ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ グレイテスト・ショーマン (2017)

2018年04月03日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
ポジティブな語り口に徹し、常時明るく華やかでスリリングな点。ハッタリではなく進行説明(時間)の節約にCGを駆使した点。無自覚さを装いながら権威とタブーを撃ってみせた点。この三点に置いて巧妙かつ真摯なミュージカル映画なのだが、なによりも理屈抜きで面白い。

そう、面白いのだが、観ているあいだすっと何か心に引っかかっていた。たぶん「最も崇高な芸術とは人を幸せにすることだ」という、みえすいた綺麗ごとの裏に、階級、成り上がり、好奇、偏見といった人間の抜き差しならない“醜悪”さへの問題意識が隠されているからだと思います。

それをランダムに列挙してみます。

大衆の好奇心を満たして喝采を浴びるフリークスの幸福。そのフリークス演芸の無意識の攻撃性に恐怖を感じとり、自分より下位の存在である彼らの成功を妬む経済的貧困者の過激な抗議活動。同じように、成り上がり者(とその家族)に対する優位性の喪失を本能的に恐れる上流家族(実家)の既得及び差別意識。

虐げられた者(P・T・バーナム)が幸福を追求するモチベーションが復讐心と表裏一体であることの是非。異形も至芸も上昇するための手段だと割り切る合理性の功罪。

さらに、本質は成り上がり者でありながら、その外的要素にすぎない歌+美形(北欧の歌姫)を盲目的に支持、陶酔する大衆心理。さらに、その喝采を真に受けて、あるいは利用して純粋芸術を気取る演芸(歌唱)に対する評価と、その評価者の高慢と虚構(権威)性。

無理やり結論を急ぐことなく、このわだかまり(モヤモヤ)をこっそりと、しかし確実に臭わせてみせたことが本作の隠れた成果だと感じました。

「最も崇高な芸術とは人を幸せにすることだ」なんてい言ってみたところで、映画だってミュージカルだってサーカスと同じ見世物でいいじゃないですか。キワモノをみて幸せになったことのある正直者なのに臆病者の私は「別に“芸術”にこだわらなくてもいいじゃないか!」と小さな声で言ってみるのでした。

(3月31日/TOHOシネマズ)

★★★★

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ■ BMP ビート・パー・ミニッ... | トップ | ■ blank13 (2017) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」」カテゴリの最新記事