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静かに海は広がる

駆け出しの弁護士が思いつきで書くブログです

国選弁護について

2016-10-18 00:31:29 | 弁護士業務
今回は国選弁護について書こうと思います。

弁護士会によって扱いが異なるかと思いますが、私は1年目の義務研修として国選弁護を受任しました(事件としては、被疑者段階で終わってしまいました)。

大まかな流れとしては、受任当日に法テラスで事件を受任し、裁判所に向かい、諸々の選任手続を済ませた後、勾留質問を終えたばかりの被疑者と接見し、事情聴取を行います。
その後は、毎日~2日1回くらいのペースで勾留されている警察署まで接見に行きつつ情報を収集し、必要があれば親族や事件関係者と接触して、早期の身柄解放及び不起訴に向けた弁護活動を行います。

受任時には被疑事実と被疑者の情報のみが記載された資料を閲覧することができ、その情報をもとに受任事件を選ぶことができます。
もっとも、私のときのように、受任日に1件しか配転が無いような場合は、事件を選ぶことができないこともあります。

新人弁護士用の事件は軽微なものが選別されるよう配慮されているようですが、否認事件もありますし、別件と併合されて裁判員裁判に発展するケースもあるようですので、どの事件に当たるかは運次第ということになります。

裁判所における初回の接見では、限られた時間の中で要領よく必要最小限の情報を聞き出すことが大事かなと思います。見通しを立てるための事件の概要はもちろん、家族や職場の連絡先を(連絡してよいかを含め)確認することが必須です。被疑者が覚えていない場合には担当警察官が対応してくれることもあるみたいです。
初めて逮捕されるという人もいれば、既に色々経験済みで手続を熟知している人もいるので、臨機応変な対応が必要です。被疑者に対する接し方については、検察修習での取調べ経験が生かされると思います。

被疑者から一通り話を聞いた後は、その日のうちに親族その他身元引受人に連絡をとる他、担当検事にも連絡し、事件の見通しを含め所見を聞いておくと良いでしょう。被害者がいる事件の場合は、この時に検事から連絡先を聞いて示談準備を進めることになりますが、検事が難色を示す場合は間に入って連絡をとってもらうことになります。
刑事や検事は、基本的にはこちらと協議しつつ合理的に事件処理をしてくれると思いますが、理不尽なことを言われることもあるので、物怖じせず毅然とした態度で堂々と接しましょう。

被疑者段階の具体的な弁護活動は、①勾留の理由・必要性がないことを裁判所に主張して、身柄解放を目指すこと、②被疑者の要望に応えること、③公判に備えて被疑者に有利な事情・証拠を集めること、の3点が主になります。

①は、被疑者本人や準抗告・勾留取消請求書の起案の他、疎明資料の収拾や、上申書の作成も行います。必要があれば、裁判官や担当検事と直接面談し、事情を伝えるというのも手です。身体解放の見通しがあまりにも悪い事件の場合、これらの活動をどこまで本気でやるかという問題がありますが、もちろん被疑者から依頼されれば職務倫理上義務がありますし、ここで収集した情報は、起訴後の保釈請求や公判での情状弁護に役立つこともあるので、手を抜かずにやって損はないはずです。

②については、被疑者の親族との連絡や差入れなど、被疑者の連絡係として労を惜しまず動きましょう。

③についても、基本的には①と同様で、証拠が見れない分関係者から根掘り葉掘り事情聴取することが必要になります。

このような事情聴取や起案などは、通常業務で行っていることの延長になるので、普段の仕事の成果が大いに発揮されるところでもあります。
一人での仕事になるので不安はあるかもしれませんが、上司のご機嫌をうかがう必要もないので、自営業たる弁護士の仕事の醍醐味を感じられます。

とはいえ、被疑者にとっては人生を左右する一大事なので、ある程度の緊張感を持ちつつ、堂々とこなすことが大事かなと思います。


英語との付き合い方

2016-10-10 01:52:48 | 弁護士業務
久しぶりに日々の業務における所感を。今回は英語についてです。


各事務所の扱っている業務分野にもよるかもしれませんが、企業法務において英語に触れることは避けて通れないと思います。

国内の事業会社でも、今の市況では国内のみで事業が完結することは少ないと思いますし、海外の企業との取引や、海外から出資・融資を受けてビジネスを行うケースが少なくありません。

