだ。一方、インフレの気配が濃くなれば、原油市場はヘッジの対象になりやすく、価格は大きく上がりやすい。

そんな状況のなかで、OPECとロシアなどの産油国は3月4日に大臣級の会合を開く。そこで減産の緩和が検討されるかどうか。原油価格は上がるのか、下がるのか。むかし炭鉱では、有毒ガスを探知するためにカナリアが持ち込まれた。いま原油の国際価格は、上がればインフレ。下がればバブル崩壊の予兆として、カナリアの役割を演じることになりそうだ。

       ≪24日の日経平均 = 下げ -484.33円≫

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

ジワッと来る 原油大暴落の後遺症 (下)

2020-04-30 07:58:01 | 原油
◇ いくつかの経路で広がる副作用 = 石油の消費減少は世界経済の停滞を意味するから、原油価格の暴落はまず株価の下落につながる。原油価格がマイナスに落ち込んだ先週初めも、ダウ平均は2日で1000ドル以上の値下がりとなった。次にやや時間を置いて、原油安の副作用はいくつかの経路を通じてジワッと表面化してくる。その副作用の力はなかなか強く、あなどれない。

第1の経路は、原油を保有する企業への影響だ。保有する原油の価格が下がると、企業会計上で評価損が発生する。主として石油会社や精製会社、それに商社などが原油を保有している。今回のように価格が3分の1になると、評価損の額も極めて大きくなるだろう。その結果は、7月半ばに発表される4-6月期の決算に現われる。

第2の経路は、産油国の収入減少だ。まずサウジアラビアなどの大産油国は現金が不足してくるから、海外に投資していた資金の回収を始める。いわゆるオイル・マネーが引き揚げられるわけで、株式市場には打撃となる公算も大きい。次に弱小の産油国は資金不足で債券の利払いが出来なくなる。いわゆるデフォルトに陥るわけだ。

第3の経路は、アメリカのシェール企業。原油価格が40ドルを下回ると、採算がとれないと考えられている。そのため原油安が続くと、倒産が続出する恐れがある。これらの会社は社債の発行で、資金を調達してきたところが多い。その社債が紙クズになると、保有する金融機関の経営が行き詰まる。構図としては、あのリーマン・ショックと同じ。こうした原油安の副作用がこれから現われることは間違いない。問題はその大きさである。

       ≪28日の日経平均 = 下げ -12.03円≫
 
       ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

ジワッと来る 原油大暴落の後遺症 (上)

2020-04-28 08:56:30 | 原油
◇ 超安値は当分続く = 原油の国際価格がマイナスに転落して、関係者を仰天させた。ニューヨーク商品取引所で20日、WTI(テキサス産軽質油)の5月渡し先物相場が1バレル=マイナス37.63ドルに急落するという前代未聞の出来事が発生した。仮に1バレルの原油を買うと、37ドル63セントの現金を貰える珍事である。価格はすぐにプラスの領域に戻ったが、10ドル台で低迷したまま。年初の水準に比べれば、3分の1以下となっている。

価格が暴落したのは、世界的なコロナ不況で石油の需要が激減したためだ。IEA(国際エネルギー機関)の調査によると、世界の石油需要は4月が前年比で日量2900万バレルの減少、5月も2600万バレルの減少になる。サウジアラビアやロシアなどの産油国は、5月から日量970万バレルを減産することにしているが、これでは大幅な供給過剰。貯蔵所も満杯になるというので、投げ売りが出た。

原油のほぼ全量を輸入に頼っている日本にとって、価格の下落は有難い。現にガソリンの小売価格は13週連続で下がっており、1リットル=100円を切る可能性もあるとみられている。遅れて電気やガスの料金も、下がり始めることは確実だ。家計や企業にとっては朗報だ。しかし喜んでばかりはいられない。過度の原油安はいろいろな経路を通じて、世界経済に甚大な悪影響を及ぼすからである。

原油の需給ギャップはあまりにも大きく、異常な原油安は当分続きそうだ。すると、その副作用も大きくなりかねない。もし大きな副作用が生じると、世界経済はコロナ不況に加えて原油安ショックで揺さぶられることになる。日本経済にとっても、コトは重大だ。では過剰な原油安は、どんな経路で後遺症を惹き起こすのだろうか。

                              (続きは明後日)

       ≪27日の日経平均 = 上げ +521.22円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

OPEC の 崩壊 (下)

2020-03-13 07:37:44 | 原油
◇ 心配な信用不安の発生 = ある意味では「新型コロナ肺炎のウイルスが、OPECプラスを崩壊させた」と言えるのかもしれない。さらに原油価格の維持という唯一共通の目的を失ったOPECそのものも、事実上は崩壊したとみることが出来る。その影響は多岐にわたり、きわめて大きい。まずサウジアラビアは、脱石油構想の原資となるはずだった「サウジ・アラムコ」の株価を維持できるかどうか。これに失敗すると、この構想を推進してきた実力者のムハンマド皇太子の立場も微妙になりかねない。

OPEC内部では原油の増産競争が始まり、利害が相反する。サウジアラビアとイランの関係は現在でも険悪だが、もっと悪化するに違いない。とにかく中東情勢は不安定の度を増すことになるだろう。原油価格の低落は、一見すると日本にはプラスのように見えるが、供給源が不安定になることは決して好ましいことではない。

最大の問題は、信用不安が生じないかどうか。アメリカの中小シェール企業は、大量の社債発行によって起業している。これらの低格付け債は複雑な仕組み債券として広く売られており、倒産する企業が続出すると信用不安を起こしかねない。リーマン・ショック時と同じ構造だ。また産油国のなかには債務不履行に陥る国も出てくる可能性があり、この場合も金融不安を惹き起こす。

原油価格の急落とOPECの事実上の崩壊。専門家のなかには、これを「石油時代の終わり」と指摘する人もいる。自動車のEV化に象徴されるように、世界は確かに“脱石油”に動いている。そうした環境のなかで、取り残されているのが日本。長いこと「脱石油、脱中東」と言い続けているが、実態は少しも変わらない。もしかすると、OPECの崩壊で結果的にいちばん被害を被るのは、日本かもしれない。

       ≪12日の日経平均 = 下げ -856.43円≫

       ≪13日の日経平均は? = 下げ≫

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>