ぽんぽこタヌキの独り言 Solilokui dari Rakun Pompoko

日本を見て、アジアを見て、世界を見て、徒然なるままに書き記す、取るに足らない心の呟き

増加する「金の密輸」について

2017年06月18日 19時32分01秒 | Weblog

最近、金の大量の盗難や闇取引、密輸入などが横行しているようである。発覚した事例を見てみると、7億3,500万円の現金を、無申告で香港に持ち出そうとしていた韓国人4人が逮捕された。どうも彼らは、金塊の違法取引に関わっていた可能性があるとみられている。無申告で、密輸した金塊を日本国内で売り捌き、それで得た現金を香港へ持ち出し、また金を買い付ける計画だったらしい。昨年7月に、福岡市博多区で発生したケースでは、警察官を装った男たちにより6億円相当(約160Kg)の金塊が盗まれ、事件後すぐに4億円分が換金されたようである。この換金には、貴金属店が名義貸しをして、法人取引を装ったものであった。また、マカオから自家用ジェットで金塊を持ち込んだ事例もあった。定員8人の機内に搭乗していた人数は2人で、機内に大型スーツケースを4個積んでおり、税関職員と沖縄警察が共同で検査を実施し、スーツケースから1Kgの金の延べ棒112本が見つかったという。金額にして4億8千万円分に相当する。また、ごく最近、発覚した佐賀県の事例では、唐津市のとある漁港で、金塊 206Kg が押収された。

全国的データによれば、2015年7月からの1年間(15事務年度)の事件数は、前年比 1.7倍の294件、脱税額ベースでは、前年比 2.6倍の6億1千万円に達している。更に、昨年から今年にかけての1年間で、九州、山口での摘発件数は過去最多を記録しているようである。香港、韓国、仁川を結ぶ密輸金塊の国際ルートの存在が浮上している。

関空税関で聴取したところ、関空を経由する金密輸が、全体の4割に達しているとのことである。また、最近では、アセアン諸国からの密輸も増加傾向にあるらしい。先般、関西空港の税関にて、金製品の無申告持ち込みが発覚して没収された、アセアンの某国のご一行の事情聴取に通訳として、お仕事をさせていただいたケースでは、若干の相続資産を持つ青年が、シンガポールで金製品を購入し、家族7人が、金のブレスレットと金のネックレスを各々身に着けて、無申告入国をしようとしたケースであった。金の総重量11kgで、現在の金相場では、1g=4,500円 くらいなので、金額的には 4,950万円相当に上った。このケースは、新聞やテレビを賑わせているような組織的なものではなく、「犯罪」を意識しているのは、「主犯格の男」とサポートした「1女性」。あとは、「日本に連れて行ってあげるから、ネックレスとブレスレットを身に着けてね。」と誘われて、ついてきただけである。「空港に着いたら、返してね」とも言われていたようである。何も知らずに、喜んでついてきた家族たちにとってみれば、とんだ日本観光となってしまったわけである。

日本に金を持ち込む場合、1kgまで / 購入金額20万円までは申告不要であるが、それを超えると税関に申告が必要となる。香港やシンガポールでは、付加価値税や消費税の適用がないため、相場金額で購入でき、それを日本に無申告で持ち込むことができれば、販売価格には、8% の消費税分を上乗せして販売されることになるから、その 消費税分が純利益となる。日本では、将来的に消費税が10%にまで引き上げられる予定(2019年10月)であるから、これはさらに旨みが増すということになる。

韓国の場合は、輸入税3%と消費税10%が課せられるから、韓国で売却できれば、利ザヤは大きい。それでも、日本に持ち込むケースが増加しているのは、しっかりとしたブローカーが存在し、しっかりとしたバイヤーが確保されているのだろう。特に、九州、山口のエリアでの密輸が増加傾向にあるのは、いわゆる「闇社会」の資金源となっていると推察されている。気軽にネット販売が可能となっているネットショッピングの市場の広がりが、金の密輸後の流れに関する実態解明を難しくしているようである。 

第2次世界大戦以前、特に1929年の金融恐慌の前は、世界各国は金本位制を取っていて、各国の中央銀行は、その金の保有量に基づいて、兌換紙幣を発行していた。この金本位制の端緒は、地下資源豊富なロシアで芽生え、制度として確立していったのは、当時、世界経済をリードしていたイギリスのポンド価格が基準とされた。

世界恐慌以後、金本位制が崩れ、通貨の固定相場制を経て、通貨の変動相場制へと移行していった。1970年代には、中華人民共和国についても、鄧小平主導で、市場開放が進められ、その通貨「元」についても、完全な変動相場制の導入には至らなかったけれど、現状の「管理相場制」へと移行していった。

「ゴルバチョフ」主導で、「ソビエト連邦」の「ペレストロイカ」により、米ソの冷戦が終了し、中国経済の台頭、アセアン経済の拡大、など世界経済の「パワーバランス」が変化していき、従来の「有事の米ドル」「有事の金」という社会常識にも、微妙に変化が生じ、「アメリカ合衆国における保護主義の台頭」や「EU経済圏の足並みの乱れ」を背景に、「アメリカ合衆国経済の相対的低下」により「有事の円買い」という現象もみられるようになっている。

そうした「世界情勢」の微妙な変化により、「有事の金」がクローズアップされ、世界の金相場は、2000年前後の1トロイオンス当たり 250米ドル~320米ドル の水準から上昇を続け、2011年に最高の1,896米ドルを記録して以来、1,300~1,400米ドル水準で高止まりしており、円価格でも、1g当たり 4,300~4,500円の水準で、高止まりで推移している。

このような傾向は、今後も長期的な傾向として継続するであろうとみられており、この「金の密輸」事件は、さらに増加し続けることが予想される。


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