ムリョーカ小説集

Мориока моя любовь.
盛冈我的爱。
初めは短編小説にするつもりでしたが、長編になるかも知れません。

暗黒の喇叭は吹かれた

2023-06-18 05:54:00 | 序盤
今朝はラジオで緊急速報が流れた。
ロシアがウクライナに核兵器を使用したのだとアナウンサーは興奮を抑えられないように口早く喋っていた。
僕は、とうとうやったかと思った。
当然やるだろう、米国なら。もしかしたらやったのはイスラエルかも知れないが、ロシアではないだろう。
ふと助手席を見ると、漆黒のアリスがいつのまにか座っていて、なにかの本を読んでいた。車を止めて覗き込むと、それはバッハの音楽の捧げ物の譜面らしかった。アリスから美しい調べが聞こえてきた。

僕はいつの間にかとても広く清潔な部屋の中でアリスと向き合って座っていた。彼女の前には小さな小さなピアノが置いてあり、ピーナツの誰かのような格好で先ほどの譜面を見事に弾いていた。
僕はアリスに、核戦争について自説を喋り始めた。
強欲な資本家達がもっぱら強欲な英米の政治家達を使って人類を支配しようとしているのだと。

するとアリスは厚い毛皮の奥の目を細めて僕にこう言った。
それは一面の真実ですが十分ではないのです、と。強欲だけではなく、善人を、神を、全ての善と真理を穢すことこそ、彼等の願いなのだと。

そして続けて、それを見せる為にある所へ僕を連れて行ってくれるのだと言う。

目の前に扉が現れた。
その扉の上には金の彫り物が掲げてあり、そこにはこう書いてあった。
『今、知ることは許された』と。

--序章終わり


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