私の職場は外資系というわけではないのですが、全体の仕事の割合に占める英文契約書のチェック・作成の数は多いですし、海外の企業や法律事務所とのやり取り、会議に参加することもありました。


英語が流暢な方は、事務所から間違いなく重宝されると思います。ただ、英文契約書で使う表現や、英文ビジネスメールでの言い回しは、通常の英会話とはまた少し違うものですし、大学受験レベルの基本的知識があれば、将来の留学も見据えて仕事をしつつ英語力を伸ばしていく、ということも不可能ではないと思います(現に私も勉強中です)。

英語を使えると、やはり仕事の幅がぐんと広がる感覚があります。パートナーからも渉外案件を積極的に振られることになるし、その案件を通じていろいろな人とやり取りができるようになり、やりがいも大きいのではないでしょうか。


また、将来運よくパートナーになれた際、渉外案件も対応可能であるということだけで、大きなアドバンテージになるのは間違いありません。

正直言って、10年後または20年後、日本の弁護士業界が現状のままとは言い難いと思います。日本の大手事務所が海外で顧客開拓している可能性もあるかもしれませんし、逆に外資系事務所に国内シェアも奪われている可能性だって大いにあります。特に、国内の顧客シェアが飽和化している現状では、日本の事務所が外資系事務所を相手に国際展開していくことは近い将来あり得ることなのかな、とは思います。

いずれにせよ、企業法務の分野で将来食べて行こうと思うのであれば、いつ海外に放り出されてもいいように、それなりの準備をしておかなければいけないと痛感しています。


とはいえ、普段の仕事が忙しいと英語の勉強の時間もあんまり取れないんですけどね(笑)


弁護士業務について④

2016-09-10 03:11:01 | 弁護士業務
今週も長い一週間が終わりました。
皆さんお疲れ様です。

働き始めてからというものの、土日は比較的自分の時間を作れていますが、いずれか1日は職場に顔を出しています。
弁護士の中でも、休むときは休んでメリハリを付けて仕事したい人、だらけるのが嫌で毎日何かしら仕事をしていたい人・・・働き方はいろいろです。

根本的には「自営業」なので、仕事のペースを自由に決められるのが弁護士の強みといえるのでしょうか(なお、私のような雇われ弁護士には、そのような余裕はありません笑)。

導入はこれくらいにして、今回は普段の執務の様子について書きたいと思います。



・「パートナー」と「アソシエイト」


既にご存知の方も多いと思いますが、弁護士事務所は「パートナー」と呼ばれる肩書の弁護士が設立・運営しています。パートナーは事務所の経営者であり、自らの営業努力でクライアントを引っ張ってきます。
他方、弁護士になって間もない若手弁護士は、「アソシエイト」という肩書で働くことが通常です。アソシエイトはパートナーが持ってきた仕事を処理しつつ、パートナーの仕事の採り方を学びます。

事務所によっても異なりますが、アソシエイトでいる期間は5~10年であることが一般的のようで、ある程度年次がいけば留学や出向を経験し、やがてはパートナーに昇格します。

ただ、時が経てば自動的にパートナーになれるわけではなく、他のパートナーから共同経営者として認められるだけの能力に加え、自らクライアントを採れる営業力も必要になります。

大手事務所では、留学に行くまでは順風満帆でも、アソシエイト時代にクライアントからの信頼を得られなかった人は、ある程度能力が高くても閑職に追いやられたり、肩たたきにあったりするようです。

ですので、アソシエイト時代には、仕事を覚えるのに加え、クライアントとのうまいお付き合いの仕方を学ばなければなりません。ここらのセンスや感覚と言ったところは、最初に指導してもらうパートナーによって、成長率に大きく差が出ると思います。


・アソシエイトの仕事

私の場合、パートナーから降られた仕事を淡々と処理していくうちに一日が終わります。
私が所属する事務所は所属弁護士が十~数十人のいわゆる中規模事務所なので、比較的パートナーとの距離感が近く、わからない点があれば気軽に質問しに行けるなど、コミュニケーションがとりやすい職場だと思います。

