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駆け出しの弁護士が思いつきで書くブログです

司法修習について(二回試験~注意事項まとめ)

2016-10-03 01:27:30 | 司法修習
3.注意事項

最後にまとめ的に注意事項を述べていきます。あくまで私見ですので、一意見として参考にしていただければ幸いです。

(1) 全科目共通

①時間内に紐でつづる

当然ですが、絶対的に必要なノルマです。
試験前に必ずアナウンスされることにもかかわらず、毎年綴れない人が数人出るようです。
確かに時間に追われていると、紐より答案を完成させたいということに意識が向いてしまう気持ちも理解できますが、あらかじめ紐を通したうえで答案を書くなど、自分なりに工夫して必ず紐だけは結びましょう。


②ページ番号をふり間違えない

これも時間がなくて焦っているときには結構間違えがちです。
最後にまとめてページ番号をふるという人は、答案用紙が重なっていないか注意しましょう。


③途中答案を避ける

①②よりも相対的に重要度は下がりますが、司法試験よりも途中答案に対する評価は下がるようです。
特に、小問を白紙にするのはもったいないので、先に解くのも有効です。


④時間配分に気を付ける

集合修習起案の段階から、記録を読むペースをつかんでおきましょう。
途中でしっくりこない点がある場合であっても、一旦保留にして読み進めれば理解できることもあります。
時間が足りなくなるとどうしても焦ってしまって、かえって記録が頭に入らなくなるので注意が必要です。


(2) 民事裁判

・訴訟物を間違えない

ここを間違えると大打撃になりますので、事件名やよって書きを必ず確認して素直に書きましょう。


・固い事実から認定する

ジレカンで整理されている「争いのない事実」等の固い事実から認定していきましょう。
数撃って勝負できる科目だと思うので、認定事実は豊富にあげましょう。


(3) 刑事裁判

・重要な事実から認定する

民裁とかぶりますが、記録上検察官及び弁護人が重要視している事実に必ず着目しましょう。


・推認過程を丁寧に分析する

全科目の中で、一番慎重な事実認定を要する科目だと思いますので、反対仮説が成立する可能性を積極的に検討し、答案上に「悩み」を表現するよう意識しましょう。


(4) 検察

・公訴事実を間違えない

民裁における訴訟物並みに合否にかかわる部分です。検面調書をよく読んで、記録上担当検事が意図しているところを素直に汲み取りましょう。


・型(ルール)を守る

検察起案は型が命ですので、検討事項を落とさないように注意しましょう。
また、自白を事実認定に用いることの可否等、起案上のルールに従いましょう。


(5) 民事弁護

・当事者を間違えない

形式的な所ですが、原告・被告いずれの立場で起案するか必ず確認しましょう。


・(最終準備書面起案)相手方の主張から逃げない

最終準備書面起案型の場合は、自分の主張の裏付けと共に、相手方の主張が成立していないことにも触れる必要があります。


・(見通し起案)誘導に逆らわない

法律構成を何個も立てる作業は難解ですが、必ず設問に誘導があるので、それに従っておけば大外しすることはないはずです。難しく考えすぎないことがポイントかなと思います。


(6) 刑事弁護

・被告人の意思をくみ取る

無罪起案なのか、認定落ちを狙うのか、結論に注意しましょう。


・メリハリをつけて弾劾する

検察官の立証構造を想定したうえで、争点となるところを重点的に叩きましょう。


・型を守る

刑事弁護における弁論要旨も型が重要になるので、供述の引用の仕方等も踏まえ、答案の作法を守りましょう。



修習に関する記事はとりあえずこれで以上になります。
研修所を卒業してから1年近く経とうとしていますが、思い出しつつ書いているうちに懐かしく、ちょっと切ない気分になりました笑。

また思い出したことがあれば追記しようと思います。

司法修習について(二回試験~試験当日の流れ)

2016-10-01 22:42:04 | 司法修習
1.二回試験の概要

(1) どのような試験か

おおざっぱに言えば、司法修習の卒業試験に該当するものです。
形式は集合修習起案とほぼ同様で、五科目それぞれについて事件記録を検討し、処理方針を解答します。

合格率はここ数年95~98%となっており、普通にやれば普通に受かる試験とも言われていますが、5日間にわたるタフな日程であることや、不合格だった場合のダメージなどを色々考えると、ある意味やりにくい試験と言えます。


