就職人気ランク上位にない楽天、ソフトバンク
「IT産業は学生からの人気を回復できるのか」。こんな刺激的なテーマのイベントが2007年10月30日、独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)が主催して、都内で開かれた。このイベント「IPAフォーラム2007」では、東大、筑波大や日本電子専門学校などの理系学生10人とIT業界人2人が討論会を開いた。その模様を報じたアイティメディア配信の10月31日付@ITニュース「IT業界不人気の理由は?」によると、討論ではIT業界に対してかなり厳しいイメージが述べられた。
それは、新3Kに加え、次のようなものだという。
「規則が厳しい」「休暇がとれない」「化粧がのらない」「結婚できない」
どのような背景からこれらのイメージが語られたかは、記事では分からない。が、この4Kはあくまで、3Kのイメージがさらに悪化したことに対して誇張した表現らしい。
本当にそこまで、学生の就職人気が落ちているのだろうか。J-CASTニュースが、毎日コミュニケーションズ広報課に問い合わせると、人気下降の程度は必ずしも大きいとは言えないが、業界全体のランクが年々下がっていることは確かという。その背景として、就職氷河期にもかかわらず大量採用され、SE「30代定年説」が言われるほど、「きつい」、「厳しい」といった認識が定着してきたことを挙げる。そして、学生は、福利厚生や待遇を重要視しており、プラスの評価に転じる要因が見当たらないとしている。
大学生の就職人気企業ランキングをいくつか見ても、楽天、ソフトバンクといった有力IT企業は、上位に登場していない。日経が07年2月9日に新聞発表した調査によると、総合100位以内のIT企業は、46位のNTTデータ、68位のマイクロソフト、94位のNTTコムウェアといったところだ。調査を担当した日経HR編集グループでは、「大きなIT企業はそれなりの人気があるようですが、大量のSEを抱えているような企業は上位に入っていませんね。ゼネコンと同じで、下請け、孫請けといったIT企業は不人気になっています」と話す。
ホリエモンの不祥事発覚からイメージ悪く
毎日コミュニケーションズが07年3月12日に発表した調査では、総合ランキングはないが、理系で、23位のNECソフト、27位のNTTデータ、88位のマイクロソフトなど100位以内に入る企業が出た。ところが、文系では、IT企業はほとんど見られなかった。同社広報課によると、IT業界には学んだことが生かせる理系の志向が強く、ホリエモンの不祥事発覚からイメージが悪くなって、文系からはベンチャーにも人が集まらないという。
「IT業界は、たとえ学生の志望業種の2番手、3番手に入ったとしても、なかなか1番手になれない。その結果、より志望度の高い業種が採用枠を増やし、そこで内定がとれてしまうと、IT業界まで学生がまわってこない」
同社の別の部署の担当者は、このように指摘した。
ネットでは、IT業界はどう語られているのか。ミクシィには、750人ほども参加する「IT業界の病理」というコミュニティが作られ、活発に議論が交わされている。中には、次のような定義が。
「【プログラマ】=不条理なSEの言葉をプログラム言語に翻訳できるスゴイ頭脳の人
【SE】=顧客と話して仕様書を書き直し、プログラマと話して仕様書を書き直し、納品後も仕様書を書き直し続ける人」
コミュニティには、「このIT業界って残業残業残業…もうありえん(中略)鬱病まっしぐらのような気がします…」(中略は、編集部挿入)といった相談が寄せられ、メンバーから次々にアドバイスが送られていた。
もちろん、こうした声には、反論もある。@ITニュースによると、前出の討論会では、参加したIT業界人から、「必ずしも全員が3Kではない」「3Kの"帰れない"は、帰りたくない人が帰れないだけ。スケジュール管理の問題だ」などの意見が出ていた。主催したIPA広報グループの担当者は、「SEなら、大きなシステムを作り上げ、製品化されて動き出したときの喜びがあります。そこに生きがいを感じている人も多いようです」と話している。