大規模事務所だと、顔も名前も知らないパートナーからメールで指示を出されると言ったこともあるようです。

規模がそこまで大きくない事務所だと、必然的に打ち合わせへの同席や電話対応など、1年目のアソシエイトでもクライアントと接触する機会が多いように感じます。私も最初のうちはビクビクしながら応対していましたが、徐々に慣れてきて、今となっては会議でもパートナーと並んで普通に発言出来るようになっています(慣れって怖いです)。

ちなみに、大規模事務所だと、ひたすらリサーチだけ指示されて幅広い業務経験が積めない、と噂されることが多いみたいですが、知り合いの弁護士の話によれば、最近ではアソシエイトに会議に積極的に参加させるなど、従来の「アソシエイト使い捨て型」の慣習からの脱却を試みているらしいです。この点については、「大手に行くと偏った仕事しかできない」というのはやや偏見が強い感じがあります。

ただ、クライアントとの距離感や、案件を任される責任の大きさは、中小規模事務所の若手の方がやはり近い・大きいという感じはします。事務所の規模はともかく、いずれはパートナーとして自分の力でクライアントを集めないといけないことを考えると、若いころ稼げる経験値については中小規模事務所に軍配が上がると思います。


・事務所の雰囲気

私の事務所は、比較的静かな職場環境です。キーボードをたたく音と、電話に受け応える弁護士の声のみが執務室にこだましています。
修習でお世話になった事務所が賑やかな所だったので、働き始めた当初はある種のカルチャーショックがありましたが、今となっては慣れてしまい、逆に過ごしやすいように感じます。
この点の好き嫌いは人によりけりだと思うので、就活をされている方は、面接等で職場の雰囲気を聞いてみるのも良いかもしれません。

ちなみに、事務所の始業時間は10時頃が一般的のようですが、早いところだと8時半のところもあれば、逆に外資系事務所などは11時に出社する方もいるようです。ご参考までに。


・給料

額はさておき、アソシエイトは基本的に給料制が多いのではないでしょうか(1年分をまとめてポーンと渡す事務所もあれば、月給+ボーナスというところもあるようです)。
また、年次によって昇給するところもあれば、アソシエイト期間は一定額で昇給なし、としているところもあると聞きます。
就活されている方は面接等では聞きづらいことでしょうが、結構大事なことだと思うので(笑)、先輩や同期のネットワークを駆使して情報収集されておくのが良いかと思います。


今回はここらへんにして、続きはまたの機会に書きたいと思います。

弁護士業務について③

2016-09-09 00:58:23 | 弁護士業務
こんばんは。ブログを始めてはみたものの、仕事の合間を縫っての更新はやはりなかなか大変ですね(笑)。

緩いペースになるかもしれませんが、根気よく続けていきたいと思いますので、拙ブログをたまたまご覧になった方は末永いお付き合いの程よろしくお願いします。


さて、今回は「ファイナンス業務」についてお話しします。

大~中規模の企業法務系の事務所であれば、コーポレートに加えて多かれ少なかれ扱っている業種ですが、言葉だけが先行して実際にどのようなことをやっているのかイメージがつかない方も多いのではないでしょうか。各事務所のHPの「業務内容」の欄を見ても、シンジケート・ローン、デリバティブ、IPO・・・と横文字が並んで、ロー時代の私にとってはちんぷんかんぷんでした。
(一応、就職活動の際のエントリーシートで、興味ある分野の欄に「ファイナンス」と書いていましたが、実際何をしているのかよくわからなかったので、自分なりのイメージを話して何とか面接を乗り切っていました笑)


私も弁護士になってからファイナンスの仕事に何件か携わってはいますが、まだ全体像を把握しているわけではありません。
今回は私のわずかな実務経験をフルに活用しながら、完全に自己流の整理ですが、少しでも内容をイメージしてもらえるように説明していきたいと思います。


ファイナンス業務は大きく分けて「A.規制部門」と「B.取引部門」に分かれると理解しています。


A. 規制部門について


その名のとおり、金融機関の行為が特定の法律・行政規則等に抵触していないかをチェックし、助言を行う業務です。
証券会社や銀行などの金融機関は、その社会的影響力の大きさから、種々の規制を受けながら業務を行っています。
金融商品取引法の業法規制や銀行法などは、金融機関を名宛人とした規制法でとして代表的なものですが、金融機関の行為自体を規制する法律もあります(利息制限法や金商法のインサイダー規制など)。
また、法律だけでなく、金融庁が出している監督指針や、業界内での取り決めなどのソフト・ローによる規制も存在します。

