NPO法人POSSE(ポッセ) blog

道幸哲也『教室で学ぶワークルール』旬報社

今回は代表・今野晴貴のブログより『教室で学ぶワークルール』について述べた記事を転載します。

***以下、今野ブログより掲載***

道幸哲也さんの『教室で学ぶワークルール』をお送りいただきました。

特に興味深く読ませていただいた箇所は、下記のとおりです。
・各章の紹介と感想
まず、第2章「労働条件はどのように決まっているか」で、各種法律に加え、はじまりとしての「労働契約」の意義や、「労働協約の力」を解説している点に目が惹かれます。
一般的な解説本とは異なり、労働法学の体系から説明する点で、他の入門書とは一線を画しています。

第5章「入社までの過程」。見やすく契約までの権利関係を示しています。この分量での解説は秀逸。

第6章「労働契約」。契約で、経営者の権利も「制限」されうることが示されていて、法の論理がよくわかります。ただ、判例解説はちょっと難しいですね。

第7章「労働相談の仕方」。個人的に、もっとも興味のあった項目です。下記の指摘が重大です。
「トラブルをどう解決したいかはっきりさせる」ことが必要であり、「・・・自分の本音や決断を適切に伝えることが重要です。自己責任・決断の世界です。最近相談を受けていて強く感じるのは、自分の問題であるにもかかわらず、相談機関やあっせん機関に頼りすぎる傾向です。相談担当者は、サポートをしますが味方ではありません」。


・最大の論点=労働相談の意義と相談する側の「決断」
確かに、本人の「決断」が法的な権利行使の必要条件になります。本人の意思のない事柄は、支援者としてどうにもならないのが実情です。この本で学ぶ学生には、ぜひそうした気概を身に着けてほしいと思います。

ただ、相談をうける側としては、いろいろ考え込んでしまうところもあります。
「労働法相談」に限るとすれば、道幸先生の指摘がただしいのですが、相談を受ける側には「ソーシャルワーク」のやくわりもあると思うからです。

POSSEの相談では使用者からいやがらせ、いじめ、パワーハラスメントによって、法的な主体となる力そのものをはぎとられてしまっている方がよく見られます。

決断しようにも、すでに精も根も尽き果てていて、「民事的主体としては殺されている」ような方もいるのが実情です。

そこまでいかないしても、やはり相談者の「決断」そのものが、社会的な支え、エンパワーがあってはじめてできるように思います。
私がこのように書くのも、最近「ソーシャルワーク」の意義を唱道するNPO法人ほっとプラスの藤田孝典さんと一緒に仕事をするようになったからです。

藤田さんは著書『反貧困のソーシャルワーク実践』の中で、ソーシャルワーカーが専門性に依拠し、当事者には「問題」とすらとらえられないような制度の不備に向かって闘っていくべきことを訴えています。

私は労働相談は「ソーシャルワークの下位概念」だと思うのです。相談者は法律の知識を伝えるだけではなく、当事者をエンパワーし、制度改革をも思考する必要があると思います。

そのためにも、結局は相談者が「決断」しなければならないので、道幸先生の指摘と対立するわけではないのですが、相談を受ける側としては、そうした視点が大事だと思いした。これは、私たち相談を受ける側にむけた宿題ですね。

(今月に出る『社会福祉研究』に、労働相談概念の再検討についての論文を寄稿しました)


・最後に
やはり、労働法学の先生がきちんと「正確なこと」を書かれている点が、この本の特長だと思います。
見やすいだけでいい加減な解釈やハウツーを示しているものが多い中で、とても貴重だと思います。

***以上***

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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人で す。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。

なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集 しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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