貫之集 493
はるがすみ とびわけいぬる こゑききて かりきぬなりと ほかはいふらむ春霞 飛びわけいぬる 声聞きて 雁来ぬなりと ほかはいふらむ 春霞を分けるように飛んで行く雁の声聞いて、雁が
貫之集 492
みづのあやの みだるるいけに あをやぎの いとのかげさへ そこにみえつつ水のあやの 乱るる池に 青柳の 糸の影さへ 底に見えつつ...
貫之集 491
おなじいろに ちりまがふとも むめのはな かをふりかくす ゆきなかりけり同じ色に 散りまがふとも 梅の花 香を降りかくす 雪なかりけり...
貫之集 490
むかしより おもひそめてし のべなれば わかなつみにぞ われはきにけるむかしより 思ひそめてし 野辺なれば 若菜摘みにぞ われは来にける...
貫之集 489
みよしのの よしののやまに はるがすみ たつをみるみる ゆきぞまだふるみ吉野の 吉野の山に 春霞 立つを見る見る 雪ぞまだ降る...
貫之集 488
同じ五年亭子院御屏風の料に、歌二十一首みづなかに ありこそしけれ はるたちて こほりとくれば おつるしらたま水中に ありこそしけれ 春立ちて こほり解くれば 落つる白玉...
貫之集 487
年のつごもりゆくつきひ かはのみづにも あらなくに ながるることも いぬるとしかな行く月日 川の水にも あらなくに 流るるごとも いぬる年かな...
貫之集 486
松と竹とありまつもみな たけもあやしく ふくかぜは ふりぬるあめの こゑぞきこゆる松もみな 竹もあやしく 吹く風は 降りぬる雨の 声ぞ聞こゆる...
貫之集 485
初雪ゆきふれば くさきになべて をるひとの ころもでさむき はなぞさきける雪ふれば 草木になべて 折る人の 衣手寒き 花ぞ咲きける...
貫之集 484
網代やまかぜの いたくふきおろす あじろには しらなみさへぞ よりまさりける山風の いたく吹きおろす 網代には 白波さへぞ よりまさりける...
貫之集 483
稲刈りほせるかりてほす やまだのいねの そでひちて うゑしさなへと みえずもあるかな刈りてほす 山田の稲の 袖ひちて 植ゑし早苗と 見えずもあるかな...