(2) 試験会場・試験時間・日程など

メイン会場は和光の司法研修所ですが、関西方面の修習生用に、例年大阪にも会場が設けられるようです。

試験時間は、午前10時20分から午後5時50分までの7時間30分で、集合修習の起案よりもトータルの時間は長いですが、時間に余裕があるというわけではありません(私の受験時には、問題量が集合起案よりも増えて調整されていた気がします)。
お昼事情についても集合修習と同様、正午から午後1時までの建前となっていますが、研修所の売店も閉店しており外出も禁止されているため、ほとんどの修習生が自席で食べながら起案を続けます。

途中退出は午後2時頃より認められていたような記憶です。
試験終了後は答案回収が行われますが、試験室からの退出が許可されるまで数十分程度かかります。
回収作業では一つ一つの答案につき紐がきちんと結ばれているかチェックがなされ、その様子を修習生が固唾をのんで見守るという、何とも言えない緊張感に包まれます。

日程は、例年11月下旬に開催され、1日1科目の計5日間ですが、間に休日をはさむことが一般的なようです。
私の場合、前半2日間が民事系科目で、休日を挟み後半刑事系3科目という日程でした。
科目の順番も年によって異なると思われます。


(3) 持参物

必須なのは、受験票、筆記具、そして食糧です。飴等の軽食も机の上に出しておけば試験中摂ることができます。
私は糖分補給にと思いチョコレートを持っていきましたが、試験中は答案作成に夢中で食べる暇もなく、結局試験後に食べて疲れを癒していました。
反対に、携帯等の電子機器は試験開始前に集められ、箱の中で管理されます。


(4) 服装

特に決められていないので私服でも大丈夫ですが、男性はスーツを着た人が多かった記憶です。
研修所での受験の場合、行き帰りの徒歩やバスを待っている時間での防寒が必要になる一方で、試験中教室によっては熱気がこもるところもあると思うので、適宜調整できる服装良いと思います(スーツを着たいという方もネクタイまでは必要ないと思います)。


(5) (不)合格発表

合否の発表は例年12月中旬に行われるようです。
ほとんどの修習生が合格する試験ということもあり、不合格者の受験番号だけが研修所の入り口付近に掲示される方法がとられます。
掲示物の写真撮影も基本的に禁止なので、自分で直接確認しに行くか、知り合いに頼んで確認してもらうことになります。


以下は私の経験談を中心に書いていきます。


2.二回試験前後の過ごし方


(1) 試験前の過ごし方

私は修習A班だったので、集合修習の終了から選択型実務修習を経て二回試験、という流れでした。
A班のメリットは、集合修習の起案の反省点を踏まえて、二回試験までの間に自分の起案の分析や弱点の補強ができる点になります。
他方、1日かけて起案を行う機会はないので、答案作成の感覚は鈍るように思います。

私の場合は選択型実務修習で民事裁判修習を再履修し、裁判官に民事の事実認定の手法をみっちり教わったので、事実認定の感覚で不安に陥ることはありませんでした。
また、ホームグラウンド修習も積極的に自習をさせてくれる雰囲気ではなかったのですが、課題の間にこっそり要件事実の復習をしたりしていました。

試験前の自習となると、やはり小問対策も踏まえて知識の詰め込みが中心になると思います。民事系は、要件事実、執行・保全、弁護士倫理、及び債権総論・各論の知識の確認、刑事系は、検察起案の型の記憶、事実認定における判断要素の復習、刑法の各構成要件に関する定義・判例、及び勾留・保釈要件等刑訴知識の確認あたりになるでしょうか。

これらに加え、可能であれば他の修習生とゼミを組み、定期的に議論の場を設けることが非常に有効かと思います。私の場合も、友人4人とゼミを組み、週1回ペースで他のクラスの優秀答案の分析・検討や、各科目の対策を行うための集まりを開いていました。二回試験の突破のためにはとにかくマジョリティの解答から外れないことが大事なので、事実認定の検討結果について仲間とすり合わせを行う作業は、自分の考えのズレを修正できるという点で大変有用です。また、選択型では他の修習生と顔を合わせる機会が少ないので、精神衛生を保つ意味でも良い機会となりました。


