
安藤モモコの初監督作「カケラ」が面白かった。
監督は1982年生まれの28歳。
最近、20歳代の若い監督たちの映画が目につく。
81年生れの内藤隆嗣(「不灯港」)や真利子哲也(「イエローキッド」)。
もうすぐ「川の底からこんちは」が公開される石井裕也監督も83年生まれの26歳。
これまでの作り手たち(私の中では「山下敦弘」までなのだが)と
一線を画す「新しい現状感覚」を彼らの映画に共通して感じる。

例えば、演じる俳優たちに求めらている人物造形は、
身近にいるかもしれない、いや確かにいる男女であり
映画的にデフォルメされてはいるものの
主人公たちの言動はリアルな日常感覚を発散している。
映画に通低しているのは物語のトーンの明暗にかかわらず
いささか楽観的にもみえる「次へ」の進展の予感だ。
彼らの思いは決して閉塞したり浮遊したまま終わらない。

彼らは、いま確実に日本映画界にさざなみを起こしている。
小さな波は集散をくり返し、やかて大きな波になるかもしれない。
この数十年、日本映画界には起きなかった刺激的なうねりだ。
そのためには、彼らが最低でも一年に一本、映画が撮れる環境であって欲しい。
そして、彼らを正等に評価する映画ジャーナリズムと、
期待を込めた熱い視線を送り続ける観客の存在が不可欠なのだ。
外面のみ華やぐ虚飾の繁栄ではなく、
地に足の着いた活性が起きるか否かの正念場の予感がする。
※写真は上から「カケラ」(安藤モモコ監督)、「不灯港」(内藤隆嗣監督)、「イエローキッド」(真利子哲也監督)