ヒスイ海岸という名前を初めて聞いたとき、
子供のころのようにわくわくしたことを覚えている。
たまたま見ていたテレビで特集されており、
遠方や近所からありとあらゆる人々が
ヒスイを拾いにその海岸にやってきていた。
ヒスイを拾いにいくなんて、絶対に面白い。
調べると自宅からそう遠くなかったため、
早速ヒスイを拾いにいった。
その海岸は砂利浜で、砂の上にびっしりと
大小さまざまな石がひしめきあっている。
砂浜しかみたことがなかったため、
それだけで感動してしまった。
波が寄せるたびに独特の音がする。
たくさんの石が擦れる音だ。
どの石も海水で濡れており、夏の強い日差しを
受けて輝いている。
もはやヒスイかどうかは半ばどうでもよくなり、
きれいな石を探して夢中になって拾い続けた。
近所でヒスイの鑑定を無料でやってくれるというため、
石を見せにいった。拾った中からヒスイらしき石を見繕い、
これなんですけど…と石を出すといい終わる前に、
慣れた手つきのおじいさんは「全部違う!」と言い放つ。
そんな一瞬でわかるものなのか…と呆然としていると、
おじいさんは「これが、本物」と、無表情はできるだけ
崩さないように、少しだけ自慢げにヒスイを見せてくれた。
それは水に濡れていないにも関わらず、細かい粒子が
きらきらと石のなかで踊るように輝いていた。
確かに一目見てわかる。
結局、拾った石を返すのももったいないので
自宅の水槽にいれた。ヒスイではなかったが、
メダカが泳ぐ水槽に沈む石はきれいだった。
今年こそはここに本物のヒスイをいられるだろうか。
(3月19日 冬雨 記)
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