(2) 試験前日から当日の流れ

研修所で受験する場合、鉄道の遅延リスクを考えて近くのホテルに宿泊する人が多いようです。
部屋の争奪戦は8月頃から始まるらしく、特に和光駅前のホテルはすぐ埋まってしまいます。
私は試験会場から少し離れてリフレッシュしたかったのもあり、池袋に宿泊していました。
ただ、毎晩夜中に外国人観光客が廊下でどんちゃん騒ぎをしていたので、寝心地はあまり良くありませんでした。

食事は、風邪が流行り出す時期だったので、外食はなるべく控え、無菌状態が担保されていると思われるコンビニの弁当で毎日をしのいでいました。

一生に一度の試験だと思い普段以上に神経質になっていましたが、今考えればこれが二回試験の魔力だと思います。


(3) 試験当日の流れ

初日は司法試験と比べると緊張していませんでしたが、それでもあまり良く眠れませんでした。
朝7時ころに起きて、東武東上線の運行状況を確認し(東上線はかなりの頻度で遅延するので注意が必要です)、シャワーを浴びて、時間に余裕を持ってホテルを出るように心掛けました。

ホテルの傍のコンビニで昼食と栄養ドリンクを調達し、近くのカフェでコーヒーを飲みながら自習用教材にざっと目を通した後(この時も風邪予防のため、コーヒーは紙コップでもらうような徹底ぶりを貫きました)、和光に向かいました。このルーティーンは結局5日間続けました。

研修所に着くと、すぐには試験室に入れず、講堂で待つよう促されます。1時間前ぐらいには着いていましたが、既に結構な人数が集まっていました。私も直前に自習して過ごそうと考えていたのですが、運よく(?)5日間毎日日替わりで実務修習で同じ班だった人や同じクラスの友人と遭遇したため、結局談笑して過ごしました。

試験開始15分前くらいに試験室に通されますが、試験監督のスタッフは一部屋あたり4~5人態勢となっていたようです。私の受験した前年に派遣スタッフのトラブルがあったようで、それを意識してか皆さんハキハキとあいさつし、テキパキと動いていました。


実際に試験を受けた感覚は、集合修習中とほとんど変わりませんでした。私の試験室はクラスで使っていた教室の隣の教室だったので、特に違和感なく試験に臨めました。
ただ、時間配分には気を付けたほうが良いです。予想以上に記録を読む時間がかかると、焦りが生じかえって記録が頭に入ってこなくなったりするので、頭から完璧に読もうとせずに、まずはおおざっぱに読んで内容を把握してしまうなど、自分なりの読み方を決めておいた方が良いと思います。
また、時間切れで小問に手が回らないのはもったいないので、先に解いてしまうのも手です。


試験終了15分前くらいになると、監督スタッフが紐で結ぶよう再三催促してきます。
この時点でまだ紐を結んでいない人には、結ぶまで傍らに立ってプレッシャーをかけてくるので、ここは素直に従いましょう。

試験終了後、回収作業が終わると午後6時30分頃になっていました。この時間帯になると帰りのバスが混むうえ、必ずと言っていいほど答え合わせをする人の会話が耳に入ってきます(ちなみに、バスの中で私の近くに乗っていた修習生3人の会話では、1人が明らかに結論を異にして書いていたようで、会話が進むにつれ段々と自信喪失していく姿が如実に見て取れました)。

試験室で私の前に座っていた修習生は、全ての科目で2時間ぐらい前に途中退出していました(おそらく不合格にはなっていなかったと思います)。初日は驚きましたが、悩んでも結論はさして変わらないと思ったのと、帰りの煩わしさからすると終わり次第早めに抜けるのも手かなと考え、2日目以降時間の余った科目は早退してしまうようにしました。

試験後はホテルに戻って夕食を食べましたが、翌日の科目の勉強をする気にもなれず、テレビを見ながら頭と体を休め、日付がかわる頃には寝ていました。


一日の流れとしてはこのような感じで、良く眠れなかった以外は特にトラブルもなく終わりました。試験から解放され、最終日の夜は無駄にテンションが上がっていたというのもあり、池袋の激辛ラーメン屋に行って派手にお腹を壊しました。


(4) 試験後から不合格発表まで

試験後発表までの2週間は、適当にのんびりしつつ、引越しや英語の勉強をして過ごしました。
自分では大きなミスをした自覚はなかったので、受かっているだろうとは思っていましたが、「不合格の自覚がない人も落ちていることがある」との噂も聞いたことがあったので、完全にすっきりした気持ちにはなれませんでした。