金融機関はこのような規制の網にがんじがらめにされているので、何かしらの行動を起こす際には、常に違法・不当なものとならないか配慮しなければなりません。
あらゆる規制との関係でリスクを分析し、ゴーサインを出せるか判断するというのが規制分野におけるファイナンス業務のイメージです。

もちろん、特定の行為がどの法律との関係で問題になるかという知識が必要になることはさることながら、弁護士に相談に来るような案件はギリギリのところを攻めてくることがほとんどで、見たこともないような取引について適法性を検証することは、違法だった場合のダメージが大きいこともあって(行政処分や刑事罰の対象となります)、なかなか緊張感のある作業になります。
反対に、あれもできないこれもできないと保守的なアドバイスばかり行っていても、クライアントからすればビジネスになりません。クライアントからは「他の会社ではやっているのにどうしてうちだけダメなんですか?」と問い詰められることもあります。
業界内での相場感をある程度理解しつつ、「これをやったらアウトだけどここを改善すればできますよ」というように、クライアントの想定を実現するためには何が必要かといった観点からアドバイスを行うよう心がけています。


B. 取引部門について

こちらも文字通り、金融取引に関するアドバイスを行う分野です。
「ファイナンス」=金融とは広く言えばお金の調達のことであり、様々な資金調達手段についての契約書のレビューや作成が主な内容になります。
取引分野としては大まかに以下の通りに分かれるかと思います。


1.ローン分野

本質は民法で言うところの金銭消費貸借契約です。
もっとも、金額と期限と利息だけ決めればよい話ではなく、実務で用いられる契約書においては、貸付の条件や貸付中の約束事、期限の利益喪失事由等を詳細に記載します。
弁護士の仕事としては、法的な観点から、借入人に返済の能力・信用があるかという点と、きちんと担保がとれるか・実行できるかという点を重点的にチェックすることが中心になります。

とある事業者が自らの事業資金とするためにお金を借りたい、ということであれば、当該事業が機能するのか(事業用土地建物の賃貸借契約や、行政との関係で許認可がとれているか)や、担保の設定が適式に行われるか(不動産への抵当権のほかに、事業に用いる動産や事業遂行上生じる売掛債権への譲渡担保などが実行し得るものか)という観点から、関係する契約書を齟齬が出ないように作成します。

また、単純に貸付人・借入人の関係に留まらず、資金融通の便宜を図って、SPC(資金調達のためだけに作るペーパーカンパニーのイメージです。)や信託、匿名組合等様々な法主体を用いる案件(=ストラクチャードファイナンス)や、一人の借入人に対し複数人の貸付人が協調して貸付けを行うパターン(=シンジケートローン)など、法律関係そのものが複雑なであることがむしろ一般的です。

「ファイナンスロイヤー」というとクリエイティブな作業をイメージされる方が多いかと思いますが、私が携わった仕事は関連する契約書を細部までチェックしていく地道な作業がほとんどです。勝手な分析ですが、民法のほかにも行政関係法規などの正確な理解が要求されることから、法律家としての総合力が試される仕事と言っても過言ではありません。


2.キャピタルマーケッツ分野

会社の資金調達手段として、ローンのほかに、株式を発行して株主にお金を払い込んでもらう方法と、社債を発行する方法がメジャーかと思います。
これらの発行された株式や社債は、証券会社がいったん引き受け(購入し)たうえで、証券取引市場において投資家たちにばらまくことになります。

このような株式・社債の発行・流通をサポートするのがキャピタル・マーケッツの分野の仕事です。

株式・社債といっても、会社法上の手続だけで完結するわけではなく、「要項」という実務上用いられる書面に発行条件(配当・利払のタイミングや償還期限等)を記載します。
要項の内容は法律云々というよりは実務慣行に沿って決まるものなので、それこそOJTで知識を身につけるしかありません。
強いて言えば、発行に際して生じる租税関係についての記載部分があるので、毎年行われる税法の改正をチェックして反映させるという作業がありますが、これまた気が遠くなるほど細かい作業で最強にきついです(笑)。

