貫之集 504
かりにのみ ひとのみゆれば をみなへし はなのたもとぞ つゆけかりけるかりにのみ 人の見ゆれば 女郎花 花の袂ぞ 露けかりける 愛しい人が、狩りには足しげく行くのに私のところには
貫之集 503
ひとしれず きつるところに ときしもあれ つきのあかくも てりわたるかな人しれず 来つるところに ときしもあれ 月のあかくも 照りわたるかな...
貫之集 502
つなはへて もりわたりつる わがやどの わさだかりがね いまぞなくなるつなはへて もりわたりつる わが宿の 早稲田かりがね いまぞ鳴くなる...
貫之集 501
ふくかぜの しるくもあるかな をぎのはの そよぐなかにぞ あきはきにける吹く風の しるくもあるかな 荻の葉の そよぐなかにぞ 秋はきにける...
貫之集 500
あしひきの やまだをうゑて いなづまの ともにあきには あはむとぞおもふあしひきの 山田を植えて いなづまの ともに秋には あはむとぞ思ふ...
貫之集 499
さみだれに あひくることは あやめぐさ ねながきいのち あればなりけり五月雨に あひ来ることは あやめ草 根長き命 あればなりけり...
貫之集 498
はるかにも こゑのするかな ほととぎす このくれたかく なけばなりけりはるかにも 声のするかな 時鳥 木のくれ高く 鳴けばなりけり...
貫之集 497
はなとりも みなゆきかひて むばたまの よのまにけふの なつはきにけり花鳥も みな行きかひて むば玉の 夜のまに今日の 夏はきにけり...
貫之集 496
ふぢなみの かげしうつれは わがやどの いけのそこにも はなぞさきける藤波の 影しうつれば わが宿の 池の底にも 花ぞ咲きける...
貫之集 495
さくらばな ふりにふるとも みるひとの ころもぬるべき ゆきならなくに桜花 降りに降るとも 見る人の 衣ぬるべき 雪ならなくに...
貫之集 494
ちはやぶる かみのたよりに ゆふだすき かけてやひとも われをこふらむちはやぶる 神のたよりに ゆふだすき かけてや人も われを恋ふらむ...