合否の発表は、自分の目で研修所まで確かめに行きました。確認したその日のうちに、今の職場や弁護修習でお世話になった先生に連絡しました。友人たちからも全員合格したとの報告があり、後日忘年会で実務での活躍を誓い合って一年を締めくくりました。

司法修習について(刑事弁護起案)

2016-09-25 03:11:37 | 司法修習
6.刑事弁護起案

(1) 事件記録の概要

民事弁護と同様、設問の傾向によって異なります。
後記①弁論起案であれば、公判に提出された証拠及び証人尋問・被告人質問調書となります。
②想定弁論起案であれば、検察官から開示された証拠及び弁護側提出証拠となります。


(2) 設問の概要

傾向としては2パターンあります。

いわゆる①従来通りの弁論起案は、公判記録を読み、最終弁論を起案するものです。
これに対し、②想定弁論起案では、第1回公判前の段階を想定し、供述調書通りの証言や供述が公判廷の場でなされるものと仮定して、最終弁論を起案することになります。
ただ、いずれの場合も、検討内容としてはさほど変わりません。

その他、自白の任意性を検討させる小問や(通常は弁論内で検討するものですが、異議申立書の起案として独立した出題がなされました)、異議を出すべき検察官の質問を指摘させる小問がありました。


(3) 解答のコツ

原則として無罪を前提として起案することになりますが、たまに縮小認定を狙うパターンもあるので(強盗→暴行など)注意しましょう。

手順としては、検察側の立証構造を把握して、事実認定や推認過程が不自然・不合理であることを淡々と指摘していきます。
もっとも、従来言われていた純粋な「加点式」はとられていないようで、検察側立証のポイントを意識して、重要なところは厚く書くなど、答案にメリハリを付けることが求められるようです(刑事裁判起案と同様、公判審理における争点を意識した起案が求められている気がします)。

刑事弁護特有の事前準備というのは特段必要なく、刑事裁判起案での事実認定の延長として考えておけば十分です。ただ、刑事弁護起案もある程度の型があるので、任意性・信用性の弾劾の視点を含め、答案の流れを頭に入れてしまっておけば、何を書いてよいか迷うということはあまりないと思います。

ポイントとなるのは供述の信用性の弾劾ですが、証言や自白における特定の発言を記録中の項番号を引用しながら指摘することが大事です。
また、弾劾の視点として「合理性がない」「虚偽自白の動機がある」などと、抽象的な結論になってしまいがちですが、事情をできるだけ多く拾って具体的な検討を心がけるとよいと思われます。

なお、尋問に関する小問は刑訴規則の知識を問うものですが、分野別修習や集合修習の模擬裁判で一度は触れるところですので、特に意識する必要はありません。


(4) 対策用文献

ア.白表紙

起案との関係で言えば、バイブルたる「刑事弁護実務」よりも、「刑事弁護講義ノート」を抑える方が効率的と思います。なお、刑事弁護は被疑者をA、被害者をVなどと略記が認められているので、上でも述べましたが、答案の型を含めた形式面を頭に入れておきましょう。

イ.刑事裁判起案対策用文献

事実認定の弾劾は、裁判官に疑念を抱かせる程度に反論を行えばよいので、刑事裁判の事実認定の裏返しの作業となります。刑事裁判の事実認定の手法を理解しておけば、自然と刑事弁護対策にもなると思います。

司法修習について(民事弁護起案)

2016-09-23 00:41:41 | 司法修習
5.民事弁護

(1) 事件記録の概要

後記の出題パターンによって内容も異なります。

①最終準備書面起案の場合、民事裁判の記録と同様、当事者の主張書面と証拠、尋問調書等です。これらに加えて、当事者からの聴取記録もあったような記憶があります。

②見通し起案の場合、訴訟を提起する段階より前に収集した記録、具体的には当事者及び相手方からの聴取記録や当事者から預かった資料から構成されます。


(2) 設問の概要

出題パターンは大まかに分けて二通りあります。

①最終準備書面起案
文字通り、証人尋問が終了した段階を想定し、原告側又は被告側の立場から主張をまとめた最終準備書面を起案するものです。
答案用紙25枚程度で解答の分量が指定されますが、あくまで目安なのでそこまで気にしなくてもよいと思います。