また、発行を行うに際しては、株式・社債を引き受ける証券会社の他にも、社債管理者や乗除の事務手続きを行う代理人など、様々なプレーヤーが関与し、それぞれ発行会社と契約を結ぶので、それらの作成も必要になります。

キャピタルマーケッツは限られた時間の中での作業を求められることが多く、作業量も多いため、体力的・精神的にもかなり削られます。ただ、最後に無事発行手続きを終了したときの達成感は大きいです。


私がこれまで携わったファイナンス業務としては大体こんなところです。

完全に自己流の整理になるので、不正確な部分もある点ご容赦いただきたく思いますが、何となく業務内容をイメージしてもらえたら幸いです。

仕事の規模としては大きいものが多いですが、実際の作業は地味なもので、事務所の先輩曰くいかに細部にまで目を配れるかがポイントのようです。いずれにせよ、ある程度経験を積まないと、極めるには到底及ばない仕事であると感じます。

他にも、デリバティブ契約や投資信託など、細かい契約も見ていますが、話すと長くなるのでまた別の機会にしたいと思います。


ここ何回かは堅苦しい業務内容の話になってしまったので、次回はよりぶっちゃけた話をするつもりでいます。

弁護士業務について②

2016-09-05 01:38:33 | 弁護士業務
この前の記事では、企業法務においては会社法が重要であると書きましたが、企業を相手にする限り、もちろん他の分野の法律も使います。

企業が締結する各種契約書のチェックでは、当然民法の知識が必要になりますし、契約書の種類によっては知的財産法なども問題になったりします。

また、企業の労務管理を強みにしている事務所でなくても、労使関係の問題はある程度持ち込まれるのではないでしょうか。パワハラや解雇の不当性などの問題は、火種は当初小さくても、対応を間違えれば長期化して企業(そして事件を処理する私にも(笑))じわじわ負担になってくるので、結構な緊張感がある仕事になります。

私は司法試験が倒産法選択だったので、恥ずかしながら労働法や知的財産法は実務につくまでほとんど見たことがなく、案件に対応するごとに基本書を確認するという綱渡り的な対応が続きました。ロー生や修習生の皆さんも、実務につくまでの間で時間があるときに、プレップシリーズなど手軽な文献を利用して、広く浅くでも基本を押さえておく方が、幾分かスムーズに仕事に馴染めるかと思います。

ただ難しいのは、法律的には正解でもクライアントに対する回答としてはベストのものとは限らないということです。

例えば、民法の原則に照らして、契約上クライアントに不利益な規定の修正を提案しても、実際に契約の相手方に受け入れられる可能性がない場合もあります(定型のひな形を使用している場合など)。また、修正が受け入れられなくても、現にクライアントが負担するリスクはそれほど大きくない場合もあります。

ですので、法律的に正しいアドバイスであることを前提に、クライアントが置かれている立場や性質を考慮して、クライアントが悩まないでも済むようなベスト回答を提供することが弁護士としての仕事の理想形になります。この点のスキルについては、一朝一夕で身につくものではなく、今後契約書を何百、何千と見て、クライアントと密なコミュニケーションをとっていくうちに習得して行くものだと思います。
もちろん、相手方との交渉戦術としてや、クライアントへのアピールのために、考え得る限りの法的問題点とそれに伴う契約条項の修正点を洗い出して、とりあえず相手にぶつける、といったことも少なからず行います。契約の相手方に大手事務所の著名な先生がついていた事案で、同先生のチームが修正した契約書を拝見したことがあるのですが、正直「こんなところまで直すのかよ・・・」とため息が出るほど細かい点まで修正や問題点の指摘がされていました(その後、こちらからも論理的に反論と説明を行い、結局こちらの条件を全てのんでもらいました)。弁護士によって仕事のやり方やスタンスにも違いがあり、見比べると面白いです。

まだまだ修行中の身としては、上司の仕事ぶりを横目で見つつ、今は愚直に案件をこなしていくしかないのかな、と思っています。OJTでないとわからないこと、身につかないことはたくさんあるので、ロー生や修習生の皆さんで、サマクラや弁護修習で実務に触れる機会がある方は、上記の内容を頭の片隅におきつつ、研修を有意義なものとしていただけたらと思います。

私が携わっているもう一つの大きな業務分野である、「ファイナンス」とは何ぞやについては、また別の機会に書きたいと思います。