1997年は韓国で今の女性政策が新たに始まろうとしていたまさにその時だった。
女性発展基本法は金泳三前大統領が大統領選に女性票と引き換えに女性政策を選挙公約にしていたこともあり、国際化課題の一環として1996年12月に制定された。
総合的な女性政策の推進計画とその具体的内容を規程した法律である。
この後、金大中大統領も積極的な女性政策を展開すると
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公言して、様々な選挙公約を掲げた。最も注目されるのは女性割り当て制で、選挙の比例代表配分30%以上、政府各部委員会および政党機構30%、長官4人以上等各部門にわたる女性割り当てを行なった。これら大統領の政策によって2004年の視察のときは女性政策が急激に進展していた。
私たちは女性政策が実施されている現場を視察して最後に女性政策の大元締めともいえる韓国女性開発院を訪れた。
韓国女性開発院は女性問題を専担する唯一の国策研究機関である。
また、梨花女子大韓国女性研究院、梨花女子大アジア女性学センターとの連携も大きい。
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小高い丘を登りきると、そこには韓国女性開発院の懐かしいチョコレート色の建物があった。外観は8年前と少しも変わっていない。2004年は院長が3代目となり、設置目的も教育、研究、訓練から研究が主目的となり、女性問題に関する国の研究機関としての確固たる地位を築いていた。法制度と現実・世代間のギャップ、根強い男女差別等に悩みながらも、女性が政治や経済分野に参加することによるメリットや社会貢献について調査、研究し、それらを国の女性政策に活かしていた。
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韓国女性開発院の概要
韓国女性開発院(以下、開発院とする)は、1983年に女性問題に関する教育、研究、訓練をすることを目的に設置された。現在は、女性政策機関として活躍している。職員は83名であるが、うち52名が研究員である。開発院は政府の国務総理室に所属し、経費はすべて*(100%)国の予算でまかなわれている。
2001年、国に女性部が新設され、政府の女性担当官が国会の女性特別法等について研究している。
*女性問題に関する研究に政府が100%支援しているのは、韓国のみである。
=ビデオより=
'99年 ジェンダー差別法
景気が悪いと、女性が先に解雇される
経済参加 49% 賃金は男性の65%位
仕事と育児の両立が難しい
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質疑応答
Q1:開発院の提案が国の政策にどの程度影響を与えるか。
A:’96 女性発展基本法
‘97~’02 第一次女性発展基本計画
‘03~’07 第二次女性発展基本計画
すべての分野にわたり研究している。その結果が女性部の政策として反映される。
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政府6省←→女性部←→開発院←→市区町村の女性センターやNGO
流れとしては女性開発院が現場の声を吸い上げ女性部に反映していく、女性部から政府6省に反映していく。
研究調査では、例えば韓国女性開発院が「現行法令上の男女差別条項発掘調査」をしているがそれは、「これまでは男女差別問題を“女性保護”の観点からアプローチしてきたが、女性の経済力向上など平等に対する価値観が変わってきただけに、今後の研究は男女平等といったレベルでアプローチを試みていく、つまり男性を差別する法条項も少なくない。といわれた。
Q2:女性エンパワーメントの中心は?
A:女性が政策決定の場に参加すること。
*政府に女性政策を提案したが、実施するのが男性のみでは、進みかたが遅い。
*女性委員会で女性参加率を決め、具体的目標を達成する。経済分野においても
女性が参加する。例:産業目標、女性の委員、ロビー活動等
*さらにスキルアップしたい人のためのプログラムを組んでいる。開発院に託児
所はあるが保育、介護など遅れている。しかし、国に女性部ができたことは大
きい。
*女性議員を増やすため地方政治に比例代表制の導入(順位の1番は必ず女性候
補)。
*大企業の中でも女性の提案を取り入れたら表彰する。
*政治の場ではクオーター制。2005年30%を目指していたが、2002年19%、2003年
32%政府の委員会に女性参加2007年40%を計画している。
*4月の総選挙で39名の女性国会議員が誕生した。
*5級~12級まで試験がある。5級に昇進するのに男女差がある。
Q3:大田区の管理職は140名であるが、女性はここ数年増えていない。試験を受けるチャンスは平等にあるのに試験を受けない女性が悪いとの回答である。
A:「女性に○%ください」といっても準備された女性はいない。推薦しても当選する可能性は低い。「出世したい人がいれば連れてきて欲しい」と男性は言う。
*男性は差別していないと言っているが、立場が平等になっていない。
30%比例でとか、目標率を示しても実際には人がいなくギャップがある。
ギャップを生じないようにするために、ポジティブアクションが重要である。
*法律や制度を作りかなり取り組んできたので、それなりに改善されて来たとは
いえ、現実にはまだまだ難しく、法律と現実間にギャップがある。
今後、この法律と現実のギャップを埋める研究をしていく必要がある。
*古い世代は難しく、次世代の女性の意識を改革させることが重要である。
つまり、リーダーシップを育成する教育が必要である。
Q4:日本では両性平等に関する女性への教育がされていないのかもしれない。韓国では次世代女性の教育に成功しているか。
A:挫折は多々ある。何故なら意識の変化は見えづらい。評価が難しい。しかし、徐々に変化してきている。
*高等教育を受け、社会進出を果たし、自己表現、リーダーシップが取れるよう
になってきている。家庭科でジェンダーイクオリテイを入れている。
*韓国でも晩婚化、離婚率上昇、少子化が起きている。これらのことは肯定的
変化なのだろうか。
*3世代が一緒に住むことも少なくなってきている。高齢者介護も含めた3世代
(母、私、子ども)の意識の変化・差があるが、これが望むべき変化なのか。
Q5:大田市工業団地内の先端企業を見学してきたが、女性社長であるにも関わらず女性従業員は2名しかいなく、他は男性であった。男女平等教育をする必要があるのではないか。
A:私企業の場合、利益志向が強い。利益を上げることが優先になっていく。
*女性企業は世界同様、韓国も健康分野のベンチャーに偏っている。
*女性科学人の排出を奨励している。梨花女子大では、科学技術科をつくった。
ジェンダーギャップを解消するために、国が女性科学人育成政策を打ち出して
いる。
Q6:高級職員5%ということであるが、各省への影響力はどのくらいか。
A:男性公務員に教育がなされている(ジェンダーフリー教育)。政策決定 の場に女性が入る必要がある。30%が低いとも言えない。地方公務員採用時の教育に必ず女性学が政策的に取り入れられている。教育の効果は時間がかかるが…。
続きは明日。