②見通し起案
訴訟提起前の段階を想定し、クライアントからの相談内容に照らして、どのような法律構成で主張を行えば有利に進められるか検討を求めるものです。
考えられる法律構成として考え得るものを全て挙げ、それぞれについて見通しの良し悪しを解答します。そして、一番見通しが良いと考える法律構成に基づき、訴状又は答弁書を起案します。

これらに加え、いずれのパターンにも共通の小問として、民事執行・保全の知識を問うもの、証拠説明書の立証趣旨を起案させるもの、法曹倫理からの出題がありました。


(3) 解答のコツ

①最終準備書面起案は、基本的には民裁起案と同様、要件事実と民法の知識があれば特別な対策は必要ありません。
ただし、民裁起案と異なり、一方当事者の代理人としての立場で主張することになるので、争点となっていない事実についても書面上触れる必要があります。主張の書き方も、「~と認められる。」というような第三者的な物言いではなく、「~であることは明らかである。」等、自信を持って主張をしている感を存分に出しましょう。
また、争点となっている事実については、相手方の反論から逃げず、反論が成立していないことを積極的に論証するように心がけると良いように思います。もちろん、相手方の抗弁等の主張に対しても徹底的に反論する必要があります。
なお、自分が原告側なのか被告側なのかを間違える人がいるようなので、注意しましょう。

②見通し起案は、近年導入された出題パターンのようで、慣れないうちはなかなか難解です。
対策としては、民法と要件事実の知識で足りますが、筋の良い法律構成を思いつくか否かはセンスの問題もあると思います。
傾向として、既存の証拠や法律関係の下で契約が成立していると言えるのか、という点や、より多くの金額の賠償を求めるには、債務不履行構成としてもどの点についての不履行を主張するべきか、という点で悩ませるものが多い印象です。いずれの法律構成をとっても、こちらに何らかの弱点があるように、問題が練られています。
ただ、無理にドラスティックな構成を考えなくても、一定の弱点を織り込んだうえでシンプルな法律構成を淡々と述べていけば、十分合格点になると思われます。
自分のとった法律構成が教官室の想定と異なっていても、大外ししない限り、(罪名を間違えると致命傷になる検察起案とは異なり)即不合格となるようなことはないようです。

小問については、白表紙を読んで少し勉強していれば簡単に答えられるものと思いますので、確実に正解して点数を稼ぎましょう。大問とは独立しているので、先に解いてしまう方が賢明です。


(4) 対策用文献
ア.白表紙
民事執行・保全のテキストには目を通しておきましょう。
その他、読み込めば起案成績に直結するようなテキストは特段ないと思いますが、訴状等の起案では請求の趣旨の言い回しや項目立てをド忘れして意外に書けないことがあるので、形式面はチェックするようにしてください。

イ.民裁起案の対策用文献
基本的には、要件事実・民法の知識の確認は民裁起案の対策の延長でよいと思います。

ウ.司法試験予備試験法律実務基礎科目ハンドブック〈1〉民事実務基礎(辰巳法律研究所)
予備試験対策でこの本を持っている人は、民事執行・保全や法曹倫理についてコンパクトにまとまっているので、利用してもよいと思います。特に法曹倫理はこの本に載っている程度の知識で十分です。

司法修習について(検察起案)

2016-09-20 01:19:43 | 司法修習
4.検察

(1) 事件記録の概要

被疑者が逮捕された段階から、起訴されるまでの間に警察及び検察が作成・収集した供述調書や捜査報告書です。


(2) 設問の概要

事件記録を検討し、被疑者の起訴・不起訴を検討させるシンプルなものです。
とはいえ、事実上不起訴が正解ということはなく、基本的には起訴の方向で公訴事実・求刑・犯人性・犯罪の成否等を起案・検討することになります。

検察起案は解答の形式が決まっており(白表紙「終局処分起案の考え方」に記載があります)、「解答しなければならないこと」を迷う心配はありません。
また、公訴事実は白表紙「検察講義案」末尾の公訴事実記載例を見ながら起案できます。

もっとも、注意が必要なのは、犯人性及び犯罪の成否を両方検討するのが原則となるところ、問題文において「犯罪の成否のみ検討せよ」などと解答範囲を指定される場合がある点です。
このような場合に指定されていないところを解答しても点数になりません。
また、被疑者が複数いる場合、問題文で指定されていない方の被疑者について検討してももちろん点数になりません。

