(投稿:’17年1月12日。最新改訂:’20年7月30日)
私(とうめん博士)も一般相対論に関する本を、学生時代からいろいろ読んできましたが、 一般相対論については「パクリ本」など 杜撰な本が多く出回ってる中で、 私の学習・研究経験から、一般相対論を学ぶための「本当の良書」を挙げたいと思います。
邦語での入門書としては、よく知られている、
📘シュッツ 第2版 「相対論入門」2010年(ハードカバー版)
📘内山 龍雄「相対性理論」1977年,1987年(新装版)
などが最適だと思います。ただし、解析力学、電磁気学の予備知識は多少必要であり、それらの基礎知識は他書でしっかり学んで理解している必要があります。
シュッツの本は、相対論の入門ではなく、"一般" 相対論の入門として読まれるべきでしょう。
上記のような入門レベルを学んだ上で、 さらに 本格的に学ぶには、
📘ランダウ&リフシッツ「場の古典論」1978年
📘内山 龍雄「一般相対性理論」1978年
などが定番であり、いずれも名著の誉れが高い教科書です。
もちろん、数式を理解しながら読みこなすには、それなりの覚悟と労力が必要でした。
上掲の「場の古典論」を読むには、まず、ランダウ&リフシッツ「力学」をしっかり読んで、「ラグランジュ形式」や「変分原理」などに対する ランダウ(1962年ノーベル物理学賞受賞)流の解説に慣れ親しんでおくと、
理解はより深まり、簡潔明瞭な表現をするランダウの深意を見逃すことなく 読みとりやすくなります。
一方、内山龍雄「一般相対性理論」を読めば、同著者の「一般ゲージ場論序説」の理解もしやすくなり、
非可換ゲージ場の一種である「ヤン-ミルズ場」 ( ヤン チェンニン(楊 振寧。1957年ノーベル物理学賞受賞。中国出身)と、ミルズ(アメリカの物理学者) が提唱 )や 「統一場理論」にも触れる切っ掛けともなり得ますが、
「一般ゲージ場論序説」は1987年刊で内容が多少古くなっている箇所もあり、「標準モデル」以降の統一場理論にも触れようとするのなら、当然ながら、他の書物(例えば、下記のワインバーグの著書など)で学ぶ必要があります。
ちなみに、統一場理論に関するアインシュタインの原論文の邦訳は、「アインシュタイン選集2」(共立出版)に有ります。
📘須藤 靖「一般相対論入門 改訂版」2019年
📘須藤 靖「もうひとつの一般相対論入門」2010年
は、例えば 一般相対論の導入部における「計量テンソル」や「接続係数」の説明など、数式の解説は丁寧であり、「入門」とは名付けられていますが、内容は「入門」的ではない部分も多くあり、他の本(上述の本など)で ひと通り一般相対論の基礎を学んだあとで、
これら二冊を両方とも読むと、より有益な示唆を得ることができます。(一冊だけ読むと、その本の理解が中途半端になってしまいます。)
英語本では、
📘C.Misner, K.Thorne, J.Wheeler 著:
「 Gravitation 」 1973年
が、定番であり、大域的時空構造での特異点定理や 重力波の観測など、一般相対論を各論別に学んでいく時にも有用な書。1279ページの大部の教科書で有名ですが、最近になって、翻訳本が出ました。
(⚠️追記: 2017年10月に、この本の著者の1人てある K.Thorne (K.ソーン)は、重力波の観測などにより ノーベル物理学賞を受賞しました ( このブログの 他ページを参照 )。 )
📘S.Weinberg 著
「 Gravitation and Cosmology :
Principles and Applications of the General Theory of Relativity 」1972年
も、良書としてよく挙げられ、私も大好きな本です。素粒子の相互作用の電弱統一理論(ワインバーグ-サラム理論(サラムはパキスタン出身で1979年ノーベル物理学賞受賞))で、ノーベル物理学賞を受賞したワインバーグが著者です。
素粒子の電磁相互作用と弱い相互作用を統一して記述する電弱統一理論である「ワインバーグ-サラム理論」は、標準モデルの骨格を構成し、統一場理論に大きく貢献しました。
少々古い本ですが、その専門分野(当時の著者は素粒子論)にとらわれず、相対論と宇宙論の基礎から 応用までを、 懇切に解説し、とくに基礎を深く学ぶには、現代においても大いに価値のある本だと思います。
また、同著者による別の著作の邦訳「場の量子論」も、よく知られている名著です。これは原著刊行年が1995年(第1巻)、1996年(第2巻)、2000年(第3巻)であり、「標準モデル」以降の 比較的新しい話題も多く有ります。
創始者自身の一般相対性理論に関する原論文の邦訳が掲載されている、
📘「アインシュタイン選集2」共立出版
では、アインシュタインの偉大さを、その論文を通じて具体的に知ることができます。
また、歴史的な名著としては、
📘ワイル 「空間・時間・物質」 原著1918年刊
📘パウリ 「相対性理論」 原著1921年刊
など。
📘ボルン 「アインシュタインの相対性理論」(物理学専門読者に限らず、一般読者向けでもある)原著1920年刊
さらに挙げてみますと、数学的な解説が、邦語本のわりには珍しく 比較的詳しい、
📘佐藤 文隆 ・ 小玉 英雄 「一般相対性理論」(岩波講座 現代の物理学)1992年
ブラックホールの「ホーキング放射」で有名な著者によるもので、研究者からもよく推奨され、フランスやアメリカでもよく読まれている、
📘S.Hawking, G.Ellis 著
「 The Large Scale Structure of Space-Time 」1973年
(⚠️追記: 2018年3月14日に、ホーキング(S.Hawking)博士・ご逝去のニュースを知りました。ご冥福をお祈り致します)
同じく研究者からよく推奨され、フランスやアメリカでもよく読まれ、数理的構成に主眼を置いている、
📘R.Wald 著 「 General Relativity 」1984年
( ↓ 上述の、S.Weinberg 著
「 Gravitation and Cosmology :
Principles and Applications of the General Theory of Relativity 」 )
以上
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