ムリョーカ小説集

Мориока моя любовь.
盛冈我的爱。
初めは短編小説にするつもりでしたが、長編になるかも知れません。

奴隷と大衆

2023-06-15 05:49:00 | 序盤
今朝も雨降りだ。
軽トラックで田んぼに向かい農道を走っていると、助手席に漆黒のアリスが現れて僕にこう言った。
「奴隷には参政権はなかったのよ。
政治を考える事ができるのは奴隷から搾取して有閑生活を手に入れた支配階級のみだから。彼らは本を読み、考える時間があった。奴隷の仕事は考えることではなく、生産することですものね。
女にも参政権はなかったわ。
女は子孫を産み育てるもので、社会を運営する仕事は男のものであると考えられたのよ。スパルタなんか、女も戦闘員の国ではアテネよりもはるかに女の社会参加が進んでいたのはそういう考え方の違いね」
「それは古代ギリシャの事だろう?今の民主主義とは違うよね」
「米国でも奴隷参政権は長く認められていなかったのよ。古代だけの話じゃないのよ」
「つまり、政治について考える能力がないとイメージされていた人々には参政権は無かったと、そういうことかな」
「一般化すればそういう事だと思うわ」
「でも今はそういう差別は無くなった」
「今は、大衆がそれにあたるのよ」
「でも参政権はあるよ?」
「奴隷は主人に逆らわないものなの。主人がマスコミを通じて奴隷に意思を伝え、奴隷はそれを察して主人の思惑通りに投票する。つまり大衆は主人の投票を代行するマシンのようなものなのよ」
「それは穿ち過ぎじゃぁ...」
田んぼに到着し、横を見るとアリスの姿は無かった。
助手席には黒い猫の毛のようなものが張り付いていた。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