これらのケアレスミスが二回試験の検察科目での不合格要因の最たるものとなるので、必ず設問を確認しましょう。

なお、刑事手続の知識を問う小問も1~2問あります。


(3) 解答のコツ

検討しなければならない捜査資料や解答事項が多く、全科目の中で最も時間が足りなくなります。
少しでも時間に余裕を持たせるために、1回目に記録を読む段階から答案構成を意識しておくとよいと思います。
私の場合、起案開始と同時に終局処分起案に書いてある答案の「型」の各項目を草稿用紙に書き出し、各捜査資料記載の事実につきどの項目で使うことになるかを意識しながら記録を読み進め、当該事実の記載されている記録のページ数を、適宜書きだした項目のところにメモしていくやり方で整理していました。このようにすれば、後に答案で適示した事実につき証拠を引用する際、探さなくて済むので時間を大幅に短縮できます。

また、事件の概要を把握しておくために、最後の方のページにある検面調書を先に呼んでしまうという裏技もよく使われます。起訴直前の検察官視点で、起訴裁定に必要な情報が盛り込まれており、そこでなされている検察官の質問も、事案のポイントとなる点を暗示する誘導になっていたりします。

公訴事実の起案は分量としては解答用紙1~2枚ですが、配点は全体の2割ほどを占めているらしく、ここで指摘する罪名(どの罪で起訴するか)も他の解答部分の内容に影響するので、慎重な検討が必要です。送致後の捜査の進展によって、送致事実(警察官が判断した罪名)と異なる罪名で起訴することが想定されたパターンも頻出で、罪名を間違えると、犯罪の成否部分の点数が入らず、かなりのダメージを受けます(なお、全体の出来が悪くて罪名ミスの修習生が多数いるような場合は、相対的に点数が下がるだけで致命傷にはならない場合もあります)。
これについても起訴直前の検面調書をよく読んで、検察官が何罪で起訴することを念頭に聴取しているのか、素直に察するようにしましょう。

求刑については、刑法の罪数論の観点から、違法求刑しなければOKのようですが、検察の量刑相場は最後までよく分かりませんでした(私の感覚では少し厳しめに求刑することがポイントかもしれません)。

犯人性については、「型」どおり、捜査資料から認定できる事実を指摘し、犯人性を基礎づける事情との関係で意味付け(推認過程)を検討していくことになりますが、指摘する事実が資料上所与のものではなく、再間接事実からの推認を辿らないと認定できない事実について、見落としをしないことが重要です。なお、教官談では、再間接事実を丁寧に組まなくても、間接事実の一つとして並べる形でもよいから、とにかく解答上指摘してほしい、書いてあれば採点対象にできる、とのことでしたので、形式にとらわれずとにかく事実を指摘して、自分の理解を積極的にアピールしましょう。
また、意味付けでは反対仮説による推認をつぶすような書き方(「●●という反対仮説も考えられるが、××という事情からは、その可能性は極めて低い」等)が好まれているようです。

犯罪の成否は、構成要件要素及びその解釈を指摘するのに、刑法の知識が若干必要になります。
司法試験の短答用教材で十分ですので、軽く復習しておくとよいと思います。

情状については、不利→有利の順番で書くことを間違えないことと、(検察官という立場的に)不利な情状を多めに書くということが肝要かと思います。

小問対策は、司法試験の刑訴法の知識で解けるものがほとんどですが、白表紙の「検察演習問題」がネタ元になっているようです。


(4) 対策用文献

ア.白表紙

とにかく「終局処分起案」を熟読することにつきます。答案の型については、各項目の書きぶりや略記の方法を暗誦するなり紙に書くなりして、完璧に覚えて臨むことが必要です。
「検察講義案」は研修所起案では持ち込み可なので(二回試験は持ち込み不可です)、特に読み込む必要はないと思います。
「検察演習問題」は、最新版の解答集が出回っているらしいので、入手できれば一読するくらいでよいでしょう。

イ.犯罪事実記載の実務刑法犯

いわゆるピンク本と呼ばれるもので、マイナーな罪についても公訴事実記載案を網羅しているっ辞書的なものです。もちろん、通読する必要はないですし、研修所教官室作成の案と若干異なる書き方になっている点もあるので、参考書程度に使うのが無難かもしれません。

ウ.非公式資料

これまた、熱心な有志による公訴事実記載案のまとめや「犯罪の成否」対策用の刑法各論まとめノートも出回っているようなので、入手できたら適宜利用しましょう(なお、内容の正確さについては自己責任です)。